ローリング・ストーンズの好きなアルバム10作品
ザ・ローリング・ストーンズ・NO.2
サタニック・マジェスティーズ
ベガーズ・バンケット
レット・イット・ブリード
スティッキー・フィンガーズ
山羊の頭のスープ
イッツ・オンリー・ロックン・ロール
エモーショナル・レスキュー
アンダーカヴァー
ダーティ・ワーク
■R・ストーンズの好きなアルバム10作品
順位はつけられないので発表された順に並べています。でも、一番好きなアルバムは「ベガーズ・バンケット」です。「レット・イット・ブリード」、「スティッキー・フィンガーズ」、加えて挙げた1980年代の三作品はよく聴きます。普通は黄金期の四作品は全てベストテンに入りそうですが「メイン・ストリートのならず者」が入らなかったのは後ろめたいです。その他、「女たち」、「刺青の男」等、比較的、一般的には好評の作品も入りませんでした。それらの代わりに失敗作に位置付けられている作品が入っていてこのあたりに自身を印象付ける結果になったと思います。これについては洋楽を聴くようになった十代の頃、背景の1980年代が要因と考えられます。同じ立場の同世代の方は「アンダーカヴァー」、「ダーティ・ワーク」の支持は高いと思いますがどうでしょうか?ローリング・ストーンズのアルバムで一番好きなアルバムを答えていただくのが好きです。意外な回答として「山羊の頭のスープ」、「ブラック・アンド・ブルー」と答えていただいた方が生涯をとおして各々二人ずついました。カバー曲がメインの初期のアルバムを入れたかったですがこれについては軽い後悔、それも含めて楽しく10作品を選ぶことができました。
「ザ・ローリング・ストーンズ・NO.2」
「ザ・ローリング・ストーンズ・NO.2」はローリング・ストーンズが1965年に発表したオリジナル・アルバム、タイトルが示すようにイギリスでのセカンド・アルバムです。「サタニック・マジェスティーズ」より前のアルバムはイギリス盤とアメリカ盤があって混乱、個人的には曲のだぶりを避ける為にイギリス盤を優先しました。1980年代、十代の時にレコードで購入しカセット・テープに録音して聴いていました。その後、レコード・プレイヤー、カセット・テープ・レコーダーを持っていなかった期間があったので全く聴かなかった時期もあります。聴きたくなったのでCDの購入を試みましたがそんな時にイギリス盤のアルバムは廃盤という期間が重なってしまい聴けずじまい、今ではイギリス盤も復活、実感を噛みしめて聴いています。本作はファースト・アルバムの経験が活かされて要領を得たような落ち着きが感じられます。加えてほとんどがカバー曲でローリング・ストーンズのルーツをダイレクトに知ることができるので探求心を満たします。個人的にはアルバムの一曲目、「エブリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」が好きです。この曲は他のアルバムでも聴くことも可能ですがショート・ヴァージョンなので本作の同曲をお薦めしたいです。オリジナルはソロモン・バーグでソウル、R &B、ゴスペルの分野で活躍したアーティスト、ローリング・ストーンズはオリジナルをロックにコーティング、後にレゲエ、ファンク、ディスコ、その先のヒップ・ホップでも同じ試みを重ねますが独自の音楽的な魅力を初めから分かりやすく示していました。
「サタニック・マジェスティーズ」
「サタニック・マジェスティーズ」はローリング・ストーンズが1967年に発表したオリジナル・アルバム、イギリス盤では「アフター・マス」、「ビトウィーン・ザ・バトンズ」に続いてのオリジナル曲にこだわったアルバムです。洋楽を聴くようになったのは十代の頃で時代は1980年代、特に好きだったのがデュラン・デュランでした。とは言え、足りなかったのがエレキ・ギターの音、それを求めてローリング・ストーンズを聴くようになったのは必然でした。「サタニック・マジェスティーズ」に関してはデュラン・デュランみたいにカラフルで尚且つギターも加わっていて絶妙なバランスが示されていました。