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世界各国のDEI最前線――トランプ政権がもたらした大転換と企業の行方
エグゼクティブサマリー
トランプ政権の反DEI方針は、米企業や大学で推進されていた多様性施策を一時後退させましたが、一部企業は方針転換に踏み切り、他方で継続を選ぶ企業もあり、その是非が大きく揺れ動いています。
アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国では、それぞれの文化・社会背景に応じて独自のDEIアプローチが展開されてきました。特にジェンダー平等や人種問題など、注目される焦点は国ごとに異なります。
DEIは企業の成功要因か、人権尊重の潮流か――実務的メリットと倫理・人権的責務の両面を含む議論が続いています。多くの企業は利益と社会的期待の両方からDEIを戦略的に検討せざるを得ない状況です。
はじめに
近年、企業経営の場面で多用されるキーワードのひとつが、「DEI(多様性・公平性・包括性)」です。DEIは英語のDiversity, Equity, Inclusionの頭文字を取ったものであり、異なる人種・性別・国籍・年齢・宗教・障がいの有無・性的指向など、多様な属性を持つ人々を公平に扱い、組織や社会に包摂する取り組みを指します。
特にアメリカでは公民権運動を経て、人種差別撤廃を土台とした企業の「平等な雇用機会(EEO)」の確立が進み、そこからさらに「アファーマティブ・アクション」や「ダイバーシティ・マネジメント」へと発展しました。2010年代以降はテック業界を中心にDEIが経営戦略に組み込まれる動きが加速し、世界中の企業へ波及しています。
しかし、アメリカにおけるDEIの潮流は常に政治状況と無縁ではいられません。2020年のジョージ・フロイド事件をきっかけに人種的不平等に対する抗議運動(ブラック・ライヴズ・マター)が広がり、企業や団体はこぞってDEI推進を声高に掲げました。ところが、その翌年にはトランプ政権が誕生(2025年の再登板も含め)、政府主導のDEI施策が大統領令によって停止されるなど、「反DEI」的な姿勢が表面化し、一部の企業でも方針転換やバックラッシュ(反動)が起こっています。
本ブログでは、アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国におけるDEIの発展と現状を概観するとともに、トランプ政権によるDEI後退の背景と企業への影響を分析します。さらに、DEIのメリット・デメリットや、「企業成功に本当に必要なのか、それとも人権尊重の潮流に過ぎないのか」という議論についても考察します。最後までお読みいただくことで、現代のグローバルビジネスを語るうえで避けて通れないDEIの重要性と、その複雑な議論背景を理解できるでしょう。
内容詳細
1. アメリカにおけるDEIの発展と企業の取り組み
(1)公民権運動からダイバーシティ・マネジメントへ
アメリカにおけるDEI推進の原点は、1960年代の公民権運動に遡ります。1964年の公民権法成立により、人種や宗教、性別などを理由とした差別が法的に禁止され、企業の雇用においても「平等な雇用機会(EEO)」を確保する仕組みが整いました。続く1970年代にはアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)が大学入試や公的機関の採用などで導入され、マイノリティや女性の登用を促進しました。
1980年代〜1990年代にかけては、急速なグローバル化や人口動態の変化を背景に、多国籍企業を中心に「ダイバーシティ・マネジメント」の考え方が広まりました。IBMやコカ・コーラなどは早期にダイバーシティ担当部署を設立し、女性・少数派リーダーの育成や異文化研修に力を入れています。
(2)テック業界での急速な進展
2000年代後半以降、特にシリコンバレーのテック産業でDEIへの関心が高まります。Googleは2014年に初めて従業員の性別・人種構成比率を公開し、これを契機にマイクロソフトやアップルなど他のIT企業も「ダイバーシティ報告書」を毎年発行するようになりました。社内で無意識バイアス研修やERG(Employee Resource Group)の整備を進め、LGBTQ+や障がい者など多様な社員が働きやすい環境づくりを重視する流れが加速しています。
