鹿毛康司さんの『「心」が分かるとモノが売れる』を読んでみた
冒頭からビジネスのセミナーやマーケティングのフレームワークを実践したところで成功しない明確な理由がある。
それは『心が伴っていないからだ』という言葉からこの本はスタートする。タイトル通りのスタートだったことに安心を覚えながら、セミナーやフレームワークは手段であり、行動(考動)ではないような気がした。
現代はお客さんのことを自身で考える心が伴う行動にこそ価値が出てきているような気がする。
心を知るために『お客様を「管理する対象」として企業が考えたマーケティングのフレームワーク』という言葉と本書が伝えようとしている『心』には明確な違いがあり、フレームワークの上に心が乗ることでモノが売れるような気がした。
そして『人は論理ではなく、「心」で動く』という小タイトルがあるように人って思っている以上に合理的に動けない人間だと思う。
これは以前私が投稿した【正論と正解の差とは】という記事に書いてあるのでぜひ読んでいただきたい。↓↓
現代はビッグデータの活用が進むことで地球上の大多数の行動や考えを予測できるようになり、その活用はマーケティングにも有益な情報を与えられると考えられています。
しかしビッグデータとは過去のデータを蓄積して予測するものなので急激な変化には対応できないことが弱点だそうです。
そこで必要になるのが「心」のマーケティング。もちろん大企業のようなところは分母が大きいので多数の評価を得られればビジネスは成り立ってしまう。
そして心のマーケティングがもっとも必要な理由は世の中に出てくるトレンドや流行りなどの言葉に流されるのではなく自分の心の奥の言葉や想いになってくると本書には書かれています。
今の時代のマーケティングに必要なことは「相手に寄り添うこと」なのかもしれないし、自分が相手の立場だったらどうかを考えることなのかもしれない。
『人の行動の95%は無意識に支配されている』
なぜかというと人はバイアスや思い込みによって間違ったことを認識していることが多いことや急いでいるのときほど無駄な行動をしてしまうようなことも含まれるそうです。自分の行動には矛盾が生じていることが多いと本書には書かれています。
この章の冒頭で『私たちは一人の消費者である』ということを忘れてはいけないそうです。ということは自分が本当に必要だと思う言葉や想いが分からないうちはものは売れないということだと感じました。そして本書には自分の心の奥を覗くためにはどういうことをするかが書かれているので参考にしてほしい。
『「お客様のため」という言葉の本質は「自分たちのため」』になっていることがほとんどらしく、本来であれば『お客様視点』にしなければならない。この言葉はとても理解できる。私自身、経営者になってみて改めて感じるが仕事だからこそ商品を売ってはいけないような気がした。厳密にいえばここ最近で更にそうなったのだと思う。
モノを売るという行為をお客さんは昔以上に敏感に捉えている。
これもある意味、マネー経済から世の中が変化し始めたのだと思う。
第6章はタイトル通り『企業にも「心」がある』ということがかかれており、その中で個人的にとても面白いと思ったのがお客さん自身が私たちは企業側が考えているよりも「企業」「商品」「社員」を分けて受け入れているということ。
これって実は私たちがお客さんの立場になってみるとごく自然の考えであることも同時に考えさせられた。
マーケティングをするに当たり、教科書通りのことだけをやってもお客さんには届くことはなく、教科書通りのこと+αで本書に書かれているお客さんの心に寄り添うようなことをすることの大切さを改めて考えることができた。
それがもっとも現れるのが使う言葉になる。この言葉の使い方や表現方法をお客さんはめちゃくちゃ敏感に感じていて、どれだけ表面をつくったとしても、その企業の理念や商品に対する思い、社員自身の考えが使う言葉やとる行動の中に現れてしまう。
だからこそ本気でお客さんの役にたちたいという心が重要になる。
本書の後半にマーケターとクリエイターの話が書かれているのだが、これって実はマーケターやクリエイターに限ったことではなくてお客さんと接するすべての人にあてはまると思う。
お客さんは何を求めていてどういう言葉がほしいのかということを一度考えてみたほうがいいと思う。
私自身も改めて考えさせられた。
本業の建設業でも広告を出していてその中の言葉に「建物のことならお任せください」というありきたりな言葉を使っていることに気付き、実はお客さんの立場に立ってみると任せたいのではなくて「一緒に考えたい」のかもしれないと感じ、速攻で修正してもらった。
これが正解か不正解かは分からないけれども私がお客さんだったら自分の家のことはやっぱり自分で考えたいと思う。
そして私も少なからず発信する立場にたち、様々なことを考えるようになり、自分が思っている以上に自分の商品や会社は世の中に興味を持たれていなくて認知されていないということを感じる。
例えば誰かのSNSの投稿に対して「イイね」を押す瞬間ってその投稿内容をあまり見ていないことも少なくないと思う。
知り合いやフォロワーさんが投稿しているから「イイね」押しとこうって具合で。と言うことを考えると私達の発信がとれる可処分時間は限られたものだということに気がつく。
そして本書でも触れられているが発信する立場になるということは少なからず誰かを傷つける可能性があるということを認識しなければならない。全ての人が発信できるようになり、発信のハードルが下がった時代になったからこそ様々な視野が必要になったと思う。
そしてとても共感できるのが『絆づくり』が重要になるということです。これに関しては私の考えですが企業とお客さんの絆ではなく、担当者とお客さんの絆が重要になってきていると考えています。
このことに気づいていない人もまだまだ多く、いまだに企業の看板を背負っている個人という考えなのです。
これからは企業やお客さん、パートナーという肩書を超えた人間同士の繋がりに価値が出る時代になったのだと改めて感じる。
本書を読み終えて改めて思うことが様々な方が発信しているように個人同士の繋がりが必要になり、企業という考え方を外して自分だったらと考えられる人がビジネスとして成功していくのだと思う。何を売っているかということよりも誰が売っているかということのほうが価値が出るようになってきている。また本書でも書かれているように自分がほしいと思う商品しか売ることはできないかもしれない。
改めてモノを売ることの大変さや発信することの難しさを考えさせられる一冊だったので何かを売ったり発信する人には読んでいただきたいと思う。
ここで発信していないような目からウロコ情報が本書には書かれているかもしれないのだから。