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目に見えるものを語ってはいけない

株式会社アンドパッドでアートディレクターをしている太田です。

デザインを制作したあとは「プレゼンテーション」をしますよね。プレゼンテーションを行う際、デザインの意図を正確に伝えるために気を付けなければならない点がいくつかあります。

今回は、過去の失敗談を交えながら、デザインのプレゼンテーション(※)を行うにあたって心掛けていることを書いてみようと思います。

※グラフィック、コミュニケーションデザイン領域におけるデザインのプレゼンテーションです。



1. 目に見えるものを語ってはいけない

「見えているものを語るな」

これは当時の上司に言われた言葉です。
社会人2年目。まだ十分なスキルが備わっていなかった私は、ある案件のクリエイティブ制作とプレゼンテーションを任されました。

今思い返すと、経験値の浅い社員に失敗するチャンスを与えてくれた会社と上司にとても感謝しています。

予想通りというべきかプレゼンは失敗しました。
当時制作したデザインのアイディアやクオリティは良いものだったと記憶していますが、失敗したのは「何を語るか」という点でした。

デザインの意図を伝えるということがどういうことなのか理解できておらず「デザインの見た目」をそのまま説明したのです。これはデザインのプレゼンテーションになっていません。

見れば分かることは語らない

例えば以下のような説明は不要です。
・商品が目立つように大きくレイアウトしています
・背景には和紙のテクスチャを用いて上質感を出しました
・桜の花をあしらい、春らしい季節感を演出しています
….など


何気なく説明してしまいそうですよね。

前回、デザインって結局「見た目」のこと? で書いたのですが、完成後(リリース後)はデザインを語ることができません。ですがプレゼンの場は「完成後の状況をイメージしてもらう場」です。

上の図をご覧ください。

つまり
語る→「デザインのコンセプト」
語らない→「見れば分かる見た目」

「コンセプトの話」と「見た目の話」をしっかり区別する必要があります。例えば以下のような違いです。

学生の受験を応援する架空の広告

当時の私は、見れば分かる「見た目」を語ってしまうという恥ずかしい失敗をしてしまったのです。

デザインとは結局「見た目」のことだ。と言われるほど重要視される視覚情報ですが、「見た目」を語る場面はリリース前も後もほぼありません。

また、見た目を語る場面が無いデザインほど、「良いデザイン」と言えるのではないでしょうか。


2. 何をどのような順序で話すか

ではプレゼンの場では何をどのような順序で語れば良いのでしょう。
例えば以下です。

・アイディアのきっかけとなったデータ
・コンセプト
・デザインそのもの(←クライアントが一番見たいもの)
・プロジェクトやキャンペーンを企画した背景、想い
・コンセプトメイキング、デザインに至るストーリー
・具体的な施策の展開
・マーケティング戦略フローにおける、その他施策との関係性や役割
・デザイン(まとめ)
※細かくは案件によって異なります

「結論から先に言う」ことを意識して、なるべく序盤でデザインを見せるようにしたいですね。そして具体的な施策の展開・役割などは後半に話すほうが良いと思います。

また最初に挙げているデータもあると良いです。オリエンされた課題が現在の社会情勢においてどれだけ重要なものであるか、その課題を解決するデザインの貢献度が数字で示された情報があると、その後の話の納得感が大きく変わります。


3. プレゼントを贈る

プレゼンテーションの語源は英語の「present(提示する)」なので、相手へ贈り物を届ける気持ちで構成内容を考えるべきです。

その際に、相手が期待しているものをそのまま用意して贈ったとしても、心を動かすことはできません。相手の期待を大きく超える必要があります。

期待を超えた提案を贈り届けると、「ここまで考えてくれたんだ」という感謝や感動が相手に生まれるかもしれません。ですが、企画意図の方向性にずれが無いこと・課題を解決する手段を提案すること、これらは大前提です。


4. フィードバックへの対応

良い内容をプレゼンできたとしても、相手に納得してもらえない場合ももちろんあります。

こういう方向性も見てみたいのですが…

A案のここを修正したい、A案とB案の折衷案を見たい….など。フィードバックの内容はよく咀嚼・熟考し次の一手を決めますが、場合によっては一度言われた通り制作し「このようになるという結果を共有する」必要もあります。当然ながら、非デザイナーの方は完成形をイメージすることはできないからです。これは議論を建設的に進めるための必要な工数です。

社内外のメンバーやクライアントと伴走し「より良い完成形を目指す」ために協働します。そしてようやくデザインは世の中へ発信されます。


5. 最後に

デザインを伝えるためのプレゼンテーション手法、いかがでしたか?自分の考えを明確に伝え、相手の心が動くプレゼンテーションを設計することは難しいですよね。

これからも「デザインが伝わるプレゼンテーション」を心掛けていきたいです。そして、素敵なデザインがリリースされた未来を一緒に想像できるようなプレゼンを目指します!



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