原健一郎 | Kenichiro Hara
記事一覧
テクノロジー企業とテック強化型企業(tech enabled business)の小さくて大きな違い
2023年からMicrosoft, Meta (Facebook), Alphabet (Google)などが大きく業績を伸ばす中、WeWorkの破産や電動スクーターのBirdの破産のニュースが相次ぎました。一時期は時代を代表する"テック"スタートアップと言われ、ユニコーンとして注目されていた企業に何が起きたのか。現在業績を伸ばしているテック企業とは何が違ったのか、ここから学べることは何か、この記
もっとみる日本と米国のベンチャーキャピタルのリターンの比較分析
先日Preqin社から、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)と共同で、「国内VCパフォーマンスベンチマーク第5回調査」というレポートが公開され、これが日本のVC業界にとって、とても意味あることだなと思い、少し分析をしてみることにしました。数字は2022年末時点のものとなります。
米国でもこのようなベンチマーク分析は、その市場(国)のVCファンドに出資するとどの程度のリターンが出る
ピボット/事業戦略の転換 - いつ、どう判断し、どうピボットするか
この記事では、スタートアップ経営においてもっとも難しいトピックのひとつ、「ピボット」について書きたいと思います。ピボット(事業の転換)は起業家の方に相談を受けるときに、かなりの頻度で聞かれるトピックです。
ピボットは、事業がうまくいかなくなったときだけ行うものではありません。この記事にはピボットを検討している起業家だけでなく、これからバリュープロポジションを考える方、事業が順調な方にも読んでもら
スタートアップの最強のボード(取締役会)づくり
"取締役会"、"株主報告会"と聞いて何を思い出すでしょうか。
報告、資料作り、数十ページのパワポ、いつものフォーマットの数字のアップデート、社内リソースの負担、いつもと同じ質問の繰り返し、大量のVC参加者、発言のない参加者、zoom画面の右下に表示される10を超える参加者数。
このnoteは一つでも当てはまった起業家の方に向けて書いています。
取締役会は"もしうまく機能すれば"、本当に強力な、
不況下の事業計画の見直し - 攻めるべきスタートアップ、守るべきスタートアップ
この記事は現在のマクロの状況を鑑みて、スタートアップがどう事業計画を見直すべきか。どういうスタートアップが攻めるべきで、どういうスタートアップが守るべきか、フレームワークを提示するために書きます。
この記事の中では現在のマクロの状況についても言及はしつつも、深い言及や分析は避けます(マクロ分析についてはそのプロの分析を頼ってください)。
はじめに: 現在の状況と認識について現在の状況
2022
enechainへ投資した理由
電力取引プラットフォームであるenechain(エネチェイン)にDCMから投資を行いました。
enechainの特徴は、1)"ペインポイント"とは軽々しく表現できないほどの甚大な損失をもたらす現状の業界課題、2) 電力取引プラットフォームを立ち上げるには最高なタイミング(Why now)と欧米の類似ケース、3) その課題の大きさからの優れた実績、4) 経験あるチームです。この4つについて説明したい
PMFへの第一歩: バリュープロポジション (フォーカスと再現性)
先日Atama Plusが51億円のシリーズBラウンド、CADDiが80億円のシリーズBラウンドの調達を発表しました。どちらも2018年にDCMからシード投資を行った企業です。2つの企業は創業から順調に事業を伸ばしていますが、共通していることがあります。
2社に共通していることはプロダクトローンチ前のシードラウンドと数十億円後半を調達するラウンドで説明されている「バリュープロポジション(valu
起業家気質: 不確実性と変化を楽しむスタートアップな人たち
Noteを書き始めて一番最初に「米国VCが好む起業家の7つの特徴」という文章を書きました。その記事では書かなかった起業家の「当たり前の」性格、そもそもこれがないと多分起業すらしないだろうという、"起業家気質"について今回は書いてみます。
これらの性格は起業家だけに共通するものではありません。スタートアップにいる人たちの多くが持つ性格です。最近大手企業などにいる方や様々な人がスタートアップへの転職
「それってただの機能じゃない?会社になりえるの?」 (機能とプロダクトと会社の違い)
「それってただの機能じゃない?会社になりえるの?」
これはベンチャーキャピタルで働いていて、スタートアップに投資する際によく社内で議論される論点の一つで、特にアメリカではよく聞くセリフです。最近この「機能(Feature)と会社(Company)の違い」について色々考えさせられるニュースがあったので、この質問の意味を説明してみようと思います。
猫も杓子もストーリーTwitterで"Fleet"
成長するスタートアップで働くとなぜ自分も成長するのか
投資先の採用候補の方とお話することがよくあるのですが、その中で、「A社はプロダクトもしっかりしているように見えるしもう出来上がっている。やはりまだ発展途上な企業のほうが学びも多いし面白いのではないか」と、成長著しいA社に入ることを悩む方によくお会いします。せっかくなので考えを簡単にまとめてみます。
個人的には成長著しいスタートアップでの経験をお勧めしています。成長企業の経験の方が自身の成長に向い
UberはPostmatesの「何を」買ったのか
DCMベンチャーズの原です。本日UberによるPostmates買収が発表されたので、なぜこの買収が起きたのか、狙いや背景を簡単に考察してみたいと思います。
この記事では会計上、財務上、税制上のメリットではなく(買収時にはとても大切になりますが今回は詳細がわからないので割愛します)、事業上のシナジーをフードデリバリーやライドシェアに投資をしてきた投資家の観点から考えていきます。
(DCMはUbe
スタートアップのマーケット論その3: マーケットダイナミクス
マーケットサイズについてのNoteでSequoiaのDon Valentineのインタビューを載せました。そこで彼は、マーケットの大きさだけでなく、マーケットダイナミクスや競争環境についても言及しています。
We have always focus on the market, the size of the market, the dynamics of the market, the nat
スタートアップのマーケット論その1:「大きなマーケット」とは何か
テックスタートアップのベンチャーキャピタルへのピッチ資料には、チーム、プロダクト、ビジネスモデルなど様々なことが詰め込まれていると思いますが、その中の一つで意味があるのかないのかよくわからないと思われがちなのが「マーケットサイズ」です。
起業家の皆さんはVCに「ちょっとマーケットが小さいなあ」などと言われ、「そしたらちょっと市場規模増やしとくか」と無理やり計算したり関連市場を増やしたり、「これ意
スタートアップのマーケット論その2: "Why now"指数関数的な変化、技術の変曲点
前の記事に書いたGmail開発者のPaul Buchheitの言葉を再掲します。
(巨大なテック企業になるためには何が必要かと聞かれて)
Google, Netflix, Amazonのようになるために必要なことは、指数関数的な変化の上で事業を行っている事。インテルや初期のマイクロソフトやアップルは"マイクロコンピューターの勃興"という変化の上で事業を行っていた。マイクロコンピューターがなければ
Moat(モート): スタートアップの競争戦略概論
moat /moʊt/ [名]
(都市・城壁の周囲に掘られた)堀
Moat(モート)とはウォーレンバフェットと盟友のチャーリーマンガーが様々なインタビューで繰り返し繰り返し述べている事業において最も大切な概念です。
僕が投資家として、最も時間と思考を費やしている対象もMoat(モート)です。
バフェット/マンガーにはMoatについてのいくつもの引用がありますが下記の質疑応答の一部がわかりやすい