レビュー「わたしの好きな曲10作品」 第五回 12号室
「12号室」
孤独というよりも疎外感、そんな言葉が浮かんでくるSIONですが、やはり、「12号室」のインパクトが強いからなのかもしれません。この曲はウッド・ベース、ドラム、ピアノという背景で歌われていますが、あるはずのギターがないのはあるはずの二本の足を連想させる効果的な構成でもありました。声に特徴があるSION ですが、掠れたザラついた歌声は例えるなら硬い質感のボディ・タオル、それに言葉という泡で洗い流し、まろやかにしてくれる摩擦がSION の歌です。SION の好きなアルバムはやはりこの曲が収められている「夜しか泳げない」です。フル・アルバムとしては五枚目のアルバム、1990年に発表されました。アルバム・タイトル曲はチャボがスライド・ギターで参加、それもまた、嬉しかったです。数々のミュージシャンとの共演、そんな中でも福山雅治と「たまには自分を褒めてやろう」が代表例、この曲はソロ・アコースティック・バージョンで「東京ノクターン」というアルバムに収められています。フル・アルバムとしては十八枚目のアルバム、2005年に発表されました。このアルバムが発表された際の日比谷野外音楽堂でのコンサートが印象的でした。雨は止み、暮れる前の空に大きな虹がかかりました。歌唱中のSION がジェスチャーで教えてくれましたが、このアルバムに収められている「夕焼け」を連想させるドラマチックな出来事でもありました。