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2年経っても一歩も進まないオジサンの観察。あるいは彼のLearn Worstについて。


人様に誇れることなんてほとんどないのだが、ダメなオジサンを見てきた数は結構誇れるかもしれない。

昔はよく、ひねくれた立て付けのイベントをやっていた。「人を褒めたらイエローカードが出る、悪口限定の飲み会」とかそういうものだ。

僕はこの手のイベントを企画する時、いつも「ハイコンテクストな面白さを理解できる知的な人たちが集まって欲しい」と思っている。「悪口限定飲み会」の場合も、できればこのnoteの購読者ぐらいの知的レベルの層に集まって欲しかった。皆の「楽天にはきっと東条英機がいる」みたいな話を聞きたかった。


しかし、実際にはそうならなかった。「おいバカ!」とか「ブス!」とかそういう全然面白くないフレーズが飛び交ってしまい、「僕がやりたかったのはこれじゃないな」と思うことになった。敗因はダメなオジサンが客としてたくさん流入してしまったことだ(※ダメな人は老若男女問わず存在するのだが、割合で言うとなぜか圧倒的にオジサンが多い。不思議である)。

したがって、この手のイベントを繰り返す内に、「ダメなオジサンを引き寄せないためにどうしたらいいか」というテーマを何度も考えることになった。

「引き寄せの法則」を題材にしたゴミみたいな本はたくさんあるが、当時の僕が切実に求めていたのは「引き寄せない法則」であった。



結局、「引き寄せない法則」を発見することはできず、僕は大量のダメなオジサンを見てきた。

一人の女性に付きまとって無限に時間を奪おうとするオジサンや、「それ、もっとこうした方が面白くない?」と的外れな提案をしてイベントの進行を妨げるオジサンや、完全予約制のイベントなのに飛び入りで来て参加したがるオジサンなどがいた。

「幸せな家族は皆同じように見えるが、不幸な家族は皆それぞれに不幸である」と書いたのはトルストイだが、僕は「良いオジサンは皆同じように見えるが、ダメなオジサンは皆それぞれにダメである」と書こう。願わくば、自分は良いオジサンになりたいものだ。


さて、ダメなオジサンを間近で観察してきた僕は、不本意ながらダメなオジサンについての知見を貯めることに成功した。そんなもの貯めたくなかったのだが…


ということで、今日はとあるダメなオジサンの実例を書きつつ、彼らについての知見をシェアしたいと思う。

描き出したい大テーマは「ダメなオジサンの恒常性」だ。

人間は成長する生き物である。ダメだった人間も1年後にダメでなくなっていることはしばしばある。本マガジンではインターネットの地獄だった人間が地獄を卒業するという事例も見てきた。


だが、ダメなオジサンは全く変化がないように見える。特に、今回具体例として挙げるオジサンは、2年間経っても何も進歩していない

これは驚くべきことだ。いわば、ダメなオジサンには「恒常性(ホメオスタシス)」があるのだと思う。

恒常性(ホメオスタシス)とは、生物が内部環境を一定にしようとするはたらきのことである。40℃の猛暑日に外を出ていてもあなたの体温は40℃にはならないとかそういうことだ。我々の身体には恒常性があるので、勝手に汗をかいて体温を下げてくれる。


どうやら、我々の身体同様、ダメなオジサンには恒常性があるらしいのだ。普通だったら進歩してもよさそうなのに、何一つ変わらない。彼らはホメオスタシスおじさんなのだ。

体温は一定じゃないと困るので、恒常性はとてもありがたい。しかし、考え方とかには恒常性があったら困る。人間として全く進歩していかないことになってしまう。実際、ほとんどの人間には思考の恒常性はない。5年前に自分が書いたブログを読んだら恥ずかしくて死にそうになる。人間はそういう生き物だ。

ではなぜ、ホメオスタシスおじさんは思考の恒常性を身につけてしまっているのだろうか?

それが、本日の大テーマだ。


このテーマについて考えるために役に立ったのが、『Learn Better』という本である。

学習方法の本……というとちょっと怪しく聞こえるかもしれない。

世の中には「子どもを全員東大に入れた私がやっていたこと」みたいな、ノウハウなんだか自慢話なんだか分からないような本が跋扈しているが、この本はそういうのとは一線を画する。

アメリカの有名シンクタンクに勤務して学習方法についての情報を発信している著者が、研究機関の研究成果を元に書いた本だ。サンプル1の体験談本ではない。

とても良い本だった。提示される事実が興味深いのはもちろんのこと、語り口が非常にエキサイティングで、ワクワクしながら読むことができる。

そして、これを読みながら、僕は気づいた。『Learn Better』で説明されている「良い学習」と真逆なことをやっているのが、ホメオスタシスおじさんなのである。


いわば、彼らはLearn Worstをやっているのだ。


これから、ホメオスタシスおじさんの実例を見ながら、彼らの恒常性の原因である最悪の学習法について述べていく。ホメオスタシスおじさんになりたくない人たちや、ホメオスタシスおじさんの生態を知りたい人にとっては有益な情報になるだろう。

以下、実名が出るので有料になる。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。7月は4本更新なので、バラバラに買うよりも2.4倍オトク。


今回扱いたいのは、この人である……。


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