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NOT A HOTEL: 流通という文脈

今朝NOT A HOTEL (https://notahotel.com/) の濱渦さん (https://twitter.com/shinji_hamauzu?s=20) のツイートをみて、ほんと不動産流通の芯食った話だなぁ、とめちゃ関心してしまいました。そこで自分自身の備忘もかねて久々のnote。

不動産のEC

「不動産流通」というと従来のホテルや不動産界隈の方々からすると違和感あると思いますが、個人的にはNOT A HOTELのコアバリューの一つはここです。なぜならNOT A HOTELは「不動産のEC」であり、もっというとその不動産に紐づいた「体験価値」をも流通させていく、そして買い手もその流通を促進する重要な役回りを果たすことになります。乱暴な分類にすると、いわゆる宿泊商品・体験の流通が従来のOTA (Online Travel Agency)から、むしろEC (Shopifyとか)の方にシフトしていることと同じことが不動産でも起こるってことです。

不動産流通の構造

不動産投資やファンドのプレーヤーはあまりこの視点はないのですが、ECとか、そもそも小売りとかを思い浮かべてみると想像しやすいかもなので、そちら念頭に不動産流通の仕組みを簡単に整理します。

不良債権処理をお題目に2000年代初頭に不動産証券化の法整備、その活用が活発になりました。そういった背景で、不動産流通(売買や付加価値付けの流れ)の仕組みに新しいプレーヤーが入ってきます。

①ファンド(エクイティ)・レンダー(デット)など資金の出し手

特にエクイティサイドでいわゆる「ハゲタカ」と呼ばれていたプレーヤーです。ある程度のリスクを許容しながら定められた投資期間で資金回収を図るビジネスモデルで、ホテルでいうと宮崎シーガイアのリップルウッド、リーガロイヤル成田のグローブ (のちのイシン) とかが挙げられます。また流動化というところでも国内初のホテル証券化 (舞浜のシェラトン) が行われたのがこの時期です。

そして従来のプレーヤーである以下が続きます。

②不動産開発・売買プレーヤー

③管理運用・運営者 (オペレーター)

①の登場は、資金調達の選択肢が増えて、不動産という非常に大きな資本を投下せねばならなかったところに大きな発展がみられたメリットがありました。

一方で、投下されるリソース(お金、人材等)の配分は、①→②→③のように矢印の順番で行われ、そして当然にそれぞれの段階で利益をとっていく。特にリーマンショック前には顕著だったけれど、①では一部行き過ぎた利潤追求が行われていました。

そうなると③に流れてくるリソースは①・②より劣後(というのは強い言葉だけど)、経済的、時系列的に順番が「後」となり、当然、付加価値付けなどクリエイティブ面の原資がありません。副次的には労働環境の「ブラック化」などのしわ寄せもきてしまっています。

もう一つ、産業構造の固定化があります。どの産業でも大きくなると陥ってしまうのですが、①・②・③においてそれぞれ相場観ができてきます。③だと「ホテルの人件費は売上の20%くらい」とか、ですね。なかなかここから脱却することは難しく、ここには③だけの構造改革ではなく、①・②も巻き込む必要があるのです(余談ですが、人材投資・教育の分野で池尾が手掛けているのがこの部分(エコシステム一気通貫で巻き込んで進める)です)。

ここまで従来の流通/産業構造、before NOT A HOTELを見てきました。

そしてafter NOT A HOTELです。

エモいファイナンス w

個人的には今年一番の名言「エモさはWACCを低くする」

NOT A HOTELはいまのところVCから資金調達をしています。その資金使途には不動産購入 (馬購入も?) も含まれていますが、この時点でも従来の不動産事業とは異なっています。

従来であれば、みなさんが個人居住用として不動産を購入するときと同じように、頭金を準備して、そして購入する不動産はじめ個人資産などを担保にお金を借りて購入します。そのときの担保価値、評価をお金の貸し手(銀行などのレンダー)などに委ねることになるので、そこは条件(金利)も含めコントロールができません。そしてここでもその基準はある意味固定的です。那須の高原よりも、千代田区一番町などのほうが一般的には高い評価となります。

これは事業性・将来性を勘案する不動産ファンドでも同様で、エクイティ投資家としてレンダー投資家よりはリスクを取りますが、それでも「エモさ」で投資条件が緩和されるわけでないのです。

VCや個人投資家の資金、そしておそらく同様のプロファイルを持つ買い手が当面は中心になるとすれば、従来のレンダー、ファンドよりも期待する利回りと時間の概念が従来よりも余裕があるものになっているはずです。

そうなると①→②→③という流れの中で、①に過剰に留保されていたリソースが②と③に流れ込むことになります。また後述の違うこと(体験価値の創造、クリエイティブ)に使える原資ともなります。

流通全体の再構築と再配分

今回はあまりDXの部分は触れませんが、NOT A HOTELの濱渦さんはアパレルECを手掛けられていました。まさに流通革命のど真ん中にいらっしゃった方が、不動産という固定的な産業構造に機会をとらえ、またホテルをはじめそのプロダクトの付加価値付けの余地・余白はある意味で物販よりも広く、深いので、そこに商機を見出されているのだと思います。

ここからは個人的な憶測です。

①→②→③という従来の流通を分解し、再構築される取り組みですが、おそらくそこに「→④→」というが入ってくるではないかと思います。

それは流通システムの中での「(一次の)買い手」です。NOT A HOTELの不動産プロダクトのオーナーはホテルとして貸し出しができますが、これは二次流通の出発点となります。そしておそらく二次流通に流れるときには、今後何らかの付加価値付けが行われるはずです。それはNOT A HOTELとしての体験価値による後押しももちろんありますが、NOT A HOTELのオーナーが直接付加価値付けの取り組みもできる余地がでてくるのではないか、そしてそれができる人を当初のオーナーとして(ある意味で)セレクションされていくのではないか。

ただの妄想ですが、たとえば芸術分野のオーナーは自分が持っているNOT A HOTELをギャラリーやショールームとして設え、装飾し、二次流通させていく。①→②→③→④という流通の中で、体験価値が増幅される仕組みになっていくのかなぁ、と。

そして先ごろ発表されたInsitu (https://www.insitujapan.com/) との合弁会社、NOT A HOTEL MANAGEMENTは特に③→④の重要なパートを担っていくのかと思います。なので単にホテル運営会社というところではなく、流通プロセス文脈の「クリエイティブ」「オペレーション」がメインドメインな気がします。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000080389.html

最後に

一緒にやりたいなぁ(笑)

(言葉が乱暴ですが)人材流通・調達の設計が③→④でスコープにはいってくると思うので、そこやりたいです! 

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