日本に馴染みある(?)インドのトリビア補遺
日本に馴染みのある(?)インドのトリビア補遺
「インドのトリビア3」で日本に関係のあるものを書いたが、少し補足することとしたい。きっかけは「上野の森美術館」に行った際、乗換のため20年振り?位に御徒寄り寄り摩利支天を祭った寺=徳大寺があるのを初めて知ったことによる。
1.バラモン教、ヒンドゥー教の神々
釈迦が造った原始仏教はさておき、現在の日本の仏教では①如来→②菩薩→③明王→④天部の順に位が高いことになっており、バラモン・ヒンドゥーの神々は④(③も?)に位置づけられている(落としめられている)。④を全部調べるのは大変なので主に歴史などで出て来るものをあげる。
●帝釈天(フーテンの寅さんでお馴染み)
バラモン教時代で神々の最上位で聖典ヴェーダで最も多く賞賛されているインドラ神(天帝・雷神)。ヒンドゥー教では大きく格下げされ軍神扱い。インド・イラン・アーリア人の神であることから、ゾロアスター教の神でもある。
須佐之男命の八岐大蛇退治と同じよう蛇(ヴリトラ)退治をしている(日本神話がインド由来かは?)
●毘沙門天(上杉謙信でお馴染み)
バラモン教のヴァイシュラヴァナ神としてよりもンドゥー教のクベーラ神で名が通っている財宝神。日本では四天王の一人で多聞天と言う。上杉謙信が使っていることから武神・守護神のイメージがあるかもしれないが、本来の役割ではない。財宝神であるからこそ七福神の一柱に相応しいい。
●吉祥天(吉祥寺などで有名)
ヒンドゥー教においてシヴァ神と並ぶツートップで世界を維持する神であるヴィシュヌ神の妃、シェリー・ラクシュミー(単にラクシュミーということが多い)女神のこと。吉祥・福徳をもたらすということでは日本でも同様(美と愛と豊穣の女神)。元は七福神に入っていたが、弁財天に置き換えられてしまった。
●梵天(独眼竜・伊達正宗の幼名「梵天丸」でお馴染み?)
ヒンドゥー教の創造神である(だった)プラフマー神が起源。プラフマー神:世界の創造、ヴィシュヌ神:世界の維持、シヴァ神:世界の破壊・再生と
いうヒンドゥー教トリムルティ(三神一体)ではヴィシュヌ神とシヴァ神と並ぶ三大神という言い方もあるが、実際は他の二神より格下。
●摩利支天(NHK大河「風林火山」の山本勘助他)
陽炎、太陽光、月の光を神格化したバラモン教(ヴェーダ時代)の暁の女神、ウシャスと考えられている。日本では護身・蓄財神として武将に人気。楠木正成、毛利元就、山本勘助、前田利家。立花宗茂など。家康も然り。
●弁財天
バラモン教時代からの古い神で川の神とされるサラスヴァティーである。ヒンドゥー教になってからプラフマー神の妃とされた。音楽の神でもある。
●大黒天
ヒンドゥー教の最高神の一人、破壊・再生の神のシヴァ神の化身とされる。ヒンドゥー教ではシヴァ神は恐ろしいイメージがある一方、日本では優しいイメージがある。神仏習合では大国主命(大黒様)と同一視されることも。
2.その他
●阿修羅(興福寺の阿修羅像、向田邦子の小説で有名)
インド(=サンスクリット語)では神々はテーヴァといい鬼・悪魔はアスラというが、元々アスラ(単一ではなく複数形)は悪神ではなく、神に類するもので、平和で財宝に溢れた世界を作っているものが多い。時を経て神々と対立する・相争う悪神の類いとなった。日本では阿修羅として仏教の守護者の八部衆、二十八部衆に入っている。「修羅の道」という言葉があるように日本ではいいイメージはないのではないか。同じアーリア人であるイランのゾロアスター教の最高神・善神のアフラ・マズダのアフラとアスラは同じ。
