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下がるなよ!下がるなよ!絶対に下がるなよ!

先日、剣道関係のTwitterを見ていると気になる投稿があった。
抜粋すると、こんな感じ。

「下がるな!!」
って自分の息子に言うお母さんを出稽古先で発見しました。
下がっても直ぐに攻め返して打ちにいけばいいと思うのよ。

Twitterより

私もずっとそう思っていた。
試合の戦略としては、間合いを切る必要があるかもしれない。
それだけではない。
自分が引くことによって、相手を引き出せる可能性もある。

下がって相手に打たせた瞬間の起こりを捉えれば良いのだ。
学生時代、顧問の先生に教わったことを思い出した。

しかし、今となってはその考え方には賛同できない。
それは何故か……

引くところは相手にとって「打突の好機」

引くことはミスだ

剣道の昇段審査では筆記試験がある。
全日本剣道連盟から「問題例と解答例」という冊子も販売されている。
最近はPDFファイルが無料で公開されているので確認していただきたい。

>>剣道学科審査の問題例と解答例(初段~五段)

その中に「二・三段の問題」として
【15.「打突の好機」について説明しなさい】
とある。

あなたは打突の好機を説明できるだろうか。
答えは6個。
PDFファイルの28ページから29ページにかけて書かれている。

  1. 相手の動作の起こり頭(出ばな)

  2. 技の尽きたところ(動作や技が終わったところ)

  3. 居ついたところ(心身の緊張がゆるんだ瞬間、気持ちで圧倒されたとき)

  4. 引きはな(退がるところ)

  5. 受け止めたところ(受け止めたところ以外に隙が生じる)

  6. 息を深く吸うところ(息を吸うときは、相手の動作が止まる)

上記が打突の好機である。
逆に、それ以外は打突の好機ではないということになる。
つまり、有効打突とは、上記のどこかに該当すると言っても過言ではない。

賢明な読者なら直ぐに気が付くのではないだろうか。
「4.引きはな」だ。
つまり、引く瞬間には隙ができる。

だから、「下がるな!」なのだ。
下がることで、自分からみすみす相手にチャンスを与えることになる。
敵に塩を送っている状態なのだ。
ただし、その塩に気付くか否かは敵のレベルに大きく左右されることになる。

つまり、確かなことは下がること自体が明らかなミスということだ。

「直ぐに攻め返せば良い」というレベルの話ではない。
下がること自体が問題なのだ。

YouTubeに良い例があったので紹介しておこう。
下記はリバ剣の匠のショート動画だ。

下がることが如何に危険かということがよく分かったのではないだろうか。
実際、小学生同士の試合や稽古を見ていると、こういう場面が多々見られる。
非常に顕著に表れるのだ。
アンパンマンの必勝パターンに近いものがあると考える。
分かりやすいので、ぜひそういう視点で見て貰いたい。

しかし、どうして下がることが危険なのだろうか。

退くことが「居つき」につながる

退いてから直ぐに打つことは難しい

打突の好機として書かれている「引きはな」に隙ができることは理解しやすいだろう。
なぜなら、「出ばな」とよく似ているからだ。
出ようとする瞬間は他の動きができない。

同様に、下がろうとする瞬間も他の動きができない。
分かりやすい勝利の方程式だ。

しかし、問題は「引きはな」だけではない。
実は、下がることで「居つき」につながりやすいのだ。

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