
宅浪しか選択肢のない人たちへ送る受験攻略法
※忙しい人はタイトルと太字部分だけ読めば大体OK!
この記事を書いているのは2025.2.27のお昼休み,国公立大学の前期試験が終わったタイミングに当たります.後期の結果発表がなされて以降,タイトルを「宅浪するしか“なくなった”人たちへの攻略本」に変更する予定なのであらかじめご了解いただきたい.
入試のシーズンも国公立前期入試という大きな山場を超えました.前期試験に挑まれた学生さんたちの多くは,期待と不安のバランスをそれぞれ抱きながら日々を過ごされていることと思います.
どうも久川です.このnoteでは何度も書いていることですが,筆者は2年間の宅浪の末に京都大学に合格しました.その経験から得たものをノウハウ的に切り出して提供したいというのが,本noteを運営しているモチベーションの一つになります.身をもって体験した立場から言うのですが,大学受験とは非常に重要な人生の分岐点であると同時に,高望みするほどに思った通りに進みづらい鬼門でもあります.
今回お届けするのは,残念ながら大学受験に失敗し,宅浪生活を送ることになってしまった(しまいそうな)人に向けたアドバイスです.筆者が「宅浪はできるだけ避けるべき」というスタンスを貫いているのをご存知の方もおられるかもしれませんが,経済,精神,その他様々な理由で予備校に通わず宅浪を選ぶしかない人がいるものまた事実です.そんな人に向けた指南記事,それも宅浪→京大の体験を持つ筆者が書いた記事があれば良いのではないかという発想で,今回は書いていきます.
なお,「前期試験が終わったばかりで合格発表前に不謹慎だ!」と思われた方はご安心ください.この記事を読んだからといって合否が変わらないのは当たり前体操です.
宅浪の開始前にやること
まず,あなたが残念ながら大学受験に失敗し,浪人生活を送る決意をしたという仮定から話を始めよう.いきなり宅浪のノウハウを語っても良いのだが,せっかくなのでその前にやるべき最初の確認事項を書いておこうと思う.
経済的な事情はどうか?
宅浪を選択する主だった理由の一つが経済的なものだろう.筆者の家庭が年収200万円台だったことは何度も述べているが,同じように経済的に豊かでないことが理由なら宅浪という選択肢がちらつくのは当然だ.この点について,しっかりと自分の状況を確認してほしい.本当は宅浪に対する不安がかなり大きく予備校に通いたいが,経済的な理由で不可能,という苦しい状況にいるのであれば,親戚やその他の助成金などでなんとか都合できないかを確認するのもありだろう.したくないのであれば,回避する方法を探すのは当然である.
現在の独学力はどうか?
宅浪をする上で最も大事な要素の一つに「独学力」というものがあると筆者は考えている.この造語を簡単に説明すると,「解けなかった問題を解答例を見ることで理解する力」である.この独学力がある/ないの判断に明確な基準はないのだが,例えば共通試験やセンター試験過去問の解答例に理解できないものが30%も含まれているとなれば,イエローからレッドゾーンと判断して良いだろう.もしあなたがこういった独学力の身に付いていない状態にある場合,そのまま宅浪を開始したとしても自分一人で勉強するという基本のローテーションが回らない可能性が高い.こういう場合,志望校を思いきり下げるという一応の対処法も存在するのだが,これはおそらくみなさんの望むところではないだろう.ということで,予備校や塾,通信教育を利用するという可能性を再考してほしい.一人でできないのだから,人の教えを乞うしかないのだ.
自己管理能力はどうか?
自己管理が得意かどうかも宅浪成功を大きく左右する事柄の一つである.朝起きる時間,勉強を開始する時間,休憩を取る時間,…宅浪では全てを自分で管理することになる.学生時代に寝坊が多かったり,受験勉強をすっぽかしてゲームをする癖があったりということがあれば,それらはおそらく危険サインだろう.それらに自信のある方は結構だが,もし不安を覚える場合,まずは頼ることのできる家族がいるかどうかを確認してほしい.食事の時間を一緒にしてほしい,朝起こしてほしい,…生活管理の上で得られる協力はないか,確認しておこう.口うるさく言われるのは気分の悪いことかもしれないが,宅浪に失敗して1年間を棒に振り,もう1年浪人するよりは何倍もマシなことだろう.
宅浪の攻略法
宅浪への入り口の砦(つまりは宅浪回避)とするため,上のような文章を書いた.引き返さずにここまで辿り着いたということは,これを読んでいる方は宅浪攻略の内容に興味を持たれているのだと思う.ここでは,自分の宅浪経験も総動員してその攻略法を書いていこうと思う.
最初にやるべきは勉強法の勉強!