ついでに言えば、自動車会社のMAZDAはアフラ・マズダからとったもの。
神々を表すデーヴァはデウス、ゼウスと同じ。同じインドヨーロッパ語族だからである。天部はデーヴァから来ているらしい。
●摩訶
摩訶不思議、摩訶般若波羅蜜多心経などで使う摩訶は「偉大な」「大きい」「優れた」という意味。世界最長の叙事詩と言われる「マハーバーラタ」のマハーが摩訶。マハーバーラタは「偉大なバラタ(族)」。モディ首相が
国名をインドからバーラトに変えるという話がある(実際G20ではそうしていた)。これはバーラタのこと。
●アバター(日本語ではないがよく使われる)
サンスクリット語のアヴァタール(降りて来る)が語源。ヴィシュヌ神は10種の化身をする。この化身=アヴァタールである。ヒンドゥー教では釈迦もヴィシュヌの10化身の一つとされている(悪人に悪い宗教=仏教を教える人物という設定)。
●ガルダ
神鳥でヴィシュヌ神の乗り物(神々は各々特定の乗り物(ヴァーハナという)を持っている)。これに由来しインドネシアの国営航空会社は「ガルーダ・インドネシア航空」と称しているが、「ガルダ」と延ばさないのがサンスクリット語。日本の仏教では二十八部衆の一人、迦楼羅となっている。
●閻魔
人類最初の死者「ヤマ」が閻魔の語源。ヤマが住む死者の国は天界にある楽園とされていた。何時の間にか地獄の裁判長(裁判長を含め裁判官10名)として恐ろしいイメージがある一方、地蔵菩薩と同一視もされる。
<参考>
ヒンドゥーの神々の順位
① ヴィシュヌ神とシヴァ神
ヴィシュヌはバラモン教ではone of themの神であったがヒンドゥーで大幅に格上げ。
シヴァはバラモンの神より前からあった土着宗教であったようだが、これらを吸収・一体化してバラモン教→ヒンドゥー教になる課程で加わったものと言われている(生殖の神としても人気)。
② プラフマー神(梵天)
③ インドラ神(帝釈天。バラモン教ではトップだった)
④ 他の神々(ドゥルガー、ガネーシャ、カーリーなど約6,000?)。日本で知られる火の神アグニ、法の神ダルマはバラモン教時代からの古神。
他に水の精・天女のアプサラス(複数)、半神半獣のガンダルヴァ(複数)などの半神達がいる。
神々と対抗するもの(必ずしも悪神・悪魔ではなく神格を持つ者もいる)として以下のようなものがいる(全て複数形)。
⑤ アスラ(阿修羅)
⑥ ヤクシャ(夜叉)
⑦ 羅刹
⑧ 蛇族
アーリア人(インド・イラン・アーリア人)の古代神においてはミトラ神とヴァルナ神が最高神でこれらはアスラ族とされている。つまり前出のようにアスラは本来悪神・悪魔・鬼ではなかった。
ヴァルナ神は西方ではゾロアスター教の最高神アフラ・マズダとなったが、東方のインドでは水神に格下げされた。水天宮の「水天」である。
ミトラはインドではミスラという。芥川龍之介『魔術』に出てくるベンガル出身の革命家「ミスラ君」を思い起こす。
上記の①~⑧以外に聖仙(リシ)と呼ばれる人々がインド神話に出てくる。徳が高い苦行を積んだバラモンの仙人。中国同様、長寿で不思議な力を持っている。神々同様精力旺盛である。また、神々以上の力を持っていたりする不思議な存在。
アーリア人とインド・ヨーロッパ語族
https://drive.google.com/file/d/11mRJ-ljEpGnkMtbQ8Tx8UTX23co6Gw1L/view?usp=sharing
ヒンドゥーの神々
https://photos.app.goo.gl/tYwbBrcd1yty96aDA
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