(3)2020年のジョージ・フロイド事件とBLM運動
2020年、黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官による暴行で死亡した事件を発端に、ブラック・ライヴズ・マター(BLM)運動が全米に拡大しました。これを受け多くの企業が人種差別の撤廃とDEI推進に向けた声明を発表し、実際にコカ・コーラは取引先への黒人弁護士登用促進を要求したり、マイクロソフトやGoogleが黒人コミュニティ支援の基金を設立するなど、大規模な施策に乗り出しました。また、多数の企業が最高多様性責任者(Chief Diversity Officer)のポストを設け、経営陣へのDEI組み込みを加速させています。
こうした流れの中で、アメリカ企業は人種・ジェンダーにとどまらず、障がい者・LGBTQ+など多様な属性を持つ人々への配慮をますます重視するようになりました。
2. ヨーロッパにおけるDEIの発展と企業の取り組み
(1)EU全体での法整備とクオータ制
ヨーロッパでは、EU(欧州連合)が域内の差別禁止やジェンダー平等の法整備を進め、各国政府が主導して企業のDEIを後押ししてきました。その代表例が「クオータ制(割当制度)」です。ノルウェーが2008年に上場企業の取締役会に女性比率40%以上を義務付けたのを皮切りに、フランスやドイツ、イタリアなども同様の法律を制定。EUとしても2022年に「取締役の一定比率を男女いずれか少ない方で占めるべし」という指令を採択し、多国籍企業の間で女性登用が急速に進みました。
(2)国ごとの事情とデータ収集の課題
ヨーロッパにおけるDEIの特徴は、国によって議論の焦点や手法が大きく異なることです。例えばフランスでは人種・民族に関する個人データの収集が厳格に制限されており、アメリカのように社内人種構成を定量的に可視化する手法は困難です。このため、「ダイバーシティ・チャーター」に署名するなど、企業が自主的に多様性を尊重する姿勢を示すソフト・アプローチが採られています。
また、中東やアフリカからの移民・難民流入が増えたことで、多民族・多文化な従業員が共存する職場が増え、語学研修や異文化理解のための施策が欠かせなくなっています。
(3)主な企業事例
BPやシェル(エネルギー大手):多国籍な社員の文化理解を深める研修プログラムを実施
HSBC銀行:国籍や人種を問わず能力主義で昇進できる制度を整備
SAPやシーメンス(テック系):ニューロダイバーシティ採用(発達特性を持つ人材の積極登用)で多角的視点を活かす取り組み
ヨーロッパでは、こうした取り組みが企業の社会的責任(CSR)として評価され、ブランド価値向上の一助ともなっています。
3. 日本におけるDEIの発展と企業の取り組み
(1)ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の始動
日本では、人口構成が比較的同質的だったこともあり、欧米ほど早期にDEI(D&I)議論は本格化しませんでした。しかし少子高齢化やグローバル化が進む中、政府・経済界が中心となって「ダイバーシティ経営」を推進する機運が高まっています。特に2013年以降、政府目標として「2020年までに指導的地位に占める女性割合30%」を掲げた202030が注目されました。
(2)女性活躍推進と障がい者雇用
女性活躍では、2015年に施行された女性活躍推進法によって企業は女性登用の数値目標や行動計画を公表することが求められ、育児制度の整備や男性育休の促進などが行われています。例えば資生堂や日産自動車が先駆的に女性役員や女性管理職の割合を増やす取り組みを実施してきました。
一方、障がい者雇用に関しては、1970年代から障害者雇用促進法による雇用率制度があり、近年は2.3%以上の雇用を義務付けています。大企業が特例子会社を設立して障がい者が働きやすい環境を整えるなど、DEIの一部として定着しつつあります。
(3)外国人材とLGBTQへの対応
日本企業も高度外国人材の採用や海外拠点の拡大を通じ、多文化組織を形成し始めています。社内公用語を英語化した楽天の事例などが有名ですが、まだ英語対応が十分でない企業も多く、文化的ギャップへの対応が課題です。
また、2015年の渋谷区パートナーシップ制度を機に、LGBTQへの関心が高まり、一部企業が同性パートナーを配偶者同等に扱う福利厚生を導入し始めています。
