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暑い夏の夜の怪談話

テレビを見ていないので正しいか自信はないが、嘗てのように日本の怪談物を映画やテレビ映画を夏に流すことはやっていないと思う。従って、以下のことは中高年以外の人にはピント来ないと思料。夏にやっていたのは暑い中で少しは肝を冷やす→冷感を感じるためだったと思う。

夏の怪談映画(含むテレビ映画)の代表は恐らく
  ①東海道四谷怪談
  ②怪談牡丹灯籠
  ③雨月物語
  ④真景累ヶ淵
などであったと思う。③は本で読んだ人が多いと思う。最近の若い人は知らないものがあると思う(特に④)。

小説・話集/語り物・その他では
  ○KWAIDAN(怪談) ○番町皿屋敷
  ○鍋島藩化け猫騒動   ○本所七不思議などの今でいう都市伝説
  ○百物語        ○耳袋      
といったところか。

妖怪や都市伝説は小学生時代のマンガ雑誌の特集に出ていた(それらの妖怪の一部は水木しげるの妖怪辞典のようなものにも掲載)。上で書いた例から幾つか拾ってみる。

1.東海道四谷怪談 
日本で一番有名な怪談。鶴屋南北の歌舞伎や三遊亭圓朝の落語で取り上げられたことの寄与が大きいのだろう。誰しもが「四谷なのに何故「東海道」が付くのか」と思ったことがあるのではないだろうか。20年位前に調べてみたところ、Guessレベルの諸説があるだけで決定打となるものはない、即ち、あの世の鶴谷南北に聞くしかないということだと認識した。

四谷左門町(四谷三丁目)に「四谷於岩稲荷田宮神社」があり映画を撮る際は祟りを恐れ?監督や俳優がお参りにいくことになっていたはず。この地に確かに田宮家の「お岩/於岩さん」が現存していたようだが、夫婦仲は睦まじかったそうで、怪談の元ネタになるに資する話が本当にあったのか、相当に怪しい。因みに鶴谷南北は何故か「雑司ヶ谷四谷町」と書いている。
<あらすじ>
ネタバレなるにといえばそうだが、あまりにも有名なので気にせず添付。
歌舞伎・鶴屋南北|文化デジタルライブラリー (jac.go.jp)

2.怪談牡丹灯籠
有名な明治の落語家で語り物の名手、(初代)三遊亭圓朝の作。いくつかのネタを元にして作成したとされる。メインのネタは中国明代の怪奇小説集『剪灯新話』に収録された小説『牡丹燈記』でこれを翻案したようだ。最後が似ているところがあるよう、上田秋成『雨月物語』-「吉備津の釜」も同じものがネタのようだ(個人的に「吉備津の釜」が好きだった)。

三遊亭圓朝の『怪談牡丹灯籠』はネット/青空文庫で(無料で)読むことができる。しかし、結構長く落語の台本として書かれているので読むのは骨が折れる。また、映画化されているのは前半の一部だけである。従って、中国の『牡丹燈記』のあらすじを見るのが簡単でよい。
講談『牡丹燈記』あらすじ (fc2.com)

3.番町皿屋敷
『東海道四谷怪談』を調べた時、・・半蔵門に一時勤務していたので四谷も番町も近くであった・・同様に「番町皿屋敷」も調べた。ルーツは姫路城『播州皿屋敷』、または、彦根城のそれだと思った。実は同じような話が、尼崎を始め確か全国に48ヶ所ほどあることを最近知った。長崎県の五島列島にすらある。

何処かがルーツで広がったと思われるものが、大元は定かではない。但し、「播州皿屋敷」を推す人が割と多いようだ。姫路城に「お菊井(井戸)」があり市内には「お菊神社」がある。
皿でなく盃、皿は割った/失くした、お菊が井戸に放り込まれた/斬られたなどの異動のあるバージョンがある。

4.本所七不思議
以下である。九つあるのは話により異動があるからである。後述する宮部
みゆきの小説は片葉の芦/送り提灯/置いてけ堀/落葉なしの椎/馬鹿囃子/足洗い屋敷/消えずの行灯、となっている。

 ○置行堀(おいてけぼり)
 〇送り提灯(おくりちょうちん)
 〇送り拍子木(送り拍子木)・・・宮部みゆきの小説の対象外
 〇燈無蕎麦(あかりなしそば)別名「消えずの行灯」
 〇足洗邸(あしあらいやしき)
 〇片葉の葦(かたはのあし)
 〇落葉なき椎(おちばなきしい)
 〇狸囃子(たぬきばやし)別名「馬鹿囃子(ばかばやし)」
 〇津軽の太鼓(津軽の太鼓)・・・宮部みゆきの小説の対象外

これも小学生時代の漫画雑誌の特集か別冊で確か載っていたと思う。但し、おいてけ堀と足洗屋敷以外は全く記憶に残らだった。改めて認識したのは、これらをモチーフにした宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙』を読んだ時で
ある。

日本人は「七不思議」が好きのようで、この七不思議も本所だけではなく色々なところにあるそうだ。例えば先ほど番町の「番長七不思議」。「本所七不思議」と似たものもいくつかある。「不思議」とあるよう必ずしも怪談めいたものとは限らない。七不思議かどうかは別として、和式トイレ(所謂ポットントイレ)の中から手が出てきて「紙をくれ」という話が子供の頃は怖かった。
【参考】
本所七不思議が何かは異動があるので九つと書いた。おいてけ堀(置行堀)が外れることはない。これにはカッパ節と狸説があるようだ。
一時的に錦糸町で勤務していた際、おいてけ堀に因むお菓子を売ってある店に行ったことがある。宮部みゆきは、この店の包装紙をヒントに『本所深川ふしぎ草子』を書いたとか。この店は狸説をとっている。
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5.百物語
耳袋(正しくは耳嚢)は江戸時代に30年ほどをかけて収集された・・特定の一人の作者はいない・・奇談・雑話集である。一方、百物語は特に決まったものはなく、「皆が集まって一人ずつ怖い話をして最後(百話目)の人が話終わった時に何か怪異が現れる」と怪談会、肝試しの会である。嘗て映画は二本立てが当たり前であり(例えば「キングコング対ゴジラ」と加山雄三の「若大将もの」)、子供の頃、二本立ての片方に『妖怪百物語』という映画が出て出ていた記憶がある。

という訳で、百物語で紹介する話はないけれど、阿刀田高の初期の「奇妙な味わい」の短編集『過去を運ぶ足』に入っている「氷のように冷たい女」が一番気にいっている。この短編は、確か夏の暑い日の夜に集まって百物語をするという設定だったと思う。尚、以前も書いたように阿刀田高に限らず、短編作家は初期の作品が面白い。芥川龍之介然り。

因みに、ラジオで嘗て怪奇談をやっているものがあった。目=文字(読書)や耳(ラジオ・講談)によると想像力が膨らみ恐怖心が増すという。映像にしてしまうと想像力の働く余地がなくなるからだろう。
「クリスマス・キャロル」などで有名はチャールズ・ディケンズもゴシック小説と呼ばれる怪奇物を書いている。怪奇小説の古典として有名なものとしてはW・W・ジェイコブズ『猿の手:The Monkey's Paw』がある。



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