陳腐な文に描写を加えて喜怒哀楽をつくる
こんにちは、世一です。
今日はサボr——いえ、息抜きに自分の好きなことをして遊びたいと思います。
まずは適当に起承転結のある文章を書きます。
起 少年は家を飛び出した。
承 少年は一人で夜の住宅街を彷徨う。
転 少年の前に一匹の猫が現れた。
結 少年は猫を見ると家に帰った。
これに設定や描写を追加して喜怒哀楽の雰囲気を出します。
描写と、いかに簡潔に書けるかという訓練です。
それではスタート。
「喜」
少年は部屋着のまま家を飛び出ようとした。
「待ちなさい! こんな時間から!」
「だってタマが帰ってこないんだ! いつもは日が沈む前に帰ってくるのに。もし車にでも轢かれていたら!」
母親の意見などお構いなしに玄関の扉を締め、街灯の光が照らす暗い街を、少年は走った。息は切れ切れで、目ん玉には僅かに涙が溜まっている。
「タマーーー‼︎‼︎」
喉が焼きちぎれそうな声で少年は叫び続ける。
首元には汗が溜まり、部屋着も髪も乱れていた。
けれども、いくら走れども、姿は見えないし、見つからない。
それでも、息を吐きながら少年は走る。
愛猫のタマは幼い頃から共に育った、少年にとって家族同然の存在だった。
足は鉄のように重く、息切れも忙しない。それでもまだ諦めてなるものかと、息を吐きながら少年は走ろうとした。
すると少年の耳に「ミャー」といった、鈴の音のような鳴き声が届く。
声のする方へ目を向けると、そこには今の今まで探していた愛猫タマがいた。
「タマ、タマ! ああ、本当によかった。もういなくならないでくれよ」
タマは悪びれもせずに「ミャー」とまた鳴いた。少年は安堵に満ちた声で「タマ」と声をかけ、優しく抱いた。
少年の顔は、あまりに幸せそうで、嬉しそうに笑いながら来た道を戻っていった。
「怒」
ああ、またなのだと、少年は思った。
何も今に始まったことではない。気が付けば自分の父親と母親は喧嘩ばかり繰り返している。仕事の事だとか、教育の事だとか、些細な理由ばかりだが、理由など、少年にとってはどうでもいいことだった。
家中を飛び交う怒号の声は、少年の心を汚すのに十分なことだった。
少年はあまりの虚しさに、家を飛び出た。
人気のない住宅街の夜を、少年は歩いた。街灯で作られた自身の影が、今にも飛び出して自分を喰ってしまう気がして、ひどく怖かった。
突然、「ミャー」という鳴き声が聞こえた。
後ろを見ると、黒猫が一匹こちらを見つめている。金色の瞳が薄暗い空気の中で一際目立っていた。
「なんだ。猫か」
少年が黒猫のそばに寄ると、闇夜のために見えなかった姿形がくっきりと分かった。その時、少年は驚愕した。
黒猫はミイラのように痩せ細っていたのである。骨はでっぱり、重りのように内臓が腹にくっついていて、皮膚は乾き目玉が剥き出しているようだった。
「ミャー」
縋るように鳴く猫の声を、少年はどうする事も出来ず聞いていた。
けれどもその直後に、猫はぱったり倒れて、動かなくなってしまった。
少年は心臓を握り潰されたような気分になった。先ほどまで鳴いていた黒猫の末路を考え、人間の不気味さを覚えた。
「俺も、餌を与えられずに、いつかこうなるのか」
緩やかに拳に力が入る。
少年は黒猫に向かい合掌すると、かの我が家へと帰路に着いた。
「哀」
「受験、合格おめでとう」
「ありがとう。あー、たしかお前は」
「落ちたよ。いいよ言って」
「ごめん、別の友達から聞いて」
「ま、俺じゃ一緒の高校なんて無理だったんだ。大人しく二次募集を受けるよ」
少年は一人、溜息を吐きながら、友との通話を終えた。