近年はパナソニックや花王など、大手メーカーが社員だけでなく顧客にも配慮した「ユニバーサルデザイン」や「インクルーシブな組織風土づくり」を企業理念として掲げる動きが広がっています。
4. 中国におけるDEIの発展と企業の取り組み
(1)欧米とは異なる文化的背景
中国では近年、経済発展とともに職場の多様性への意識が高まってきましたが、欧米のように「DEI」の名称が広く使われているわけではありません。むしろ儒教的な「和而不同(違いの中の調和)」という考え方に基づき、表立って「多様性」を称揚するよりも、衝突を回避しつつ差異を許容する集団主義的アプローチが見られます。
(2)多様性課題:ジェンダー・世代・地域格差
中国では、漢民族が人口の圧倒的多数を占め、外国人やマイノリティ民族の比率は相対的に小さいため、人種的多様性よりもジェンダー差や世代間ギャップ、地域格差が大きなテーマとなります。
ジェンダー: 女性の労働参加率は高いものの、管理職・役員クラスでは男性優位の構造が根強く残り、長時間労働や伝統的な家事負担などが女性のキャリアの壁になっています。
世代: 一人っ子政策世代など若いデジタルネイティブとベテラン層との価値観の違いが顕著化し、社内研修やメンタリングで相互理解を深めようとする企業が出てきました。
地域格差: 戸籍(フーコウ)制度により農村出身者と都市出身者のサービス格差が残り、地方から都市への移民労働者(農民工)との摩擦が生じるケースがあります。
(3)中国企業や外資系企業の事例
アリババ、テンセント:女性社員の比率が比較的高く、女性幹部が活躍する企業文化をアピール
華為技術(Huawei):海外展開で外国人社員・現地スタッフを多数採用し、多文化チームをマネジメント
LGBTQ支援:外資系企業など一部ではプライド月間に社内イベントを実施する例もあるが、政治的にセンシティブなため控えめな姿勢が多い
中国では欧米型DEIをそのまま輸入するのではなく、中国独自の課題(地域・世代・ジェンダー)に焦点を当てた取り組みが効果的とされます。
5. トランプ政権によるDEI方針の急転換とその背景
(1)反DEI政策の具体的な動き
アメリカでは、オバマ政権時代に進められた連邦政府内の多様性推進策が、トランプ大統領の就任(2017年〜2020年、さらに2025年〜再登板)を機に大きく後退しました。2020年9月には「分断的思想の排除」大統領令が出され、連邦機関や契約企業での研修が制限されました。さらに2025年1月には連邦政府のDEIプログラム終了命令が出され、政府全体で進められていた多様性や公平性に関する施策が一斉に打ち切られる事態になりました。
トランプ大統領は「DEIは政府機能を低下させる」「連邦航空局がDEIにかまけていたから航空事故が起きた」など強い表現で批判し、「DEI=無能化」という極端なメッセージを発信しました。
(2)企業の反応:DEI後退か、それとも継続か
トランプ政権の反DEI方針を受けて、一部の大手企業は迅速に方針転換を発表しました。ウォルマート、フォード、ハーレーダビッドソン、さらに日系企業の北米部門(トヨタ、日産など)も、DEI目標の引き下げや専門部署の縮小を打ち出しています。例えばマクドナルドは多様性数値目標の廃止やサプライヤーへの要求撤回を発表し、社外調査も一時停止するなどの動きを見せました。
背景として、2023年の米最高裁による大学入試アファーマティブ・アクション違憲判決の影響や、保守系団体からの「逆差別」訴訟リスクが高まったことが挙げられます。
しかし、全ての企業が一斉にDEIから撤退したわけではありません。むしろ「政権交代や社会の反発を見据え、表向きの表現は変えても実質的な多様性施策は継続する」企業が多く、ニューヨーク証券取引所上場企業の1%程度しかDEI方針を正式に取り下げていないとの調査もあります。表面上は「グローバル・インクルージョン」など名称を変えて行う企業もあるようです。
(3)反DEIムーブメントと企業の本音
トランプ政権の動きに対し、保守層からは「DEIこそ逆差別だ」「Woke企業は政治的に偏っている」という批判が高まりました。他方、BLM以降の高まりで「DEIは社会正義に不可欠」と主張する勢力も根強く、企業はその板挟みになっています。