一般的には評価の低い「サタニック・マジェスティーズ」でしたが近頃では必ずしもそうではないという意見も耳にするようにもなりました。最高傑作とは言い難いですが失敗作というレッテルは剥がれつつあるようです。おそらく雑誌等のライター、その若返りが要因、付随して多様性を受け入れるという風潮もあるのかもしれませんが、今後、本作がどのような評価へ変化していくかは興味深いことでもあります。因みにビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」は一昔前のガイド・ブック等の評価に比べると現在ではいくらか評価が落ちてきているような印象を受けます。
「ベガーズ・バンケット」
「ベガーズ・バンケット」はローリング・ストーンズが1968年に発表したアルバム、所謂、黄金期と呼ばれる作品の一枚目になるアルバムです。洋楽を聴くようになった1980年代、エレキ・ギターの音を求めてローリング・ストーンズを聴くようになりましたが本作に関してはアコースティック・サウンドが新鮮、エレキ・ギターでもなければキーボード主体でもない特異性に魅力を感じました。探せばいくらでもありそうなアコースティック・サウンドのアルバムですが本作は緊張感が備わっていることが他とは異なる特徴です。アコースティック・サウンドと緊張感、後のローリング・ストーンズの作品でもそうですが数々の名盤を見渡してもこの組み合わせは見当たりません。また、全体がアコースティック・サウンドなので端々で聴けるエレキ・ギターの演奏が一層、鮮烈に聴こえます。サンバを吸収した「悪魔を憐れむ歌」やブルースな「ストレイ・キャット・ブルース」のそれが代表例になりますがこれらは各々、A面、B面に配置されているのも良好です。合わせて「悪魔を憐れむ歌」はアルバムの一曲目、これも示すようにA面の最後、B面の一曲目、B面の最後、大事な位置に重要な曲が置かれているのも幸いです。それらと有効な関係がブルース、フォーク、カントリー、それらは絶妙な味付けになっていてアルバム・タイトルも納得、加えて封入されている晩餐のイラストとの結びつきも良好です。風通しの良いアコースティック・サウンドの本作ですが隙のない作品です。
「レット・イット・ブリード」
「レット・イット・ブリード」はローリング・ストーンズが1969年に発表したアルバムです。前作の「ベガーズ・バンケット」はアコースティック・サウンド、一方、本作はエレクトリック・サウンド、一見、対照的な両作ですが両作共にブルース・アルバムで兄弟みたいな関係です。両作共に緊張感もありますが異なることは曲の数、「レット・イット・ブリード」は九曲という特性が活かされているアルバムです。大きく分けると三つに分類、「ギミー・シェルター」、「ミッドナイト・ランブラー」、「無情の世界」はベスト・アルバムの定番曲、「リヴ・ウィズ・ミー」、タイトル曲の「レット・イット・ブリード」、「モンキー・マン」はロック・パターン、それら以外の他の三曲という具合に見事な均等な分類ができる構成になっています。他の三曲はブルース、フォーク、カントリーでジャンルが被っていないのも良好、これに付随して一曲ごとの特徴も分かりやすく示されているのも良好です。ゲスト・ミュージシャンの活躍やキース・リチャーズのヴォーカル曲、ビル・ワイマンに代わってキース・リチャーズのベース演奏等がそれになりますが適材適所を心掛け臨機応変に対処する姿勢も好感触、合わせて「カントリー・ホンク」は「ホンキー・トンク・ウィメン」のカントリー・ヴァージョン、1980年代にリミックスや別ヴァージョンが流行っていたことを知る立場からすると親しみのあるアイデアでもありました。
「スティッキー・フィンガーズ」
