シンガポールの友人よりTHE ECONOMISTの記事が送られてきた。
「今後の観光マーケットについて」話をするとき、最近はややトラベルバブル系 (米国マーケットの超回復のニュースなど) のポジティブな話題に偏っていて、すこし食傷気味だったので、この記事自体は少し前 (2021.5.12) だけど自分自身リバランスできて面白かった。
The road to recovery for Chinese outbound tourism
タイトルは「中国本土からの海外旅行が今後どのように回復していくか」。
最初のExectutive Summaryからの抜粋は以下の通り
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによると、中国では2022年の第2四半期までに全人口の60%にワクチンを接種すると予想。しかし、政府は海外から帰国した観光客の検疫要件をすぐには緩和しない、とのこと。
政府はこの検疫要件を2022年後半まで緩和せず、まず香港とマカオから帰国する旅行者を対象とする。そして続いて2023年にリスクレベルに応じて他の国も対象とする。
結論として、2024年初頭に中国本土からの海外観光がパンデミック前のレベルに戻ると予想。
中国人観光客は、安全でビザの申請が簡単な国に誘因される。また、中国製ワクチンを承認している国への旅行は、より便利になると思われる。
あくまでもEconomist Intelligence Unit (EIU) の見立てではあるものの、すこし今の日本人の感覚からするとゆっくりとした回復想定かもしれない。
そしてこれも面白いのだけど、EIU独自に整理した「中国人観光客から見た各国の魅力度マトリックス」というものがあり、日本はここで13位タイ。
詳しくは下図に譲るけれど、2019年度で中国人観光客の訪問者数が4位だった日本が13番目となってしまったのは、「Using Chinese Vaccine ?」 「Population Density」という項目の点が高いため (各項目の点数が低ければ低いほど、魅力度指数としては上位にくる)。
後者の人口密度は国全体としてはいかんともしがたいけど、これも国内需要のトレンドと同じく、中国人観光客にとっても日本に入国した後の訪問先選好として「都市部→過疎部・自然地域」という動きがあるのかもしれない。
そして前者の「中国製ワクチンを接種したかどうか」、これは米中関係の問題もあり、ちと悩ましいところ。この部分でシンガポールや韓国も日本同様に序列を下げる要因にもなっているので、何らかの政治的な妥結点が必要になってくると思う。
記事にはない視点:2022年冬季オリンピック
あとこの記事では触れられていないけれど、2022年には冬季オリンピックが北京で予定されている。今のところのスケジュール (すでにVersion 9 !)を見るに、オリンピック自体は来年の2月2日から20日まで (パラリンピックは発表無し)。
https://new.inews.gtimg.com/tnews/669a822a/5c16/669a822a-5c16-4295-9437-331c0264f9ff.pdf
中国にとってオリンピックは国威発揚の場というだけでなく、世界にむけた政治的メッセージを発信する機会でもあるので、それまでは現状の方針である「”Zero-Covid” approach」を維持するはず。というかそこまでの実行スケジュールを見据えた今があると考える方が良い。
これは日本のように「withコロナ」状態と日常との折り合いをつけながら進めるものと厳密度がまったく違う。「”Zero-Covid” approach」はその名のとおり感染者数を「ゼロ」にしていくものだから。
上記の「中国製ワクチンの接種有無」とあわせ、そういったところでは中国人観光客にとっていくら日本が入国規制を緩和したとしても、二の足を踏んでしまうかもしれない (日本から中国本土へ帰国した時の要件が厳しいため)。
このあたり各国のポリシーの把握とともに、日本との関係性 (同盟国たる米国との政治的関係もあわせ) によって想定が違ってくるので、今後も定期的に見ていこうと思っています。