一方で企業の「本音」としては、「多額のコストを払ってコンサルや研修を行うわりに、成果が測定しにくい」「行き過ぎたDEIは逆差別と見られてリスクになる」と考える経営者も少なくありません。トランプ政権の姿勢によって「やりたくない企業」はDEIを削減しやすくなった、という指摘もあります。
しかし、株主や消費者、従業員の期待もあるため、極端にDEIを排除すれば企業の評判を損ねるリスクがあり、今後も綱引きが続くと見られています。
6. DEIが企業(特にテック業界)にもたらすメリット
(1)イノベーションと創造性の向上
多様な視点が集まる職場では、問題解決や新製品開発において独創的なアイデアが生まれやすいとされます。実際、多様性の高さとイノベーションの相関を指摘する研究は数多く存在し、特にテック企業では競争力の源泉として重要視されています。
「異なる背景を持つ人々が互いの視野を拡張し合う」ことは、単なる理念ではなく実際の事業成果にもつながりやすいのです。
(2)人材獲得とエンゲージメント向上
優秀な人材は、自分の個性が受け入れられ、公平に評価される環境を求めます。DEIを推進する企業は雇用ブランドが向上し、女性やマイノリティ、海外人材などから選ばれやすくなります。また、インクルーシブな職場で働く従業員は組織への帰属意識が高まり、離職率が下がり、生産性が上がるという調査結果もあります。
(3)市場理解と顧客満足
多様な従業員がいれば、顧客の多様なニーズや文化的背景をより深く理解できます。特にグローバル市場を相手にするテック企業にとっては、ユーザーインターフェースや製品設計での配慮が売上や評判を左右します。社内の多様性がそのまま顧客視点の幅広さに反映されるわけです。
(4)業績・競争力への好影響
マッキンゼーの研究によれば、経営陣の多様性が高い企業ほど財務パフォーマンスが優れている傾向があると報告されています。もちろん因果関係を断定するのは難しいものの、「多様性は競争優位につながる」という認識は投資家にも広がっています。
ESG投資の観点からも、多様性を重視する企業は評価が高まり、資金調達面で有利になる場合があります。
(5)リスク管理とレピュテーション向上
DEI推進は法的リスクの低減や企業の評判向上にも寄与します。差別やハラスメントの防止策を整備すれば、従業員の訴訟リスクが下がり、SNS時代にはネガティブ情報の拡散を抑えられます。また、社会正義に配慮する企業姿勢は顧客やコミュニティからの信頼を高め、長期的なブランドイメージを確立するうえでも重要です。
7. DEIのデメリット・課題
(1)実効性の疑問とコスト負担
多様性コンサルに支払う費用や社員研修の費用は膨大である一方、成果が数値化しにくいのが実情です。経営陣からすれば、投資対効果が明確でない取り組みに予算を割き続けることに不満が出る場合があります。不況時にはまっ先にカット対象となりやすいのも事実です。
(2)組織内の摩擦とバックラッシュ
多様な属性が集まれば、コミュニケーションギャップや価値観の衝突が起こりやすくなるというデメリットもあります。たとえば、文化的前提が異なる者同士でミスコミュニケーションが増えたり、意思決定がスローダウンすることも。さらに、「マイノリティ優遇」に反発する多数派からの逆差別訴えや、保守的な社員の不満が噴出するリスクも否めません。
(3)不公平感や士気低下の懸念
クオータ制などで特定の属性を優遇すると、「実力より属性が重視されているのでは」という見方が生じ、組織全体に不公平感が漂う可能性があります。これがかえって当事者のモチベーションを下げたり、「自分は女性(あるいはマイノリティ)だから昇進できたと思われるのでは」といった心理的プレッシャーを生むケースもあります。
(4)政治・社会的圧力との板挟み
米国では保守派による「企業は政治に口を出すな」「Woke企業を許すな」という反発が強まっており、訴訟やボイコットのリスクもあります。企業がDEIを積極的に推進するほど、政治的・社会的対立の渦中に巻き込まれる可能性が高まり、対応が難しくなるのです。
(5)長期的・継続的な文化改革の難しさ
DEIは一朝一夕には定着しません。数値目標をクリアしても、社員同士の相互理解や組織文化の変革が進まなければ本質的効果は薄いでしょう。トップが変わると力点が変わり、途中で腰折れするリスクもあります。こうした「DEI疲れ」をどう防ぎ、長期的なコミットメントを維持するかが課題となります。