「一緒に、勉強してきたんだけどなぁ」
それから青いガウンを一枚羽織って、少年は家を飛び出た。
静かな住宅街の中を、少年は意味もなく歩いた。無性に、冬の空気が吸いたくなった。冷たい空気が頬を刺激して、少しだけ痛かった。
様々な暗く哀しい感情が絡まって、気持ちの整理がつかない。
どうしようもなく、苛立った。
すると前方から、小さな影が迫ってくるのが視界に入り、少年は思わず立ち止まった。
「ミャー」
「猫か……よかった」鳴き声を聞いて安心した。前方からやってきたのは、ブチ模様の子猫だった。
「お前も一人か。首輪もないし、野良かな」
「ミャー」
猫は少年の声に応答するように、透き通った声で鳴く。
とぽとぽと少年のそばまで寄ると「ミャー」とまた鳴いた。
「なんだ、慰めてくれているのか。気持ちって伝わるもんだな」
少年は猫の顎を撫でながら、か細い声で言った。猫はただ、目を細めて、擦り寄るように「ミャー」と鳴いている。
「お前家はないのか? ここじゃ寒いだろ。お前も、俺も」
小さな温もりが、手のひらから静かに伝わる。子猫の頭は少年の手のひらよりも、ずっと小さい。
少年は何だか、その大きさの違いを感じた時、今の状況が馬鹿らしく思えた。
「はは。車に気をつけて帰りなよ」
言葉の伝わらない、自分より小さな猫に告げると踵を返す。
僅かな蟠りを抱えたまま、少年は家に帰る。溜息を吐くと、息は白く濁っていた。
「楽」
「勉強なんて嫌だあああ‼︎‼︎‼︎」
弟はそういうと、水を飲みに行った見張り役の兄にバレないように、窓から脱出を図った。夜であろうとお構いなしに家を出た。
兄が戻ってきた時には部屋の中はもぬけの殻である。
「あいつまたか! あれほど言ったのに! 次お前が赤点とったら俺も御袋に叱られるんだよ!!」
兄は叫びながらのたうち回って、弟を連れ戻すべく後を追った。
これは兄弟にとって日常茶飯事であり、もはや日課である。
「今日こそは兄貴に捕まらないぞ! いーんだ! 俺の逃げ足なめんじゃねえ!」
上手いことバレずに脱出できた現状を見て、弟はしめしめと自分の才能を噛み締めながら、夜の住宅街を歩いていた。
「とりあえずは公園の便所に隠れてっと。む? あれは——」
何かを見つけた弟は急ブレーキをかけて、超高速に足を動かして見えたモノの近くまで行った。
「わーお! 猫だ! カワイイー!」
目の前にいたのは、愛くるしい瞳で見つめてくる、一匹の猫である。
「もふもふしているー! 何こいつカワイイ」
弟は現状を忘れて、猫とじゃれ合いはじめた。
すると、彼の背後にぬらっと大きな影が近付いてきて「やぁっと見つけた」といった声が、殴るような勢いで耳に飛び込んできた。
弟が振り返ると、そこには弟の望まない人物がいた。
「げ、兄貴」
「げ、じゃない。近所迷惑だろうが。ほら帰るぞ」
「えー。今は勉強より猫がいい」
「お前なぁ……昨日は鳥で、一昨日は虫で、今日は猫か。本能の赴くままとか野生児か! 少しは学習しろ」
「あー! いま俺のこと馬鹿にしただろ」
「馬鹿だから勉強するんだろ! 行くぞ」
「あ、ちょっと、ふげえぇ〜〜」
兄は、弟の首根っこを掴むと、ずるずると引きずって帰っていった。
これは兄弟にとって日常茶飯事であり、もはや日課である。
地元では「愉快兄弟」と渾名付けらているが、当の本人達は知る由もないのであった。
終
なかなかに難しい。
もう少しスマートにまとめたいし、描写もまだ稚拙ですね。
でも楽しかったので良し!!
またやりたいです。ご感想お待ちしております(^ ^)