【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (3)
* * * * *
「餅よ。今日は如何様で?」
親しげ話す 紙の魔女
餅はまっすぐ声あげる
「紙に、頼みがあってきた」
「ほう、私に頼みとな」
「実はここから三日の距離に、真っ赤な国があるのだが、どうもそこには赤しかない。ボクが国に入っただけで、白色狂人、喚かれた」
「それはとんだ災難だ」
「だからボクは言ったんだ。真っ赤な国の林檎の王様、いろんな色を知りなさい。ボクの友達、紙の魔女、連れてくるから、見逃せと」
「そうか、だからか、確かに、私ならどのような色も生み出せる。そうか、だからか、見かけぬ御仁が居られるのは」
餅がどっきり 後ろを向けば
ザクロ大臣 ひょっこり居られる
「そうだ、王の左腕たるは、我名をザクロと申す。赤しか知らぬ我人生、このような色合い見たことない。だがしかし、王が気にいるかは別問題。どうする、魔女よ、来るというなら連れていこう」
手に顎あてる 白い紙
協力願うは 白い餅
必死に喉から訴えた
「紙が来ないというならば、ボクは食べられ消えてしまう。どうか助けてはくれないか」
餅の言葉に揺らぐ紙
答えは当然 頷いた
「友のためなら何なりと、私の魔法を使いましょう」
「そうか。ならばすぐ行くぞ。我は早く帰りたい」
「承知。すぐに準備をするとしよう」
ぷくぷく 膨らむ 嬉々の餅
「紙よ! わが友! 有難う!」
ひらひら 首振り 笑う紙
「何をいう、餅の命に関わるならば、話は別さ、容易いさ。私は赤い御仁と共に真っ赤な国へと行くとしよう」
「すまない、すまない、感謝する」
「気にするな。留守は任せた。君はカビないようにだけ気を付けろ」
「もちろんさ。どうか色の素晴らしさ、頑固な王様、教えてやって」
「もちろんだ。頑固な王様、ひとつギャフンと言わせよう」
友のためにと旅支度
ザクロ大臣と共に行こう
目指すは 玉座に林檎が鎮座
赤だけ愛する真っ赤な国
(「林檎の王様と真っ赤な国 (4)」につづく)
ー!ATTENTION!ー
・2019年に小説投稿サイトの「お題:赤」のコンテスト用に書き下ろした作品です。(再編したものを掲載しています)
・この作品はフィクションです。現実における全ての事と一切の関係はございません。
《ここまで読んで下さりありがとうございました!》
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