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大都会にも空はある


埼京線に乗っていると、ある駅で、若いママさんがベビーカーを大切そうに押しながら乗り込んできた。ベビーカーに座っているちいさな男の子と目が合う。僕は精一杯微笑んだが、彼は怖いものでも見たかのように顔をこわばらせた。

しばらくすると、突然すさまじく速い物体が姿を見せた。車両が長く連なる物体は、そのうち少しだけ速度を落とすようにこちらと並走し始めた。

ママさんが男の子を抱き上げる。男の子は歓声を上げる。

わあ!

がたんがたーん、がたんがたーん
がたんがたーん、がたんがたーん


しばらく並走してくれた新幹線は、やがてカーブに差し掛かり、慎重にそれを曲がってから、カモノハシのような愛くるしい最後尾の顔をこちらに見せて、はるか彼方に消えていった。

男の子は上機嫌で、やがてママさんに連れられて赤羽で降りていった。



僕は新宿で降りた。

大都会にも空はある。

見上げると、
あの子の可愛らしいまつ毛のような雲が浮かんでいた。

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