「スティッキー・フィンガーズ」はローリング・ストーンズが1971年に発表したアルバムです。一曲目は「ブラウン・シュガー」、この曲の手応えや自信がアルバムの最後まで浸透、結果、出来栄えに有頂天、嬉しさのあまりに逸脱した言動として悪ふざけなタイトル、遊び心のあるジャケットになったような感じがします。それらの要因は「ブラウン・シュガー」によるものなのかもしれませんが間接的には「ユー・ガット・ムーヴ」、この曲はユニークで脱力感があって良好なアクセントになっています。だからと言ってふざけ過ぎ、そのようなこともなくてどの曲も精度の高さが感じられます。格式の高さも感じられるので和らげる手段としてのタイトルやジャケットなのかもしれませんが、いずれにしてもいくつかの事柄が有機的に働きかけていて上手くまとまっている作品です。本作は初めにレコードで購入、後にCDを購入して聴いています。ジャケットはカッコ良いですがそれとは異なる理由で部屋に飾ってあります。ジッパーが他のレコードを傷つけるという理由、おそらくこのレコードを持っている人はレコード棚の一番端に置いているはずです。もしくはビニール・カバーにセロテープで補強、そのような姿をCDが並ぶ前のレコード店でよく見かける光景でもありました。レコード棚の一番端は本作の定位置で不動になりますが本作が傑作という評価は今後も変わらず動かないということを運命付けているような象徴的な表れのように思います。
「山羊の頭のスープ」
「山羊の頭のスープ」はローリング・ストーンズが1973年に発表されたアルバム、後に本格的にレゲエ、ファンク、ディスコを吸収、本作はそれ以前の作品で加えて黄金期を終え、ブルース、フォーク、カントリーを抑えた内容、次回作がロックンロール・アルバムなので本作はポップスに寄せたアルバムと個人的には位置付けています。失敗作に位置付けられているのも理解できますがパロディみたいなサービス精神が好感触、加えてアルバム・タイトルや「ウィンター」から誘導されてクリスマスのようなパーティ感覚を呼び寄せられます。一曲目は緊張感がありますが小手先の恐怖に止まっていて文化祭のお化け屋敷やハロウィンみたいに心が踊ります。「夢から覚めて」は「スウェイ」、「全ては音楽」は「ムーンライト・マイル」を連想、「シルヴァー・トレイン」は「ストリート・ファイティング・マン」、後者は蒸気機関車を連想させられますが同じB面の一曲目なのでパロディのようなジョークと思っています。ガイド・ブックによるとアルバム・ジャケットはマリアンヌ・フェイスフルに似ていると記されていました。「悲しみのアンジー」は彼女のことかもしれません。本作は端々でリスナーの望みに応えようとする意図が感じられますがミスマッチなもてなしをされているような感じ、クリスマスだからケーキを食べたいのに高級な和菓子を与えられたような感じです。無いよりはましで時には嬉しかったりもしますが良く言えばシュールな笑い話、チグハグさを面白がって聴いているような傾向があります。
「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」
「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」はローリング・ストーンズが1974年に発表したアルバム、アルバム・タイトルが示すようにロックに寄せたアルバムです。付随してエレキ・ギターの活躍が目立っているのでロックンロール・アルバムでありながらギター・アルバムも兼ねた内容になっています。ロン・ウッドがソングライティングに関与しているアルバム・タイトル曲の貢献や「タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン」のミック・テイラーの名演、「イフ・ユー・キャン・ロック・ミー」と「フィンガープリント・ファイル」のキース・リチャーズのギター・リフの興奮等、随所でギタリストの存在感が発揮されているのも特徴です。次のアルバムからレゲエ、ファンク、ディスコを本格的に吸収するローリング・ストーンズですがその一歩手前のアルバムに位置付けるとポイントになる作品なのかもしれません。付随して「ベガーズ・バンケット」をブルースへ回帰した作品と位置付けるなら本作はロックンロールへ回帰した作品に位置付けることも可能、初期のカバー曲がメインのアルバムとマインドは近いような気がしますが流石にパワー・アップしたサウンドになっています。特に「ダンス・リトル・シスター」は力強いリズムになっています。
