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スターマインと線香花火

同じジャンルにあっても、まったく違う文脈で人の心を動かす物が存在します。

花火というジャンルでいえば、大規模な花火大会のクライマックスで見られるスターマイン。世の花火職人たちの最大の見せ場であり、力強い演出が次々と行われ、圧倒的な感動をもたらしてくれます。

一方、静かに、ひっそりと愉しむ線香花火。スターマインほどのインパクトは無いかもしれませんが、儚い光をみつめているその瞬間、まちがいなく、そこには感動があるのではないでしょうか。

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文脈は違えど、このように感動を生む方法は世の中に沢山併存しています。

僕はよく人と話す時に「VJやってます」ということがあります。VJというとDJがフロアの前で音を奏で、会場には沢山の観客が体を揺らしているようなクラブ空間を想起される方が多いかもしれません。実は僕の場合、クラブでVJをしたことはほとんどなく、そのほとんどが企業イベントや、興行イベント、アートイベントです。

クラブでの演出は、イメージとして大規模花火大会に近いものがあります。会場にいる人たちのグルーブを作るのが仕事です。ビジュアルの展開にメリハリがあり、バリエーションが豊富なのが特徴なのかなと思います。

一方、僕がかかわらせてもらっているような現場は「体験をつくる」であったり「世界観を作る」といった文脈が多い。伝えたいものの特徴を引き出し、五感を通じてメッセージを届けるといったことがゴールです。

アプローチとしては、線香花火に近いかもしれません。演出にあたり、かならずしも展開にメリハリはなく、バリエーションもそれほど用意しないことが多い。ですが、線香花火のようにビジュアルで1/fの揺らぎを作り、思考の余白を作ることを意識しています。

よく関わらせていただいている超テクノ法要の映像がわかりやすいかもしれません。素材としては仏像だけで、他は全てプログラムで音声から生成しているビジュアルです。僕自身は仏教の教えはわからないのですが、朝倉住職さんのサウンドから得られたインスピレーションを元に、参加いただける一人一人それぞれが、自分ならではの未来を見出せるような余白を生むことを意識して作っています。


来週は、電子音楽とデジタルアートの祭典「MUTEK」のexhibitionに参加させていただきますが、ここではバーチャル空間で新たなオーディオビジュアルを提案しています。その中で実現しようとしていることは、具体的なメッセージではなく「思考の余白を生みたい」という一点です。

線香花火のように、そこに派手さはないかもしれません。今を生き抜く上で、何かしらの発見を得てもらえたら幸いです。


MUTEK.JP+MX virtual exhibition
Transgresorcorruptor & Ken-ichi Kawamura MX/JP

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