「家業のDX」からの「業界のDX」がおもしろくなる2022年。いろんな印刷業の人とサービスをつくろうと思う
家業の布の印刷業に入社して10年。お客さんのFAXやメールで受注をうけて、オンプレミスな製造管理システムに製造指示書を入力してロット生産する工場です。働いているみんなは、毎日品質にこだわっていて誇りをもち、どんなに厳しくて夜遅くまで働いても納期を必ず守る。そういう家業にいいところをとても魅力に感じながらも、将来への課題も感じる様になりました。
そんな業界の課題を解決しようとした時には、少なからずソフトウェアへの投資が必要であると感じました。そして、投資をしたとしても、業界の中で布の中でもポリエステル専業の工場であるが故に、対応できる商品はかなり限られたものになり、ユーザーからの利便性は上がらないなと感じました。
そこで、一旦家業を離れ、2020年からはスタートアップである株式会社OpenFactoryの方に注力して、PrintioというAPIで製造を依頼できるサービスを展開しています。そして家業DXが業界のDXとして盛り上がってきているとのを感じ、年初のnoteとしてまとめておきたいと思います。
ユーザー企業に限りなく近いベンダー企業という選択
2021年8月にDXレポート2.1が追加で発表されました。レポート2の「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」の必要性を重視した内容からさらにベンダーよりの内容になっているのが個人的には色々思うところがありました。
これまでの時代では、ユーザー企業とベンダー企業は発注主とシステム請負の関係性が長く続いていましたが、これからは一つの方向性として、ユーザー企業に極めて近いベンダー企業というのが面白いなと思っています。
業界で必要だったり感じることをベンダーに伝える難しいのなら、自分が一番ほしいサービスを自分がベンダー企業になって作るのは理にかなっていると思っています。そのサービスは家業が一番ほしいだろうし、布の印刷と同様の座組の業界(僕の場合であれば、広義として印刷業)の会社も欲しいものができるはずです。
新卒で経験した業界✕家業の業界で生まれる方向性
最近、いろんな業界の跡取りといわれる人と話した時に、うっすら感じる”これまで働いた会社の雰囲気”が見えてくるところが面白いなと思っています。
家業の跡取りといわれる人が、大学を卒業し就職した先が「広告代理店」や「WEB」、「商社」、「金融」、「コンサルタント」「メーカー」などで働いた後で、家業製造業に入った後にその会社の方向性がバックグランドで見えてきてとても参考になるときがあります。
いろんな業界で家業DXのスタートアップが面白い
インターネットが普及し、働く人の多くがスマホを持つようになり、個人向けのサービスが一巡し、エンタープライズ向けのサービスが多く立ち上がっていて、その中でも家業DXに取り組んだ延長で業界のDXに取り組んでいるサービスに注目しています。
製造業のSmartFactoryを実現するiSmartTechnologiesさん
飲食店などサービス産業のデジタル化を提供するEBILABさん
旅館ホテルのIT化を提供する陣屋コネクトさん
布の印刷業をDXするステップと必要なソフトウェアについて考える
バズワードになっているDXには3つの段階があります。ご存じの方も多いと思いますが、一度経済産業省のDXレポートから引用します。
デジタイゼーション→デジタルプリンターで印刷方式のデジタル化
デジタライゼーション→WEBなど受注窓口や生産管理のデジタル化
DX→ここが大切
製造工場は印刷方法のデジタルプリントに変える「デジタイゼーション」は前提として必要
家業はもともとのぼり旗というアイテムを作っていて、デジタルプリンターは導入していたので、印刷のデジタル化にはとても積極的でした。ですが、印刷業界の中でも紙の印刷ではデジタル製造の割合はまだ12%(JAGAT資料)であったり、布の染色でも10%程度(WTiN資料)と言われており、まだまだデジタル製造も主流にはなっていません。
Printioに参加してもらっている製造工場はすべて印刷方法としてデジタルプリンターの導入は完了している工場である必要があり、デジタル製造に積極的な工場はとても前向きで、スピード感もあり、一緒に仕事をしていてとても頼もしい存在です。
受注の窓口をWEBにおいてみる「デジタイゼーション」へは中小製造業はシステム投資が難しい
そんな家業の中で、業界の慣習としてピラミッド構造の下請け関係が多く、WEBを受注の窓口として展開するのにはとても抵抗がある工場が多いです。また、製造工場の多くでは技術をはじめとしてクローズ志向が高く、作れる設備や、作れるアイテムや技術がなかなかWEBでは伝わりません。
紙の印刷業界では、プリントパックやグラフィック、ラクスルなどWEB印刷通販が増えていますが、紙の印刷市場5兆円の中ではまだ5%の1000億程度だと思われていて、WEB化ですら進んでいない印象です。
この段階から印刷機や工場へのハードウェア投資ではなく、WEBやソフトウェアなどの「目に見えにくいものへの投資」が必要になり、インターネットが苦手な中小製造業には重い負担になり、導入が遅れています。その課題を解決するために、Printioは細分化されている全国の専門工場の窓口をWEBに乗せていきたいと思っています。
そしてデジタルプリントでお客さんのビジネスを変えるDXへ
そしてPrintioは全国の工場の受注窓口を一本化することで、印刷を発注する企業のお客さんのビジネスを変えることが可能になります。ここからがいよいよDXと言われる領域になると個人的には考えています。
今回PrintioではAPIという注文のやり取りをインターネットを通じて連携できる技術でお客さんのWEBサービスと印刷工場をつなげる事業を行っています。開発者の人はこれまでは、オンデマンド印刷サービスを立ち上げようとしたときには、工場を探し、システム連携の方法を考え、送り状発行などんお生産システムを用意し、毎日受注生産が問題なく行われているかのモニタリングが必要ですが、Printio APIを導入することで、オンデマンド印刷にまつわる面倒な機能がすべて用意されていて、オンデマンドサービスを簡単に導入でき、製造は全国の品質に拘る印刷工場で製造できます。
ディスラプトではなく共生するプラットフォームの構築へ
参加してくれる工場がPrintioに興味をもってもらえ、一緒に盛り上げてくれる最大のポイントは、純粋なベンダー企業でないことだと思っています。
製造業はデジタル化が進んでいない業界を破壊(ディスラプト)されるのではないかという警戒感がとても強いと思っています。その中で、Printioは純粋なITスタートアップではなく、同じ業界で飯をたべている仲間だと感じてもらえることです。そのためのプラットフォームは破壊的で自己的ではなく、エコシステムで利他的であることが大切だと思います。
昨年から家業製造業にPrintioから受注API の提供とクラウド生産管理を導入し受注連携したことで、中小機構さんから推薦していただき、中小企業庁からはばたく中小企業・小規模事業者300社に選んでもらえました。
2021年はもっと多くの印刷工場を製造連携をして楽しいデジタルプリントを広げていきたいなと思っています。