サイドの選手がやるべき仕事!!
今回は、「サイドの選手がやるべき仕事」というテーマでお話させていただきます。
ポジショナルプレーにおけるサイドの選手の役割というのを整理するべきだと思い、今回はこのテーマにさせていただきました。というのも、スペイン産ポゼッションフットボールというのは、中央突破にこだわります。リズムよくパスをつなぎながら攻めていくスタイルです。
中央突破が上手くいけばいくほど、サイドの選手にボールが渡らない状況が生まれます。サイドの選手は「ボールに触れない」ことが多々あります。
バルセロナがドリームチームと呼ばれた「黄金期バルセロナ」で有名な話があります。当時監督だったクライフが、ボールが全然回ってこなかったサイドの選手に対して「今日はとても良かった」と言ったのです。中央でパスを回し続けると、当然ディフェンダーが中央に集まります。中央でパスを回し続ければ続けるほど、ディフェンダーが中央に密集するのです。ですが、この日は、そうならなかったのです。それは、サイドの選手が適切なポジショニングをとることによって、中央にプレスに行きたいと考えているディフェンダーを引っ張っていたのです。つまり、サイドの選手が「良い立ち位置」に立つことによって、ディフェンス側は「これ以上中央に行くと、サイドにパスが出たときに、決定的なゴールチャンスを創られてしまう」と感じる状況を作り出していたのです。
サイドの選手は、常に中央にスペースを作るために、サイドライン際に立ち、尚且つ相手ディフェンダーを引きつけなければなりません。サイドライン際に立つだけでは意味がなく、相手ディフェンダーが警戒する距離感が大切です。
相手ディフェンダーが警戒する状況を創るには、「フリーにすると良くない」と思わせなければなりません。例えば、フリーでボールを持った時に、「ドリブルで相手ディフェンスラインを突破する」「決定的なクロスを上げる」「シュートを決める」など、相手が警戒しなければならない状況を作るのです。サイドの選手は、そういった「個人能力」を持った選手になっておく必要があります。数少ないボールタッチで「凄み」を見せないといけないのです。
スペイン産ポゼッションフットボールに少し話を戻します。中央突破を狙っているスペイン産ポゼッションフットボールにおいて、サイドの選手がビルドアップ時に、ボールを触る回数は少ない方が良いです。ビルドアップ時は、中央の選手たちが厳しいプレスを受けた時のみ、「逃げどころ」として準備をします。「ボールを逃がすときに、サイドを使う」のです。
サイドの選手は、中央から逃げてきたパスを、良きタイミングでもう一度、中央に戻さなければなりません。この時に、絶対やってはいけないことがあります。それは「ボールを失う」ということです。ドリブルするとしても、絶対にボールを奪われてはいけません。スペインで言われていたのは、ドリブルで勝負するときは「70%縦突破を狙え」ということです。相手の守備が成功してボールカットされても、サイドライン外にボールが出て自分たちのボールになる状況を作るのです。そのために、縦突破を狙います。
中央から逃げてきたボールに対しては、多くの場合、相手ディフェンダーからのプレスを受けます。このときに、プレスしてくる相手ディフェンダーを加速させない方向にパスを出すことが大切です。プレスしてきた相手選手に、次のパスの出しどころを読まれてしまってはいけません。次にボールを受ける選手がさらに厳しいプレスを受けてしまうからです。「味方がボールを奪われる」状況を作られないように、パスを送らないといけないのです。
スペイン産ポゼッションフットボールをするチームにおいて、中央でプレーする選手は、厳しいプレスを受けながらも中央でがんばっています。中央にディフェンダーが集まってくるので、中央はとても厳しいです。逆に、サイドは比較的フリーな状況でボールを受けられます。だからこそ、中央の選手に「時間」と「スペース」を作った状態で、ボールを渡すことが大切なのです。
ありがちなミスが、中央のプレスから逃げるためにサイドに出たボールを、サイドの選手がバックパスをしてしまうことです。これによって、相手のプレッシングが加速してしまいます。ディフェンスラインの選手がプレスを受けて「ボールを奪われる」ことが高い頻度で起こります。サイドの選手は、この判断ミスをしてはいけません。
中央から逃げてきたボールを受けるときには、相手ディフェンスがボールサイドに集まってきているでしょう。中央にパスを送るには「1つ飛ばしのパス」を送ることを覚えておいてください。例えば、2人ボランチがいるのであれば、近くにいるボランチではなく、遠い方のボランチにパスするのです。2人センターバックがいるのであれば、近くにいるセンターバックではなく、遠い方のセンターバックまで、1つ飛ばしてパスを送ります。このパスを出せるサイドの選手がいれば、スペイン産ポゼッションフットボールはやりやすくなるのです。チームとしては、こんな選手がいたら絶対に手放したくないと思います。
最後に、攻撃におけるもうひとつ重要な仕事について話します。サイドの選手は、ビルドアップの段階(つまりサッカーコートを3つに分けたときの、2つ目まで)は今話したことを丁寧にやります。立ち位置をサイドライン際にして、相手のディフェンスを引っ張りながら中央にスペースを空けます。ボールが来たら、良きタイミングで「1つ飛ばしのパス」を使い、ボールを中央に戻します。これがビルドアップ時の役割です。
最後のエリア、「アタッキングエリア」に入った時は違う動きが求められます。ペナルティエリアに近づくと、相手のディフェンスライン(守備ブロック)が横一列になって壁を作ります。中央は極限までスペースが狭くなるのです。ここで、中央にスペースを作るのは、サイドの選手です。とても重要な仕事、それは「サイドでボールを受けたら、ゴールラインまでボールを運び、そこからもう一度ボールを下げること」です。「深さ」を作るのです。縦にスペースを広げます。
ペナルティエリア付近では、ディフェンス側は、ディフェンスラインを適度な位置で固定します。なぜなら、オフサイドのルールがあるので、簡単に裏を狙えなくなるからです。裏のスペースは数メートルしかなく、縦方向のスルーパスは、ゴールライン外に出てしまう可能性が高くなります。ゴールキーパーも前に出やすいです。この状況では、裏のスペースは怖くありません。そうなってくると、デイフェンスもボールを奪いに行きやすくなるのです。
この時に、サイドの選手がボールを受け、ゴールライン際までボールを運べると、オフサイドはなくなります。ペナルティーエリアにさっきよりも広いスペースが生まれます。そのスペースに、横方向からのグラウンダーパスが入れば、ほぼゴール確定です。これを狙ってください。
サイドの選手が、サイドから横方向に走ってオフサイドにならないように裏に抜けるのも有効です。横一列に並んでいるディフェンダーにとって、どのスペースに出てくるかわかる縦パスは、さほどこわくないです。足元から足元へのパス回しも怖くありません。ですが、サイドの選手が横に走って裏に抜けると、一列になったディフェンダーたちは「どの人」と「どの人」の間にボールが出てくるかわからなくなります。横に走られると、加速しているサイドの選手の方が、止まってディフェンスラインを作っているデイフェンダーよりも速いスタートが切れます。パスが出たときには「ひとり勝ち」状態です。高い確率でシュートまで行けます。
スペイン産ポゼッションフットボールの中で、唯一、サイドの選手がサイドから中央に入ってくる瞬間が、この最後のアタッキングエリアです。基本的に、このアタッキングエリアは、攻撃選手の「個人能力」と「アイディア」を解放しても良いエリアです。ここには「プレー原則」はなく、自由度が高いです。
今回は「サイドの選手がやるべき仕事」というテーマでお話させていただきました。
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