あおさの噂を調べてみました!?(第2回)
あおさの噂について、引き続き研究発表の状況を調べました。
あおさに含まれている「ラムナン硫酸(RS)」の生物学的活性について、追加の研究論文が発表されているのを見つけましたので、掲載いたします。
タイトル:
Biological Activities of Rhamnan Sulfate Extract from the Green Algae Monostroma nitidum (Hitoegusa)
掲載科学雑誌:Marine Drugs
URL: https://www.mdpi.com/1660-3397/18/4/228
英文で14ページにおよぶ論文です。分量が多いので順を追って内容を確認していきたいと思います。この論文自体は、総説という形態で、これまでのラムナン硫酸の研究をまとめたものになっています。
1. はじめに
ラムナン硫酸が含まれている海藻ヒトエグサ(Monostroma nitidum)の名前の由来は、葉の細胞が1列に並んでいることからつけられているとのことです。写真も掲載されており、図bの顕微鏡写真では、葉の断面に緑色の細胞が一列に並んでいます。図cが葉を上から見た顕微鏡写真です。
出典;Biological Activities of Rhamnan Sulfate Extract fromthe Green Algae Monostroma nitidum (Hitoegusa), Mar. Drugs 2020, 18, 228
2. ラムナン硫酸の生化学的特性
RSの構造の特性が説明されています。ラムノースという多糖に硫酸基がついたものが、多量に結合して、長い構造になっているとのことです。
3.ラムナン硫酸の生物学的活性
これまでにラムナン硫酸の研究がされている分野の一覧表が掲載されています。ラムナン硫酸には、抗ウイルス、抗血栓症、抗腫瘍などの生物学的活性があり、ヒアルロニダーゼ阻害を誘導し、抗高コレステロール血症効果を示し、血糖値の上昇を抑制し、体重管理に役立つとの報告があると、説明されています。
出典;Biological Activities of Rhamnan Sulfate Extract fromthe Green Algae Monostroma nitidum (Hitoegusa), Mar. Drugs 2020, 18, 228
【注釈】
Anti-hyaluronidase:抗ヒアルロニダーゼ、Antitumor:抗腫瘍、Anti-obesity:抗肥満、
Anti-thrombosis:抗血栓症、Antivirus:抗ウイルス、Anti-hypercholesterolemia:抗高コレステロール血症、Anti-hyperglycemia:抗高血糖
in vitro study: 試験管内での試験、in vivo study: 試験動物での試験、
※[ ]内の数字は、巻末に掲載の参照した論文の番号。
これらの研究の中でも、この論文の筆者が研究されている、抗ウイルス、抗肥満、抗高コレステロール血症、抗血糖、抗血栓、および抗炎症効果について詳しく説明されています。
以前噂になった抗ウイルス作用では、培養細胞を使った実験とマウスを使った実験が再度説明されています。(以前の「あおさの噂を調べてみました https://note.com/kengakuosamu/n/n6c3e5f697a83」もご参照ください。)
培養細胞を使った実験では、コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどエンベロープウイルスに、抗ウイルス効果があることが述べられています。
マウスにインフルエンザAウイルスを感染させた実験では、ラムナン硫酸の抗ウイルス作用と免疫刺激作用の両方が、in vivoでのウイルス増殖の抑制に寄与している可能性がある、と説明されています。
抗血栓症や、血管の内皮細胞の抗炎症の実験については、詳しく説明されています。ラムナン硫酸は、血管内皮細胞への新しい抗凝固および抗炎症物質であることが示唆される、と説明されています。
4.論文のまとめ
論文のまとめとして下記の図で、ラムナン硫酸の経口摂取がウイルス感染、血栓性疾患、高コレステロール血症、高血糖などを予防する可能性がある、と説明されています。
出典;Biological Activities of Rhamnan Sulfate Extract fromthe Green Algae Monostroma nitidum (Hitoegusa), Mar. Drugs 2020, 18, 228
【注釈】
Viral infection:ウイルス感染、Thrombotic disease:血栓性疾患、
Hypercholesterolemia:高コレステロール血症、Hyperglycemia:高血糖
また、経口摂取されたラムナン硫酸は腸の中で、免疫に関与するパイエル板へ局在するようで、「ラムナン硫酸は、パイエル板のM細胞を介して腸管腔から血液に輸送され、そこでさまざまな生物活性を発揮する可能性がある」と説明されています。
5.科学雑誌「Marine Drugs」も調べてみました
論文が掲載された科学雑誌「Marine Drugs」は、Wikipediaでは「査読済みのオープンアクセス医学雑誌で、海洋天然物からの治療薬の研究、開発、製造に関するレビューと定期的な研究論文を公開しています。」とのことで、Marine DrugsのHPでも同様に説明されています。
学術雑誌の影響度、引用された頻度を測るインパクトファクターは、「Marine Drugs」で4.446です。自然科学全般の科学雑誌Scientific Reportsが4.525なので、「Marine Drugs」もレベルの高い雑誌のようです。
今回の論文は、査読という科学雑誌の審査が通ってから掲載されているので、信頼性の高い内容と考えられます。
さらなるラムナン硫酸の研究が発表されるのが楽しみです。
今後も、発表された論文を見つけたら、掲載いたしたいと考えております。
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