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観るサイクリスト ~自転車映画レビュー~ 泣き虫しょったんの奇跡

ただの自転車好きが勝手に自転車映画を批評します。
基本的にネタばれを気にせずつらつらと書いていきますので、気になる方は注意してください。

泣き虫しょったんの奇跡

異色の脱サラ将棋棋士・瀬川晶司の自伝的小説を映画化。監督は奨励会に在籍していた経験を持つ豊田利晃。主な出演は松田龍平、RADWINPSの野田洋次郎、永山絢斗、染谷将太。チョイ役に妻夫木聡、松たか子、藤原竜也が出演するなど豪華俳優陣が花を添える。

自転車好きの私ですが、実は将棋も結構好きで、将棋のためだけにABENAプライムへ加入してたりします。今作には実在の棋士が多数登場するのですが、全員誰か分かりましたね。(笑)

そのうち、将棋とかABEMAでも記事書いてみようかと、思っていたり思っていなかったり。

将棋映画と思いきや、まさかの傑作自転車映画!?

将棋好きとして、当然のように本作を鑑賞していたわけですが、これが実は素晴らしい自転車映画なのであります。その理由を記します。

まず、この映画のストーリーは以下の通りです。
①主人公が将棋と親友に出会い、熱中していく
②プロを目指して奮闘するも、厳しい世界で情熱を失い夢破れる
③失意の主人公が再び将棋と親友に出会い、情熱を取り戻してもう一度プロを目指す

よくあるワンスアゲイン的な構造と言っていいと思います。その肝ともいえる①と③を、なんと自転車で描いているんです!

目にした瞬間「マジか!?」と衝撃を受けました。
自転車に注目して映画を見続けていると、突然いい自転車映画と出会えるのが良いところかもしれないです。(笑)

公式HPにそのシーンの写真があったので、拝借させていただいて説明を加えたいと思います。①の場面。

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二人でずーっと将棋を指していた主人公の瀬川君と親友の鈴木君を見て、瀬川父は将棋道場へと二人を連れていくことにします。写真はその時のシーンです。

引率のはずのお父さんは後方に置き去り。二人はもうワクワクが止まらない様子で、抜きつ抜かれつ道場へ突っ走っていきます。
これだけで、二人がお互い高めあう関係であり、それが楽しくて仕方ないというのが分かります。大人なんか置き去りにして、二人は高みへ達することを暗示していますね。

これだけの意味を、わずか数秒の自転車のシーンに込めているんですから、これを自転車映画と言わずしてどうしますか。(笑)

また、乗っている自転車も時代に合っているもので感心しました。瀬川少年が乗っていたのはスーパーカー自転車と呼ばれる自転車。1970年代に流行ったタイプです。ハンドルについているシフトレバーが、AT車を模したものがトップチューブについていたり、スーパーカーを意識したような造りが特徴的です。
鈴木少年が乗っている自転車は普通の一般車ですが、グリーンで小奇麗なモデルですね。家が瀬川君と比べると、少し裕福で上等な暮らしをしている雰囲気がよく出ています。
瀬川父のものは、今では実用車と呼ばれるような古い自転車。モノによっては、高額で取引されるような自転車です。将棋道場の駐輪場に停まっている自転車も同じような実用車で、よく集めたなーと感心してしまいました。

次は、③の場面。

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左側が親友の鈴木君、右が瀬川君です。二人とも成長して大人になりました。しかし、二人はあの頃と同じように抜きつ抜かれつで将棋道場へ向かいます。写真では違いますが、映画では①と全く同じアングルで撮影されています。これだけで、瀬川君に当時の情熱が戻っていることをよく表現できている名場面です。

乗っている自転車を見てみると、鈴木君のものはちょっとおしゃれなシティバイクですね。色合いが少年時代に乗っていた自転車と似ているは、本質的な部分で変化していないことを表してのことでしょうか。一方の瀬川君は良く目にするママチャリです。高価な自転車や気取った自転車には乗れない彼らしさが出ていると思います。深読みしすぎか?(笑)

映画としての評価は……分からない!(笑)

自転車映画としては100億点ですが、普通の映画としてはどうかと言われると、どうなんでしょうか。(笑)
良作と言っていいような出来だとは思いますが、自転車だけでなく、将棋とかの細部に気が気になって、公平に映画を見るのが難しいんですよね。

まぁ、一つ言えるのは、ワンスアゲインものにしては分かりやすいカタルシスが少ない気がします。かなり淡々としています。これは将棋という題材を考えてあえてこうしたのか、あるいは監督の特徴なのか微妙なところではあります。ここで好き嫌いは分かれるかもしれないですが、駄作ではないと感じます。

この作品はNETFLIXでは視聴できないですが、amazonプライムやU-NEXTで観られます。おススメです。

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