「エモーショナル・レスキュー」
「エモーショナル・レスキュー」は1980年に発表されたローリング・ストーンズのアルバム、さかのぼると前々作の「ブラック・アンド・ブルー」からレゲエ、ファンク、ディスコを本格的に取り入れたローリング・ストーンズですが「エモーショナル・レスキュー」はそれから数えて三枚目になるアルバムです。先のジャンル以外にブルース、カントリーも加わってバラエティ豊かな構成、そして、従来のロック・パターンのナンバーとおよそ交互に並んでいて規則性が感じられます。本作はチャーリー・ワッツのドラムが素晴らしく、それこそ規則性が備わっているような心地良さがあります。付随してローリング・ストーンズの特徴としてチャーリー・ワッツのドラムとキース・リチャーズのギターのコンビネーションがストーンズ・サウンドを作っていると聞きますがそれも納得できそうなアルバムです。因みに個人的に好きなドラマーはジミ・ヘンドリックスとプレイしたミッチ・ミッチェル、ポリスのスチュワート・コーポランドです。本作のチャーリー・ワッツはそれらと並ぶ魅力的な演奏をしています。
「アンダーカヴァー」
「アンダーカヴァー」は1983年に発表されたローリング・ストーンズのアルバムです。本作にはフォークやカントリー、あるいはバラードは収録されていません。仮に収録されていたらワクワクしますが、でも、冷静な好判断、子供に激辛な食べ物を与えるような危険なことです。全くもって常識外れなサウンドの「アンダーカヴァー」、プロデューサーやエンジニアの長所がダイナミックに示されていてそれらの貢献度は極めて高いです。中でも「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」は複雑な加工が施されていて大変、興奮させられます。本作も自身が十代の時に発表されましたが思春期の心情を的確に表現、言葉にできないカオスな感情や快楽への興味、ストレス解消の欲求がこれもまたダイナミックに示されています。猥褻なアルバム・ジャケットもそうですが個人的には実にタイムリーな作品でした。本作はヒップ・ホップとラップに挑戦、「トゥ・マッチ・ブラッド」はそれに侵されることなく見事にロックとの融合を示されていて流石のローリング・ストーンズです。実はヒップ・ホップやラップは苦手、それらに限ったことではないですがローリング・ストーンズは子供でも食べられるように上手に調理をしています。
「ダーティ・ワーク」
「ダーティ・ワーク」は1986年に発表されたローリング・ストーンズのアルバムです。プロデューサーはスティーヴ・リリーホワイト、特徴は音の輪郭がハッキリとしていて心地良い音加減、本作のスティーヴ・リリーホワイトの貢献は大きいです。レゲエの「トゥ・ルード」はダブを採用、エコーを効かせていて輪郭のある音が活かされています。この曲はアルバム・タイトルの候補になっていたらしいですがそれも納得、元々のコンセプトはそのあたりにあったのかもしれませんが途中からテーマがミック・ジャガーとキース・リチャーズの不仲に移行したことを推測、キース・リチャーズのヴォーカル曲が二曲、カバー曲が二曲、このあたりにミック・ジャガーのやる気の無さが示されていますが結果的にレア感をもたらすことに繋がっています。本作はキース・リチャーズの主導になっていてレア感と長所も示されているので一般的な評価に反して好きなアルバムです。また、ミック・ジャガーのやる気が加わっていたら異なったアルバムになっていたのかもしれませんが必ずしも傑作になっていたとは思えません。皮肉にもマイナス要素が好転したようにも思えるアルバムです。加えて音の輪郭がハッキリとしていることと不仲がハッキリと示されていることも皮肉なシンクロ現象、露骨な不仲の表れは特徴のあるサウンドから無意識に誘導されたものと個人的には考えています。また、逆手に取ると言うように機転を効かせて不利な状況を活かしたことは不屈な精神力を知らしめる結果にもなりました。疲労を滲ませる「スリープ・トゥナイト」は説得力が備わっています。