奈良県橿原市「八木駅南市有地活用事業について」行政視察
視察日 2024年8月19日(月)
視察場所 奈良県橿原市 橿原市役所市庁舎 カンデオホテルズ奈良橿原
井ノ上副議長より冒頭の歓迎の挨拶を頂戴いたしました。
「橿原市は奈良市に次ぐ2番目に人口が多い都市で人口約12万また面積は銚子市より若干小さい面積です。また庁舎の建て替え問題が20年来継続している問題課題だったそうです。分庁舎で市民窓口としての役割。本庁舎に対してはいまだ解決はしていない。」との事でした。「日本国始まりの地である事。重要伝統的建造物保存地区がある事。また市庁舎や文化が八木駅前に集中しているという紹介がありました。」視察先の展望階から街を見下ろすと人口が橿原駅周辺に集まっているのがよく見えました。しかしながら人口減少の波には抗えず、少しずつ人口は縮小しているとの事でした。
1. 視察目的
橿原市役所市庁舎は、PFI(Private Finance Initiative)方式により建設された複合施設です。銚子市で将来予定されている市庁舎複合施設の建設に向けて、このPFI方式の運用と、商業施設やホテルと公共施設の共存モデルがどのように効果を発揮しているかを確認するため、視察を実施しました。
特に以下の点に注目しました。
・PFI方式の具体的な運用プロセス。
・民間企業との連携による費用削減およびリスク分担。
・市民サービス提供への影響。
・商業施設やホテルとの共存による地域経済への効果。
2. 視察内容
(1)PFI方式成功までの経緯
・1度目、民間事業施設からの提案で温浴施設、クリニック、保育、住居施設で地上9階建てという提案があったが1度目のPFI事業はうまくいかず不調で終わる。
・2度目、PFI事業に市議会議員も特別委員会として参加するも一社だけ提案があっり書類提出が為されず失敗。
・3度目、駅前の一等地でありながら未利用地となっていたが、建築物を地区計画で45mまでの高さの建物を建設できるように変更し成功した。PFI手法の一つBTOを採用する事にした。“Build Transfer Operate”のことです。つまり民間事業者が施設を建設(Build)その後、施設の所有権を市に移管(Transfer)し、施設の運営(Operate)を行うものです。
・市有地活用検討委員会を立ち上げました。
・市長が自らトップセールスを行い市が所有するなら参加するという企業が現れた。
・市が所有し事業者が賃借して独立採算で運営していく方向で進んだ。
・全市議会議員が参加する橿原市市有地活用検討委員会が発足し活用事業に対して提言した。
・今事業に全部で13事業者が興味を示した。
・宿泊施設については坪単価2,500円に決定し、後は事業者からの加算とした。
(2)PFI方式による市庁舎建設
橿原市役所市庁舎は、PFI方式を採用し、民間企業とのパートナーシップにより設計・建設が行われました。PFI方式では、民間企業が建設・運営を担当し、公共施設の管理運営においても一部民間のノウハウが活用されています。
PFI方式の利点として、初期投資の軽減や施設管理コストの最適化が挙げられます。市の負担を最小限に抑えつつ、ホテルや商業施設などの収益性のある事業と連携することで、公共施設の維持管理費用を抑制する仕組みが機能します。
(3)民間企業との連携
橿原市役所市庁舎は、民間企業が運営を行うカンデオホテルズ奈良橿原との複合施設として運営されています。このような民間企業との連携は、市庁舎単独では実現しにくいコスト削減と利便性向上を実現しています。特に、PFI方式を活用することで、以下の成果が確認されました。
・初期建設コストの抑制と、費用の段階的な支払いによる財政負担の軽減。
・民間の設計・建設ノウハウを活用し、効率的な施設運営が実現。
・ホテルや商業施設からの賃貸収入など、公共施設の維持に寄与する仕組み。
(4) PFI方式によるメリットと課題
PFI方式を採用したことで、橿原市は次のようなメリットを得ています。
・公共事業に民間の資本を導入することで、市の初期コストを抑えられる。
・維持管理を民間が行うため、運営コストの効率化が進む。
・市役所が商業施設やホテルの下に位置することにより、来庁者の利便性が向上し、商業活動の活性化にもつながっている。
しかし一方で、以下の課題も確認されました。
・民間企業との契約内容やリスク分担の精査が重要であり、契約締結時の条件設定がプロジェクトの成否に大きく影響する。