これは何度も言っていることであるが,宅浪を開始するとなったら最初に勉強法の勉強をやってもらいたい.これから自分が狙う大学はどの程度のレベルで,今の自分の学力の程度はこのくらい,従ってどういう参考書を持ってきてどの教科をどれくらいの時間,どういう手順で勉強すれば良いのか?=つまりはどういうふうに勉強すれば良いのか,ということを最初に固めるのである.逆に,間違ってもやってはいけないのは闇雲な勉強である.このダメな例を次に挙げておこう:
高校の教科書をやり直す
高校の参考書をもう一度やる
辞書を丸暗記しようとする
本屋で難しそうという理由で参考書を選び取り組む
ついついやってしまいそうなものが書かれていないだろうか?例えば1番目について,高校の教科書には確かに基礎的な内容が載っているのだが,これら教科書はそもそも受験の攻略に向けて作られたものではない点に注意が必要だ.その証拠に,過去問などはほとんど載っていないであろう.ということで,基礎が疎かになっているという自覚がある場合にあくまで補助的な目的で,易しい参考書の傍において参照する程度の使い方が良いだろう.
さて,より具体的には,和田秀樹氏の本を読まれることをお勧めする.筆者は和田氏の受験勉強指南書に載っている勉強法を自分用にカスタマイズして京大受験突破に成功しており.その効果はかなり高いと感じている.筆者がメインで使用していた和田氏の本は新品でも当時990円で,これほどに条件の良い投資もなかなか無いであろう(予備校代に100万円など払っている人がいることを想像して欲しい).少し古いのだが,薄くてよくまとまっており内容も充実している以下を勧めておく:
Amazonでは高値で取引されているようだが,BookOFFなどにいけば100円とかで買えてしまう.とにかく,勉強法の勉強を宅浪生活の第一歩としてほしい.
次にやるべきは勉強場所の確保!
以前にも書いたが,筆者は宅浪といえど勉強場所を自宅以外にした方が良いと考えている.その理由は主に2つで,
誘惑から物理的に距離を取ることができる
人の視線によってサボりづらくする
である.自宅というのはリラックスできる場所であることの多い反面,寝床やテレビ,PC,飲み物などへのアクセスが非常に良く,ふと気を抜いた瞬間にそちらへと引き摺り込まれてしまう可能性が高い.よって,図書館内の自習室や公共スペースなど自宅からある程度離れた勉強場所を見つけ,そこを拠点に通い詰めて勉強した方が良いだろう.別に一箇所である必要はなく,夕方までは場所A,夕方以降は場所Bという具合で柔軟に調整して良い.また,できれば人目の多い場所,もしくは通う間に多くの人の目に触れる場所がよい.人間というのは人の視線を受けながらサボるというのは案外できないものである.逆に,部屋に一人で閉じこもって集中するというのは,最初こそ良いものの時間が経つと慣れて特別感がなくなり,気付かぬうちにサボってしまうことになるかもしれない.以上のような理由で,宅浪が決まったら自宅以外の場所での勉強を選択肢に入れてほしい.
無謀な勉強スケジュールは破綻の元
これまでに書いた内容に共感してもらえたならば,あなたは宅浪を開始するにあたって勉強スケジュールを立てることになると思う.ただ,ここにも注意が必要である.というのも,あまりに無謀な計画,例えば1日15時間勉強する,のようなものを立てないでほしいのだ.宅浪が決まった場合,その浪人生の一部は4月の時点でおそらくこれまでにないほどに燃えていることだろう.そのきっかけが和田氏の本か筆者の記事かはわからないが,とにかく「なんだかやれそうだ!」という感覚で体の底から力が沸いているはずだ.そして,その勢いのまま先のような無謀な計画を立ててしまうと大変だよ,と釘を指しているのである.1年間その無茶なプランを実行し続けられれば問題ないのだが,現実はそんなに甘くないということも認識しておいてほしい.というのも,この無謀なスケジューリングの元となる妙なやる気は言わばスタートダッシュ効果のようなもので,よっぽどコンスタントに実力の成長を実感でもしていない限り時間と共に(急速に)失われていくのである.人間の脳は賢いので,机にかじり付き淡々と勉強する日々の中で「あ,浪人ってこんなもんなんだな」と現実を認識することになるのである.その時,手元に残った15時間プランが機能するかといえば,実は結構怪しいと筆者は考えている.宅浪に限らず受験勉強で最も憂慮すべき事態は,勉強をやめてしまうということである.ひとたびやめてしまうと復帰に時間がかかるし,予定より学力が伸びなかった場合は志望校を下げるどころか2年目の浪人さえ覚悟しなければならなくなる.そういう意味で,スタートダッシュ効果に惑わされず,1年間実行可能なプランを立ててほしい.例えば筆者は,7〜8時間/日のペースを守って勉強していた.睡眠時間を7時間,食事や休憩時間を3時間,移動を往復2時間とすると,4時間程度余裕を設定したペース配分である.そんなことをしているから1浪で受からなかったんだ,というお叱りも飛んできそうであるが,それでは予備校に通いながら筆者にボロ負けした同級生たちが可哀想である.センターの点数などを見ている限り予備校組の彼らより実力はかなり上だったはずなので,破綻のないスケジュールをコツコツこなすことで実際に成果は出ているのである.とにかく大事なのは良いペースで1年間走り切ることであるから,無理に詰め込んだ予定は立てないようにして欲しい.