8. DEIは企業成功に本当に必要か、それとも人権尊重の潮流なのか?
DEIについては、「ビジネス上の必須戦略」か、あるいは「企業が負う倫理的・人権的責務」なのか、という問いがしばしば投げかけられます。しかし、今日の潮流を見ると、この二つは切り離せない形で企業を取り巻いているのが実情です。
(1)ビジネス上の必須要件としてのDEI
多様な人材によるイノベーション創出
グローバル市場での顧客多様性への対応
投資家や消費者のESG重視の流れ
これらの要素を考えれば、DEIは企業の競争力を左右する戦略上の重要課題です。特にテック業界では、多様性がない組織は長期的にイノベーション力を失いかねず、「DEIなくしては生き残れない」という認識も高まっています。
(2)人権や社会的責務の視点
一方で、DEIは過去の差別を是正し、平等で公正な社会を築くための倫理的・道義的責任でもあります。企業が自らを「社会の公器」と位置づけるならば、従業員やステークホルダーの基本的人権を尊重し、多様性を受け入れる姿勢は不可欠です。近年の若い世代や消費者は「人権と向き合わない企業」を敬遠する傾向が強まり、社会的許容(Social License to Operate)を得るためにもDEIが重視されるようになっています。
(3)利益と倫理の両立
現実には、企業がDEIに力を入れる背景には「ビジネスメリット」と「社会的・倫理的要請」の両方が混在しています。短期的には研修コストや組織摩擦の増大などデメリットもありますが、長期的には「多様性が生み出す革新力」と「社会からの信頼獲得」という形でリターンを得られる可能性が高いと考えられています。
おわりに
本ブログでは、アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国それぞれの社会背景や企業の取り組みを振り返りながら、DEI(多様性・公平性・包括性)の意義と課題を探ってきました。さらに、トランプ政権の反DEI政策がなぜ生じ、その後企業がどのような反応を示したかという点についても分析しました。
アメリカ: 公民権運動を礎とし、BLM運動によってさらに加速。トランプ政権で一部後退も、依然として多くの企業が推進を続けている。
ヨーロッパ: クオータ制やEU指令を軸にジェンダー平等が進展。移民増加もあり、民族・文化的多様性への対応が課題に。
日本: 女性活躍推進法や障がい者雇用率制度を軸に、近年ようやく本格化。外国人材やLGBTQ対応はまだ伸びしろが大きい。
中国: 欧米型DEIとは異なる集団主義的アプローチ。ジェンダー・世代・地域格差が主要な多様性課題である。
そして企業にとってのDEIは、単なる「良いこと」ではなく、組織の活力とイノベーションに直結し得る経営課題でもあります。反面、コストや組織摩擦、政治圧力などのリスクも伴うため、その推進方法には慎重な戦略と長期的視点が必要です。
現代のグローバル経営において、DEIはもはや「一過性のブーム」ではありません。社会的責任としての側面と、企業の競争優位を支える要素という両面を兼ね備えており、ゆえに今後も注目度が高まる一方でしょう。トランプ政権のように政治が強く介入しようとも、時代の要請である多様性尊重の流れを完全に押し戻すことは難しいと考えられます。企業がどのようにDEIを位置づけ、持続可能な形で実践していくかが、これからの社会とビジネスの在り方を左右していくに違いありません。
参考文献・リンク一覧
アングル:トランプ政権の反DEI政策、米国の官民に広がる影響と動揺 | ロイターhttps://jp.reuters.com/markets/japan/ZCFMAO25TNPGDDJDI7TQC5MZPY-2025-02-06/
DEIの旗を降ろしたのはトランプ氏に屈した一部企業だけ - オルタナhttps://www.alterna.co.jp/143772/
Pursuing DEI in Europe’s Workplaces Takes Different Route Than U.S.https://diversityglobal.com/web/Article.aspx?id=Pursuing-DEI-in-Europe-s-Workplaces-Takes-Different-Route-Than-U-S-4852
Evolving Diversity Dynamics in China | CEIBShttps://www.ceibs.edu/new-papers-columns/evolving-diversity-dynamics-china
ダイバーシティの取り組みとは? 推進するメリット・企業の事例10選https://service.alue.co.jp/blog/what-is-diversity
トランプ政権の多様性政策終了、実は企業も安堵?“アリバイ”づくり不要、「キャンセルリスク」減るのは好都合か(JBpress)https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/86384
Companies say diversity matters. So why aren't they becoming more ... (World Economic Forum)https://www.weforum.org/stories/2022/03/diversity-inclusion-equity-business/