・長期的な運営において、民間主導の運営が公共サービス提供に与える影響についての監視が必要。
(5) 商業施設およびホテルとの共存による効果
橿原市役所市庁舎は、カンデオホテルズと一体となった複合施設として運営されています。PFI方式で実現したこのモデルでは、ホテルが市庁舎と連携し、周辺地域の経済活性化に寄与しています。観光客やビジネス客が市庁舎に隣接した施設を利用することで、地域の経済活動が活発化し、施設全体の運営収益も向上しています。この複合施設の構造により、行政機関の利用と商業利用の相乗効果が生まれ、市庁舎の利便性向上と地域全体の発展が確認できました。
3. 銚子市の複合施設建設への提言
橿原市役所市庁舎の視察結果を基に、銚子市での複合施設建設におけるPFI方式活用の提言を以下に示します。
(1) PFI方式の採用によるコストの最適化
銚子市の市庁舎建設においても、PFI方式を採用することで、初期コストを軽減し、維持管理費を効率化できる可能性があります。民間のノウハウを最大限活用しつつ、市の財政負担を最小化するためには、契約内容の慎重な検討または事業者の選定が重要であり必要です。
(2) 民間事業との連携
橿原市で確認されたように、ホテルとの連携は、市役所単独での運営よりも地域の経済活性化に寄与します。またPFI事業を利用する事によって、銚子市の財源だけでなく民間企業の財源も上手く活用する事によって、市の負担軽減に繋がります。また銚子市は、観光地でもあります。民間企業と協力し、地域の観光資源や経済活動と連動するような複合施設の設計を進めることが推奨されます。
(3) リスク分担の精査
PFI方式では、民間企業と公共機関とのリスク分担が重要です。契約内容や運営計画を詳細に検討し、長期的に双方が利益を享受できる仕組みを構築することが、プロジェクトの成功に不可欠です。
4. 結論
橿原市役所市庁舎の視察を通じ、PFI方式による公共施設建設が、財政面および地域活性化の両面で多くのメリットをもたらしていることが確認されました。銚子市においても、この方式を採用し、地域の商業施設や観光産業と連携することで、持続可能な市庁舎の運営と地域発展が期待されます。
質疑応答
Q. 賃貸の料金は当初坪2,500円の想定だったとの事だが結果いくらに設定したのか?
A. レストランは坪1万円、ホテルは坪2,500円で宿泊については歩合賃料をお支払いいただく。
Q. 反対派の主だった意見はどんなものがあったか?
A. ホテルについて民業圧迫にあたるのではないか?そこは、インバウンドや独自のネットワークで今までの宿泊客では無い新たなお客さんを呼んでくるということで納得してもらった。
Q. 南市有地を開拓しようとなったそもそものきっかけは?
A. 埋め立てして塩漬けになっていて活用できていなかった駅前の一等地を、市民の利便性を高めるため。また分散した庁舎をまとめるため。
Q. 庁舎と宿泊施設を一緒にという発想は?
A. 奈良県内では宿泊場所が少なく不便という声があった。県としても宿泊施設に興味があった。大阪や京都に泊まる方が多く、前市長が橿原市に宿泊して欲しいという強い思いで実現した。
1回目2回目では大変、残念な思いをした。3回目こそはとなった。
Q. 契約してから事業終了までの期間はどれくらいか?
A. 20年。
Q. 20年というのは意味があるのか?
A. 特段法律で決まっているわけではない。財政負担としても特段決まっているわけではない。建物に大規模回収があるので20年というのが多いかと思う。
Q. 効果としては?
A. 駅前周辺では以前は空き店舗があったが飲食関係の空きテナントは今は無いくらい埋まった。ホテルの稼働率は8割を越えている
Q. 市民から文庁舎の窓口についてはどうか?
A. 好評を得ている。
Q. 6年経過して課題などはあるか?
A. 20年間の事業を終えたあとどうするのか?PFIにするのか?など検討しなければならない。
Q. 本庁舎の方はどうか?
A. 解体してさまざまな所に分散しているのでそこが課題。
Q. 市民の反応はどうか?
A. 市民の方からは是々非々あった。起爆剤と民業圧迫になるとの両方の意見があった。市民が直接泊まるわけではないので意見は様々あった。駅前の賑わいに関しては貢献していると評価している。
Q. 防災の拠点をどう考えているか?
A. 本庁舎に拠点があるべきだという話なので、現在キャパの問題がある。
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