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木のカルテ 木は友達【ウメ】


木のカルテ、木は友達を開いてくださってありがとうございます。少しでも多くの木が元気になるように、カルテを書くことにしました。

「木のカルテ」を書くのかなぜ

ここで紹介するものは、著者自身が約30年間の試行錯誤のすえ皆様に自信を持って紹介できるまでに到達した自家製梅の実(無農薬を)を沢山収穫したい方向けの実践カルテです。神保流剪定術としてN H K趣味の園芸(2023年11月号)でも紹介しましたが、限られたページ数では全てのことを紹介することは出来ませんでしたので、こちらのコーナーを活用させていただき改めて「梅」の剪定を含む管理作業と目的などをお伝えします。
多くの木々に元気になってほしいと思います。ご家庭だからこそ可能な無農薬果樹を多くの方に楽しんでいただければと思います。

ウメはどんな木

梅は人気No.1!
果樹の横綱

ウメの木手入れの適期9月上旬〜12月上旬を見逃さないで

多い相談内容

ウメの木が人気No.1なのは、最もご質問をいただくから。
家庭果樹の中でも「梅」は人気が高い割に収穫量は期待通りには行かない、花は咲くけど実がつかないなどと相談を受けることが最も多い果樹の一つ。そして、古くから日本人の健康を支えてきた果実。

私が管理している梅(白加賀)の開花状態
小さな実が付いた状態
収穫間近の状態
小梅も順調です

毎年40キロ以上を樹高3メートル程の1本の梅の木から収穫

一本の梅(樹高約3メートル)からの収穫

実がつかないのには理由がある!2タイプ

住宅地を歩くとかなりの確率で梅の木と遭遇し、剪定された姿は様々。

姿は整っているけど「ほぼ実はつかないだろうな〜」と本心を飲み込み、見上げる梅の木の多いこと。そのようの木は申し訳ないが経験が浅い造園屋?の手に掛かった梅の木に多いような気がする。まるで、街路樹の冬季剪定のようだ。成枝となる安定した短い枝がない。手当たり次第バッサリきられている。 

造園会社の看板を掲げた作業員の手によってバッサリやられちゃっているケースも残念ながらあるが、太枝をぶつ切りにされた梅の木は家主によって手が下されたタイプに多く見られる。

ぶつ切りをやっちゃうタイプの人はこれまで遭遇して言葉を交わしたケースから二つのタイプがあるような気がする。

タイプ1

ノコギリを片手に目の前の太枝を片端からぶった斬る。このタイプは大体が男の60代以上に実に多い。

作業終了時には必ず「これでいい。明るくなった。サッパリした」と必ず言い訳が入るのが特徴。

窓越しに眺めている奥様はただただ呆れ顔。絶対に実がつかないなんて間違っても言えない異様な空気が庭中に漂っている。

春。近くの梅林は見事に満開。ぶつ切りにされた庭の梅にも花が咲く。ただし、ご主人様が切り忘れて命拾いした小さな枝に花が2つだけ。切る時期が悪ければ枯れてしまうのも多いが、あくまでも俺様タイプの人はかれたら枯れたで「弱っちい木だ」。の一言で型をつけようとする。

枯れた梅

ぶつ切りにされて枯れた梅

タイプ2

作業主が奥様に多い。男性だったら、几帳面なタイプの方。ノコギリを振り回してぶつ切りはせず、長く持ち手が伸びる高枝バサミを振り回す。それも、度々。樹形からはみ出した枝は時期など関係なく容赦無く切る方が多い。太枝をぶつ切りするよりもほんの少しだけ花は咲く。ただし込み入った枝同士が混み合い、釣り糸がからっまった状態の小枝ばかりとなるか、カラスの巣のようにゴツゴツした枯れ枝を積み重ねたようになってしまいほぼ実は期待できない状態となる。

どちらのタイプも梅の木に興味がないわけではない

収穫した梅で「自家製の梅干し、梅酒、ジャム、ジュース」と目標は常に持っている。だから私が相談を受ける。相談してくれるだけ、ウメに対する思いは感じる。

現実は厳しい

ある日、ある行政が管理する樹林地の管理方法についてのアドバイスを依頼され伺った。(里山を含む樹林地や草地、水辺などに暮らす生き物やその環境の管理手法の指導やアドバイスは月に10〜15件のペースで依頼)立派な樹林地だったが、倒木などの危険木が多い場所であった。立派な施設では地元のスタッフの皆さんが活動されていた。小さなお土産コーナーに梅干しパック。そう言えば樹林に手前に立派な梅林があった。自家製梅干しだ。1パック購入してその場で一つパクリ。
「美味い〜」。「やっぱり自家製はいいよね」。
でもスタッフの衝撃的なひとこと
「これ、買ってきた梅なんですよ〜ね」。
「え、マジ」。
「立派な梅林があるじゃないですか」。真剣に突っ込んでしまった。

一度も実がマトモになったことが無いと聞いて二度ビックリ
「手入れはされているようですが」。尋ねずにはいられなかった。
「はいそれがですね・・・・」ずいぶん言いづらそうであった。

聞けば果樹などを担当する行政の専門研修をうけた方々が管理しているとのことであった。そんな事を聞いたら無性に現在の状態の梅の木が気になる。改めて梅林に向かった。ショッキングだった。ぶつ切りにされた梅の木。全てがかなりの重症。なんてこった。私の様子の変化は隠し切れないようで、周りの方々が申し訳なさそうに尋ねてきた。
「いかがでしょ・・・」

