取材Vol.4/「日々ブラッシュアップして飛躍していきたい」取材ライター・横井かずえさん
ライターがライターに取材するをコンセプトにしたWEBメディア『見聞図書館』。同じライターでも、活動ジャンルが違うだけで全く知らない世界を経験しているもの。それを知れるのも、本企画ならではかもしれません。
今回は、医療・介護ライターとして活躍されている横井かずえさんを取材させていただきました。
横井さんに伺ったのは「夏にまつわるお話」。
北海道で従事したアルバイトでの苦い思い出から、春先から日本を襲った新型コロナウイルスの影響までお話をお聞きしました。
横井かずえさんのプロフィール
横井かずえさんは、医薬品専門の新聞社『株式会社 薬事日報社』で13年、新聞記者時代を過ごされた後に独立。現在は、フリーの医療・介護ライターとして活躍中です。出版業界からWEBメディアの執筆まで、幅広い媒体でお仕事されています。
医療業界に入ったきっかけは、たまたま入社したのが医療専門誌だったのが縁。新人1年目の時は、先輩から「(自社)新聞に書いている内容を理解できるように」と言われて、日々勉強だったのだとか。
オンラインで初めてお会いしてみると、キビキビとした雰囲気で、テンポよくいろんなお話を聞かせてくださいました。
横井かずえ公式ホームページ:https://iryowriter.com
Twitter:@yokoik2
さて、そんな横井さんは、北海道生まれ。
北国生まれの横井さんは、どんな夏を過ごされたのでしょうか。
北国の夏で過ごしたほろ苦い思い出
──横井さんは北海道生まれとのことですが、夏の思い出で印象に残っていることはありますか?
夏で思い出すのは、新聞記者に働く前に経験した酪農のお仕事ですね。当時は就職氷河期で、憧れていた大手新聞社にも落ちて、なかなか就活をやる意味を見い出せずにいました。炎天下でリクルートスーツを着ることについても、好きでもない仕事のためにというのも嫌だなって。
でもどこかで働かないととは思っていて、それなら「食に関わる仕事」なら悪くないだろうと、北海道の酪農農家で住み込みで働くことにしました。
実際にやってみると、地獄のようで……。朝4時に起きて牛のフンをとって、昼には干し草を作るという重労働。夏だけの2ヶ月契約でしたが、本当にしんどかったですね。
──なかでも一番つらかったことは何でしたか?
活字が読めなかったことですね。
当時はスマホもないし、ネット環境も整っていなかったので、活字を読むなら店まで買いにいかないといけない。コンビニに行くにしても、車で1時間ほどかかる田舎で買いにも行けず。残念ながら、住み込んでいた家にはスポーツ新聞しかなく、ともかく活字に飢えていました。
農家の契約が終わったら「活字を読みたい」一心で、東京の新聞会社(株式会社 薬事日報社)の採用面接へ。縁があって採用にいたり、そこから20年以上にわたってこの仕事をしています。
ですので、夏の思い出と言われると、「牛のフンの匂い」を思い出しますね。
──牛のフンの匂い……なかなか強烈な思い出ですね。ほかにも、夏といえばこれ!といったエピソードはありますか?
夏といえばやっぱり「夏枯れ」と「お盆進行」ですよね。
メディア関係の人が、毎年苦しめられる年3回のタイミングで、それがゴールデンウィーク、お盆、お正月なんです。そのころは印刷会社が閉まるので、締め切りが全て前倒しに。新人時代はそれをこなすのがとても大変でした。
さらに取材先の役所も休みに入るので、記者としては二重苦。6月後半ぐらいから「夏用のネタどうしようかな」と、いわゆる腐らないネタを準備し始めます。
今は、新聞記者時代のように毎日記事を出すわけではないので楽になりましたが、毎年気温が上がってくると「夏枯れの季節がきたなー」と思います。
コロナが襲ったライターの夏
──横井さんのお仕事の熱心さが伝わってきました。今年は新型コロナウイルスによっていろんなところで影響が出ていますが、横井さんは何か影響がありましたか?
