Melodies of Nishiogikubo
薄ぼんやりとした、形容しがたい淡い色の空の下で、僕は歩く。
街から街へ。
歩いても歩いても、記憶が追いかけてくる。
許したはずのことや、手放したはずのことたちが。
それなりの手応えの仕事をやり遂げて、心にゆとりができたときに限ってこうなる。
呼んでなんかいない。
勝手に向こうからやってくるのだ。
西荻窪の、品の良さそうな焦茶色のマンションを右手に見る活気に満ちた通りにさしかかるころ、僕はなんとはなしに耳を澄ませた。
さわさわと、風が街路樹をくすぐる音が聞こえる。
顔を上げると、木々が風のくすぐりに呼応するように、静かにゆらめいている。笑っている。
木が笑っている。
だから僕も笑う。