遺言書の作成での思いがけない落とし穴
😉実例のご紹介
先日ご相談に来られたお客様の実例です。
このお客様は加賀さん(仮名)といい、1週間前にお姉さんを亡くされました。
加賀さんは10人兄弟の5男坊で、亡くなったお姉さんは長女に当たります。
お姉さんは独身で晩年は介護施設に入居されていましたが、その面倒は加賀さんと加賀さんのすぐ上のお兄さんでみていたとのことです。
お姉さんは長年会社勤めをしていて、財産はそれなりにありましたので、相続時には世話をしてくれた加賀さんとお兄さんに半分ずつ相続させるという遺言書を5年前に公証人役場で作りました。
しかし、昨年、お兄さんが病気で亡くなりました。
遺言書の書き換えが必要だとは思いましたが、最近はお姉さんの認知度も進み、遺言書の書き換えも難しいかな、と思っていたところ、今年になってお姉さんが亡くなってしまったというわけです。
ここで問題となるのは、5年前に作った公正証書遺言の効力はどうなるのかということです。
😢遺言書の効力は無効になる
お兄さんには子供がいますから、お兄さんの子が代襲して、相続財産を承継するという考え方があります。
代襲とは、遺言者よりも先に相続人たるべき人が亡くなってしまった場合に、その子が替わって相続人の地位を得るという制度です。
しかし、最高裁の判例に従えばこの考え方は否定され、遺言者より先に受遺者であるお兄さんが亡くなっているので、お兄さんへの相続分はその効力が生じず、結局、お兄さんが相続するはずだった分は法定相続人(その他の兄弟姉妹)に相続されることになるのです。
その他の兄弟姉妹はいますが疎遠となっている方もいるので、是非とも非常に世話になった弟2名にすべての財産を(2分の1ずつ)残したいというお姉さんの想いは、完全には果たせなくなってしまいました。
さらに悪いことに、兄弟姉妹の中には、兄弟間の折り合いが悪く、もう20年以上も兄弟の関係を断絶している方がみえるというのです。
新たに遺産分割協議をするにしても、この方との話し合いがうまくいくのか、とても心配でなりません。
😊専門家に相談を!
では、どうすればよかったのでしょうか。
お姉さんの想いからすれば、世話になっている弟2人に財産を相続させたいわけですから、仮に弟がお姉さんより先に亡くなった場合には、「その子に代襲相続させる等」について、遺言書に明記しておくいわゆる予備的遺言ないし補充的遺言をしておくことが重要となります。
加賀さんのお姉さんの遺言書作成に関しては、弁護士や税理士窓の専門家への相談はしていなかったとのことです。
どうか、遺言者の想いがきちんと実現できるように、遺言書の作成は専門家に相談するようにしてください。