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オンラインサロンおじさんと、物理学上の「本当の無」-僕が見た虚無のブロガー界隈②


人の知的能力が低ければ低いほど、存在そのものは、その人にとってさして不可解でも、謎めいたものでもなくなる

(ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』)


以前にも書いたのだけれど、僕は2016年から1年くらい、ブロガー界隈に出入りしていた。

この界隈は当時、特に盛り上がっていた。「新卒で就職しません!プロブロガーになります!」みたいな若者が注目を浴びていたからだ。イケダハヤトさんあたりが作り出した「オルタナティブな生き方を称賛する潮流」がピークになっていた頃だ。「石を投げれば新卒フリーランスに当たる」みたいな時代だった。

言うまでもなく、新卒フリーランスになった人間は単なる新卒無職にすぎず、すぐに生活できなくなり、ほとんどはおとなしく就職していった。「自分の時間を持てない会社員なんてダメだよ。余白のある暮らしをしなくちゃ」などと言っていた人たちは、ムダに履歴書の余白を作っただけだった。


この時期に知り合った人たちの虚無性は凄まじく、並べてみると実に荘厳である。虚無のエレクトリカルパレードといった趣がある。そういう人たちを描く記事シリーズを「虚無のブロガー界隈シリーズ」と銘打とうと思う。今日はその第2弾だ。

前回の記事では、エレクトリカルパレードの主役、いわばミッキーを扱った。彼は虚無のブロガー界隈を象徴するビッグネームで、当時界隈に出入りした人ならば必ず知っていたはずだ。

今回は、エレクトリカルパレードの脇役を扱おうと思う。謎の鼻息ドラゴンである。

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(画像引用元:https://route-disney.adjuva.net/?p=2120

こいつ、なぜエレクトリカルパレードに参列しているのか分からないぐらい、知名度が低い。

ディズニーランド内におけるミッキーの認知率は100%だと思うが、この鼻息ドラゴンは5%くらいだと思う。『ピートと秘密の友達』という映画に登場するドラゴンらしいが、多分ほとんどの人はその映画を見てないだろう。僕も見てない。エレクトリカルパレードの度に「あのドラゴンは何者なんだ?」と首をかしげることになる。


そう、今回扱う人はこの鼻息ドラゴン同様、ブロガー界隈での認知率5%ぐらいの人物だ。当時界隈に出入りしていた人でもほとんど知らないだろうし、インターネットにおける認知度はゼロに近い。

だけど、僕は彼のことを間近で見続けた。顔を合わせた回数は恐らく20回くらいにのぼるだろう。「友人」と呼んでも差し支えないスコアだ。


彼と出会った頃の僕は、「やったー!すごい人と知り合いになれたぞ!」と喜んで、たくさんのコラボをした。

だけど、何度も顔を合わせて彼のことを理解していくうちに、徐々に「この人、虚無なのでは?」と思うようになった。

彼は華やかな電飾を着飾って華やかなパレードに出席していたから、愚鈍だった僕は「この人はミッキーと同列」と勘違いしてしまった。

だけど、彼はあくまで鼻息ドラゴンにすぎなかった。鼻息を荒くしてパレードに参列するだけの存在であり、中身は何も伴っていなかった。中に人が入っているミッキーと違って、彼は空虚な骨組みに電飾をつけたものにすぎない。中に何も入っていないのだ。


世の中には一定数、そういう人が存在する。「エレクトリカルパレードに出ている」というアピールをするために、中身を磨くのではなく、ただパレードに突撃する人たちが。

Twitterを開けばいくらでも「年商1億円の連続起業家」みたいな人が出てくる。

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(引用元:https://twitter.com/hiraifudosan


彼らの共通点は、「20歳で年商1億円」と、やたらと自分の稼ぎを強調するのに、実際に作ったものは教えてくれないことだ。

ホントにお店をやって上手くいってるなら、「ここに店舗があるので皆さん来てくださいね」とか、「こんな事業を作って売却したよ。WEBサイトはこれ」とか教えてくれそうなものだが、そういうのは何ひとつない。実績は全部ウソであり、空虚な骨組みに電飾をつけて無理やり光らせている。

彼らは皆、鼻息を荒くしながら電飾を光らせてパレードに参列することに注力する、鼻息ドラゴンだ。


人畜無害な鼻息ドラゴン

「年商1億円の連続起業家です!」とSNSでイキってる人は、基本的に詐欺師である。自分のオンラインサロンだのセミナーだのに入れさせようとしてくるので、有害な人間だ。

今日扱いたい人は、そういう類ではない。彼は人畜無害だ。僕が知る限り、高額のセミナーやらコンサルやらを売っていたことはない。悪どい儲け方など、一切していなかっただろう。

そう。彼は非常に珍しい「人畜無害な鼻息ドラゴン」なのである。


鼻息ドラゴンは普通、「自分をすごそうに見せることで儲けたい!」というモチベーションで鼻息を荒くするのだけれど、彼はそうではなかった。

彼は単に「エレクトリカルパレードに参列したい!自分をすごそうに見せたい!」というモチベーションだけで行動しているようだった。

これは好ましいような気もするし、すごく怖いような気もする。

詐欺師は社会的には悪だけれど、その行動原理はよく分かる。お金がほしいから自分を大きく見せるのは、合理的な行動だ。

人畜無害な鼻息ドラゴンは、目的がよく分からないので、この上なく不可解な存在だ。不可解ゆえに面白い、僕の「秘密の友達」である。


悪印象はないけれど

彼は人畜無害であり、(鼻息は荒いけれど)善人の部類に入ると思う。だから、全く悪い感情は持っていない。

むしろ、個人的にお世話にもなったし、おおっぴらに攻撃したい気持ちは全くない。どちらかというとお中元とかを贈りたい気持ちがある。

しかし、それはそれとして、彼は無のブロガーバブルの興味深い事例であることも間違いないので、今日はバチバチに記事ネタにしようと思う。

毎度のことだが、こんなに恩を仇で返す暮らしをしていて大丈夫だろうかと不安になる。死んだら地獄行きかもしれない。まあ、今もインターネットの魑魅魍魎を眺めながら楽しく暮らしているワケで、地獄に落ちても僕の生活は何も変わらないかもしれないし、とりあえず死後について考えるのはやめよう。


ということで、本記事ではまず、彼の盛りに盛りまくったプロフィール欄や諸々のイケてる感じの行動を見つつ、僕がなぜ彼のことをすごい人だと誤認してしまったのかの理由を探る。

更に、誤認が解消されていく過程を見ながら、今回の結論を導く。それは、彼こそが物理学者アレックス・ヴィレンキンが提唱した「本当の無」の条件を満たす人物であるというものだ。

これだけ聞いても意味が分からないと思うが、続けて読んでもらえれば謎が解けるはずだ。


以下、実名がバチバチに出るので有料になる。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。9月は4本更新なのでバラバラに買うよりも2.4倍お得。いつ入っても今月書かれた記事は全部読めるよ。


それでは実際に見ていこう。今回扱いたいのは、この人である……。


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