「う〜ん・・・・厳しいですよね〜 でも治りますよ。3年ほどかかりますが」。これまで行ってきた専門家?の皆さんのプライドもあろうかと思いますし、やめてくださいとも言いづらいと言うスタッフの気持ちもわかる。
梅林を管理する行政担当者は私にこの場所で剪定研修を望んでいるとの事。だが、実践はできないがプライドだけは持っている団体や個人をわざわざわ刺激はしたくない。「ここでの研修指導はちょっと難しいよね〜」。梅の木のためにもやりたいのは山々だが残念だ・・・

しばらくしてからの事
「梅林の中の3本を自由に使って良いそうです」。
行政担当者の声は弾んでいた。

「いろいろと頑張りましたね。では実践研修をやりましょう」。
研修生は行政担当者、梅林近郊に住んでいて、梅の管理や剪定に興味がある方々、総勢20名ほどで行った。

一年目 剪定バサミや剪定ノコは持たなかった

その変わりに各自には紙テープを渡した。
「このテープで自分だったらここを剪定する。その枝にテープでしるしをつけて」。剪定道具を持つとバサバサ切ってしまう方もテープとなるとかなり勝手が違うようだ。全員フリーズ状態。普段いかに何も考えずに枝を切っているかを自身が再認識するのだと思う。

切る枝、切らない枝の違い。剪定の時期が何故9月なのかなどの解説。その後私の見本剪定で1回目の研修は終了。

二年目 30kg

翌年は見本剪定した木の状態を5月に研修生全員で現地観察。
剪定した効果でそこそこの数の実が付いている。
「ウオ〜凄い」。
確かに今まで実が付かなかったわけだから・・・・。喜んでくれることに正直ちょっと大袈裟なパホーマンスではあるが嬉しい。
「こんなに付くんですね〜」
ウメの実ごときでこれほど興奮して喜んでもらえてちょっと不思議な感覚ではあるが嬉しい。収穫量は30kg。ほぼ0だった収穫からすればお見事なのかも知れない。

三年目 60kg

60kgに達した。
適切な剪定、受粉の需要性、肥料投入のタイミングの重要性が3年間の実践研修で伝えられたことで大満足。研修に使用したのは30本ある梅林の中の3本。研修で使用した梅の木にはタワワにみが付いたが、それ以外の木には相変わらず実の姿がない。27本の梅の木の剪定は自称専門家集団の手によって行われていた。

果樹は結果が出る

だが突然、梅林の剪定を辞めたいと担当部署に連絡が入ったと私に連絡がきた。「ま〜仕方ないと思います。研修で使っている方の木では60kを収穫。ご自分たちの方では相変わらず0k。辛かったと思います」。

果樹以外の庭木の手入れは結構いい加減にやってもごまかせるが、果樹剪定は結果が明確に出るのでハッタリは効かない。

結果を見せない情報がなぜか人気

動画配信で「梅の剪定は○○だ」と言うような情報が流れているが、動画配信では剪定作業は見せるが、その後の様子は一切ないものがほとんど。見ていると、きっと凄まじい徒長枝が発生しているのが目に浮かぶ。そんな動画がなぜか人気があるから不思議だ。でも、見方を変えればバリバリ片っ端からぶった斬る爽快感を求めているのかも知れない。

強く刈り込間れた梅は間違っても実はつかない

梅の木を育てる

目的を明確に持つことで、品種選びもハッキリとする。

① 盆栽や花を鑑賞。
②梅の実の利用などである。

① に向くのは「野梅性」の梅が良いと思う。この梅の特徴は樹勢が強く、枝付きが細かく、葉っぱが比較的小さいものが多く、花の香りが強い。品種としては「冬至、満月、道知辺、白鷹、舞扇、柳川絞りなど」がある。

② に向くのは「実成り梅」である。利用かちが高い良質な実が付く品種で果樹として扱われる梅である。品種としては」梅郷、白加賀、豊後、南高など」がある。

無農薬で梅の実を沢山収穫する

剪定:実が沢山付くのは管理のバランスが良い場合と梅の生育を邪魔しない(放置)ことで期待を裏切らない収穫が得られる。

無農薬で収穫するためには梅自身が健康でなければならない。しかしながら現状は病害虫の発生予防を目的とした農薬散布があっちこっちで行っているのが現状。この状況を言い換えれば、不健康な梅がいかに多いかということで、農薬散布をしなければまともな梅の実が収穫できない。

庭木だからこそ、無農薬で収穫が楽しめる。

大きくなってしまった梅の木を小さくする

大きくなってしまった梅の木を小さくする方法は
下の【図1】の①から④の手順ように行うことで希望する高さにすることができる。


【図1】ウメの木の樹高を下げる手順

①の樹高を仮に8メートル
②上から2メートルの位置で止める。横枝は幹から80センチできる
③幹などから沢山の新芽(休眠芽)が発生するので、希望する高さで幹をきる
④安定した状態

正しい剪定で木自身の免疫力がアップすることで病害虫に強くなり、無農薬で収穫が楽しめる。

梅の剪定の基本的は①の手入れが重要なポイントとなる。

幹の芯を止める。

5月ごろから伸び始めた若芽を9月にイラストの位置で切る。

②は翌春からの伸び始めた短枝。
③短枝が出た翌年に実がつく。

※個体によっては【図2】の状態の時に実がつく場合もある。いずれにしても、若枝の先端を9月に切ることで安定し、無農薬の梅の実が収穫期待できる。

【図2】

一番相談が多い事例とその原因

初夏の水揚げの活発な時期に【図3】①を切ってしまうと②のような若枝が沢山出てしまい、枝が再びで初めて密になってしまう。風通しが悪くなり、日照不足も重なり③のように病害虫が発生しやすい環境となってしまう。

【図3】



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