友よ…(埼玉県熊谷市にて)
半年ぶりに、3年ほど前に他界した親友の墓参りに行った。
東京の僕の自宅は多摩霊園が近いので、気を利かせたのか、コンビニにも墓参りの人をあてこんだお花の数々が並んでいたりする季節である。
それを見て、いてもたってもいられなくなり、彼が眠る熊谷まで出かけたのだった。
久しぶりに訪ねた熊谷の空は、相変わらず悲しいほどに碧い。
彼の墓石には「絆」と刻まれているだけで名前は端っこの方の別のところを見ないとわからないから、毎回迷う。
僕は花をさし、線香をたき、墓石に水をかけ、そして、本人が好むかどうかはわからないが、「いいちこ」を供えた。
同じものをもう一つ買って飲みながら、あいつと少しだけ話す。
同級生と会うたびに、
「お前は俺たちの代の誇りだ」
などというやつだった。
バカ言うなよ。お前がいちばんの誇りだよ。
帰路、腹が減ったので、あいつと行った駅近くのフツーの中華料理店に入る。
埼玉の地方都市、熊谷にも今やラーメンの名店と称される店はたくさんあるが、足を運ぶ気がしないのだ。
去年墓参りをした帰りにも立ち寄り、ああ、あいつと食わない限りこの店はまずい、と思ったものだった。
しかし今日はうまかった。あいつと最後に食べた時と同じように。
僕も56歳にして成長したのだろうか。
生き急いだ彼に対する喪失感がなくなることは永遠にない。
ないけれど、年齢を問わずこの自分だって成長を続けなければ、笑われてしまう。
下品なことばかり言う男だったが、内面は最高に紳士であった。
それがあの男の本質だ。