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教養系YouTuberを主人公にした小説を書くので、その準備をしてみる。

ビジネス書100冊本の担当編集者と飲みに行った。

久しぶりに会った彼は、昔より少し疲れているように見えた。「お疲れですか」と聞いたら、「めちゃくちゃ気合いを入れて作った本が超スベったのでヘコんでます」と返ってきた。相変わらず正直な男だ、と思った。

彼が選んだのは落ち着いた和食の店で、畳の部屋に通された。温泉旅館みたいな席の佇まいにテンションが上がる。出てくる料理はどれも気が利いていた。味が良いのはもちろん、器がキレイで独創的だったのが印象的だ。僕に焼き物の知識があれば、もっと楽しめただろうに。

お互いの近況についてアレコレ話してグラスを傾ける。酒が回ってきた頃、突然聞かれた。「小説書きたいって言ってませんでした? 書いてますか?」。

僕は答える。「いや、まったく書いてないですね。文筆やってるよりもYouTubeやってる方が儲かるので」。

「書きたいテーマはあるでしょ?」

「ありますけど、めんどくさいですね。優先順位が上がらないので、書かないですよ」

「何を書きたいんですか?」

「今の僕がバリューを出せるのは、やはりYouTuberから見た景色を書くことですかね。教養系YouTuberの一人称視点で、実体験をもとにしたフィクションを書きたいですね」

「それ、良いじゃないですか。やりましょうよ」

「いや、めんどくさいから気乗りしないです」

「まあまあ、一度オンラインで打ち合わせだけでもしましょう。私も頑張ってアイデア出すので壁打ちしてください。それでも面倒なら書かなくて大丈夫なので」


昭和生まれの文芸編集者の彼は、とても強引である。露骨にめんどくさそうにする僕を半ば無理やり駆り出す胆力がある。美味い和食を奢ってもらった手前断りづらいので「まあミーティングだけなら」と引き受けてしまった。僕は交渉に強い方だと自負しているのだが、彼を相手にするとなぜかペースに乗せられてしまう。編集者の職能を持っている。そんな彼が嫌いじゃない。


ミーティングに手ぶらで行っても仕方ない

そんなワケで、今週は小説執筆に向けた打ち合わせが組まれてしまった。

古今東西を通して、「参加者が準備をしないミーティング」ほど無意味なものはない。「僕は何もアイデアがないけど、どうしましょう?」「さあ? 私も何もアイデアはないですよ?」と言い合う地獄のミーティングが嫌いだ。

しょうがないので、軽く準備をしていくことにする。

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