【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (9)
* * * * *
餅は未だ 森の中
紙の住処 家の中
友たる紙は ちっとも帰らぬ
餅はなんだか心配だ
言いつけ守ってカビを生やさず
今もずっと待ち惚け
だんだん だんだん 怖くなる
ずんずん ずんずん 嫌になる
悪い予感は 頭を巡り巡り
いても たっても いられずに
白い体 伸ばして 飛び出した
捕らえられるは覚悟の上
真っ赤な国に向かったさ
* * * * *
いろどり山を走り抜け
クレヨン町は素通りだ
キャンパス野原も超えていこう
三日の道のり 物ともせずに
恐怖に煽られ 走った餅だが
着いた先に 見当たらない
真っ赤な国が 見つからない
それは当然 すでにない
あんぐり 餅の
目の前の国 赤色 僅か
色彩豊かな別の国
赤以外を知れと言った
だがしかし
ここまでだとは思わない
餅は大きく 驚き転び
腰を強く 地べたに打った
だけど もっと 驚いたのは
探せど 探せど 赤みえない
赤のうえに ほかの色
色のうえに 色かさね
色 ほんたいの 色は何処
目を懲らさないと 見つからない
目はちかちか 痛くなる
なんだか知らない色たちの
ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ
見知らぬ国
* * * * *
恐る恐る 忍び足
餅の心臓 ギトギトギトギト
だけど心配要らないや
追っかけてくる者はいない
以前の時との 変わりよう
餅は大きく 驚き蹌踉めき
今度は腕を 柱にぶつけた
* * * * *
キョロキョロ 辺りを見ていると
ざわざわ 騒めく人集り
国の者の輪の中に
見知った 探した 紙の魔女
待ち浴びていた 友の紙
餅は喜び 餅は駆け寄る
紙は気付いた 紙は驚く
なんだかんだ 嬉しそう
「やあ! 紙! 探したよ、ずっと森で待っていたんだ」
「ああ! 餅! すまない、私はここに住むことにしたのだ」
「そうなの? もう、森には帰らないの?」
「そうだよ。財と引き換えに、色をつくると決めたんだ」
予想外 斜め上
紙の言葉 知らぬこと
困惑 隠せぬ 餅をみて
紙は 笑って 結果報告
「心配いらない、餅の命は助かった、餅はすでに自由の身さ」
紙は 隠さず 伝えたが
餅は 取り繕って 笑うだけ
(「林檎の王様と真っ赤な国 (10)」につづく)
ー!ATTENTION!ー
・2019年に小説投稿サイトの「お題:赤」のコンテスト用に書き下ろした作品です。(再編したものを掲載しています)
・この作品はフィクションです。現実における全ての事と一切の関係はございません。
《ここまで読んで下さりありがとうございました!》
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