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川越線の車内にて
僕はちょっとした仕事上のきっかけでやるせない気分になり、自宅から電車を乗り継いで、ある駅のホームで酒をあおり、また別の電車に乗って、気がつけば埼玉県の川越駅のホームにいた。そこで目の前に始発として止まっていた川越線という埼玉県の在来線に乗り込むことにした。
どんな路線でもありがちなことだが、空いている車内でおっさんが、足を組むだけならまだしも、片方の膝に足をクロスさせるようにして偉そうに座っている。この座り方は当然ながら場所をとる。両隣に人を座らせない作戦である。
いや、仮にそんな意図がなかったとしても、無神経甚だしい愚かな行為だ。
しかも、おっさんとはいえ色眼鏡をかけておりなかなかのコワモテで、両隣に人が座るにはかなり勇気のいる状況だ。
やつは気分良さげに発車を待っている。
こういう時僕は、相手をよく見極めてから、どうしても我慢できない時は声を掛けて注意する。しかし、もうそろそろそんなことはやめないといい加減に危ない目に遭うだろうから、最近は自重するようにしている。
始発であるから発車まで数分を要した。どんどん人が乗り込んでくる。
しかしおっさんは姿勢を改めないどころか、ますます偉そうに周りを威嚇するかのようにスマホを眺めている。乗り込んでくる人は皆、彼のいる場所を避けて座る。
我慢の限界だと思い、立ち上がってやつのところに行こうとしたそのとき、
「よかったー間に合ったー」といった雰囲気のおばさんが乗り込んできて、何の遠慮もなくおっさんの横に座った。ドサッ!と。
おっさんは一瞬たじろいだが、気を取り直したのか、おばさんとは反対側に精一杯足を動かして同様の座り方をした。
むむ、やはり行かねばならぬ。この野郎!
発車のベルが鳴る。
その時、今度は若い女の子が飛び乗ってきて、明らかに隣にまで足をクロスさせていたおっさんの隣に、こともなげにドサッと座り込んだ。
いいぞきみ!グッジョブ!
おっさんはしぶしぶ、誇り高き女性2人に囲まれて小さくなった。
僕は電車が大宮に着くまで、そのおっさんの実に滑稽な様子を存分に楽しんでから川越線を後にした。
さて、仕事の不愉快な出来事のことは忘れてかーえろ。