宅浪は上手くいかないのが普通ということを認識する
そんなこと言うな,と言われそうであるが,現実は書いておかねばならない.宅浪は避けるべきという主張の根拠にもなっているのだが,宅浪はうまくいかないのが普通のようである.筆者のようなちょっと頭のおかしいケースもあるが,たいていは宅浪生本人が限界を感じ,予備校に途中から通う,志望校を下げるのパターンに陥る.これらで来年の合格を掴み取れれば良いが,意地になって無理な宅浪を継続しもう一年浪人するという最悪のシナリオも当然起こりうる.出鼻を何度も挫くようで申し訳ないのだが,いま足を踏み入れようとしているのはそういうギャンブル性の強い世界だということを,もう一度きちんと認識しておこう.やる気だけではどうにもならないことは,やはり存在するのである.無理だということを心のどこかで認識し始めたときは,予備校や通信教育など別の道を模索する潔さも持っていて欲しい.認めるのは辛いことかもしれないが,目的は宅浪を成功させることではなく受験に勝つことである.
マイルド宅浪という選択肢
また変な造語を作ってしまったが,マイルド宅浪というものを新たな選択肢として提示したいと思う.定義としては,基本的に独学で勉強し,重点的に強化する必要のある部分(教科やその中の一部の単元,夏休みなどの短い期間)だけお金のかかるサービスを利用するというものである.夏期講習(というものがあるらしいが筆者は知らない)の利用,特定科目のみ通信教育の利用,…などが考えられる.完全な宅浪だと受験生本人にかかる負担がかなり大きいが,必要に応じてこのようなサービスを受験勉強に組み入れることで,大幅な負担軽減が期待できる.繰り返すが,やる気だけではどうにもならないこともある.そして,いちばんの目標は受験に勝つことである.宅浪を維持することは決して大切なことでは「ない」ので,目的と現状に合わせて柔軟な路線変更を常に行なって欲しい.
さいごに
また長々と書いてしまったが,いかがだっただろうか.自分が宅浪経験者だからこそ書くことのできる内容を綴ったつもりであるが,少しでも読者の方の役にたつ記事になっていることを願うばかりである.要点をまとめておくと,
そもそも宅浪を回避することは本当にできないか再考する
最初に勉強法の勉強を行う(和田秀樹氏の本がおすすめ)
自宅以外の勉強場所を確保して誘惑から物理的に遠ざかる
スタートダッシュ効果に釣られて無理な計画を立てない
必要に応じて通信教育や夏期講習を組み入れるマイルド宅浪も視野に入れる
色々と書いたが,要はこの5点である.宅浪の完遂というのはそもそも困難で,さらに志望校の設定や生来の生活態度によってその難易度は幾重にも跳ね上がってしまう.それでもその選択肢を取らざるを得ない場合,磐石の準備をし心してかかるべきであろう.これも繰り返しになるのだが,宅浪の維持にこだわるのはナンセンスである.本当にこだわるべきは大学に合格することであり,それを独学でやり遂げるという筆者が偉そうに擦り続けていること自体は,言ってしまえばただのオマケである.周りから褒めてもらえる,ちやほやされるという副次的な効果(まさにオマケ)はあるが,そんなオマケ欲しさに合格を遠ざけているようでは本末転倒というわけだ.大学合格に焦点を当て,そのためにやれる手を打つという思考に至って欲しい.
さて,前期試験の結果も発表されないうちにこんな記事を書いてしまって申し訳ないが,当時の記憶を思い起こしてしまい書かずにはいられなかった.筆者は現役時代に前期・後期共に不合格だったわけであるが,心のどこかで自分の力が伸びていないことを認識していながらも,合格者一覧に受験番号がないことにはかなり落ち込んだものである.皆さんの合格を願うのはもちろんであるが,全員が受かるというシステムではない以上不合格者は必ず出てしまう.そして,そういう人たちの中には宅浪の道へ進まざるを得ない人もいることだろう.そういった人たちのための道標としてこの記事を残しておこうと思う.
Kengo HISAKAWA