熊谷知事のお知らせ『「臨時」現金給付について』
石破首相の総合経済対策について、公明党が低所得者層への給付金を提言するとの報道がありました。
近年、毎年のように低所得者への「臨時」現金給付が行われていますが、市町村に多大な負荷をかけている事業です。同じ事務にも関わらず市町村を集めて説明会を行い、市町村毎に事務フローを整理し、印刷・システム構築・コールセンター等を別々に民間事業者に委託発注しており、さらに突然降ってわいた事務に振り回される市町村職員の人件費は時間外勤務手当しか国から市町村には支給されません。
その市町村職員の労力は本来、住民のために別の福祉や事業に従事するための労力です。
給付事業の是非は国が決めることですからコメントしませんが、国の都合で何度も配りたいなら、市町村から住民データを時限的に集め、国で一元的にするべきと、私は市長時代から何度も国に直接訴えています。が、事態は一向に改善しません。
定額給付金の際、当時の総務大臣に要望した際に、できない理由として「最高裁判例で国が全国のデータを一元的に持つことは認められていない」という趣旨で、できない理由を説明されたことがあります。
DXや最高裁判例に詳しくない大臣や国会議員が、国で一元的に仕事をしたくない役人に、最高裁判例を引き合いにした、できない理由を説明され、それを鵜呑みにしている状況です。
その時も私は、特例法を定め、時限的に住民データを一つの場所に集め、事務終了後はデータを破棄する形であれば最高裁判例には抵触しない、最高裁判例をもって国が一元的に行わない理由に拡大解釈しないで頂きたいと伝えましたが、言っている意味が分からなかったようで何の反応もありませんでした。
岸田政権が決めた中途半端で、性急な減税も市町村の現場を困らせました。
給付と減税を組み合わせるという前例のない手法で、給付と減税の狭間にいる層などで複雑な計算が必要な状況にも関わらず、解散が噂されていた6月までに減税をしろと言われ、そうした層は一旦減税して、後で残りを清算する、といった無茶な事務フローを市町村は押し付けられました。この場合は市町村だけでなく民間企業にも多大な負担をかけています。1年限りの無駄かつ急ぎの案件に振り回される行政職員・民間企業の徒労感は壮絶でした。
今回仮に現金給付を行うこととなった場合、来年の都議選・参院選が行われる6月・7月頃までに配れ、と話が来るのでしょう。
平時に一体政府は何をしていたでしょうか。給付事業について効率的に行うための議論・検討、法整備、システム構築等を事前に十分に行ってきたでしょうか。
政権都合で市町村を振り回さず、責任をもって国で一元的に実施して下さい、これが現場の自治体の切なる願いです。
異例の短期間で行われた総選挙といい、政治家が思いつく無茶な案件に官僚が身体を張って止めなくなった、止められなくなったことを見るにつけ、この国の将来に暗然たる気持ちになります。
官僚が気概を持てる、適切な政治家と官僚の関係が取り戻されることも切に願うものです。
※転載に当たっては熊谷知事の許可を得ています。