ライター業でいえば紙業界のお仕事は、自粛期間は完全に止まっていしまいましたね。3~4つの媒体で連載を持っていたのですが、全て休刊です。反対にWEBメディア系のお仕事はどんどん増えていて、オンラインインタビューばかりになりました。
パソコン越しにインタビューするので写真の手配を心配したのですが、WEBメディアはオンライン中のキャプチャ写真で問題ないそうなので、助かっています。おかげで、こちらはどんどん忙しくなっています。
媒体が紙とWEBで全く対策や動きが違い、それによって命運が分れたのは、すごく興味深かったです。
──オンラインのものだけが動いた感じでしょうか?
そうですね。一歩、オンライン化しているかどうかだけで、完全にフリーズしている会社もあれば、コロナに関係なくフル活動している会社もある。紙媒体は、いまだにメドが立たないところが多いですね。
オンラインのほうは、忙しさが増して「今日はラインで、明日はズームで、明後日はGoogleで」とツールがコロコロ変わるのでついていくのに必死です。
オンラインインタビューの可能性と今後
──オンラインと対面取材では、どんな違いを感じますか?
不思議なことに、今とそれまでの感じ方が全然違うんですよね。地方在住でなかなかお会いできない方が相手の時や、出張ができない場合に例外的にオンラインでやっていたときは、やりにくさを感じていました。対面取材では、会話と会話の合間とか、帰る間際の雑談とか、そういうところでいいネタが取れていたりしたんです。
オンラインだと、間合いとかボタン一つで終了するので、深い話ができないかなと思っていました。ところが、今回、月10〜20本のオンラインインタビューをこなしてみて、対面と同じように相手を引き出せると感じています。
──オンライン取材は慣れや使い方だったんですね。
年に数回だと相手も緊張するし、私も慣れてなくて混乱していました。
でもオンラインが主流の環境になると、お互いに慣れてくる。そうするとオンラインだからと気を張らずに話ができるの。今は、オンラインであっても対面と同じようにインタビューができますね。
自粛が解除されて対面インタビューができる環境に戻りましたが、編集部や相手からオンラインをお願いされるケースが出てきていますね。
──今後、取材やインタビューはオンラインと対面、どれくらいの割合になるとお考えですか?
オンラインが3割、オフラインが7割といった割合で落ち着くのではないでしょうか(※)。オンラインが苦手な世代もいますので、ケースバイケースで選択肢が増えていくのではないかと考えています。
最近行った対面インタビューは撮影もなく、オンラインでもできそうな内容でした。そういう類のインタビューや取材は今後、オンラインへ移行していくような気もしますね。
──なるほど、ライターの仕事内容も大きく変化しそうですね。
最近はサイトメディア編集に関わることが多くなったので、新しく講座に通い始めました。ひと言にライターといっても、メディアはどんどん変わっていくので日々ブラッシュアップですね。最前線の講師陣に教えてもらえるので、結構ハードですが勉強になります。今後は、サイトメディアでもさらに飛躍させていきたいですね。
──忙しい日々を送られていますね。同じライターとして頭が下がります。本日は、夏のお話からお仕事のお話まで幅広くインタビューさせていただき、ありがとうございました。
【取材後記】夏枯れの季節は、そっと見守らせていただきます
夏の思い出は、牛のフンと夏枯れという、横井さん。
どの質問からもお仕事につながり、仕事の熱心さを感じるインタビューになりました。
インタビューのお仕事は2020年7月現在(※)オンライン8割、対面2割に落ち着いたそう。予想以上のオンライン化の流れに、とても驚かれたと言います。コロナ禍で流れが変わるタイミングで取材させていただいた、貴重なお時間でした。
また後から聞き直してみると、横井さんの聞き取りやすい声のトーンや、一回ごとにわかりやすい反応など、プロのインタビューアーの細かなスキルを感じ、こちらもお勉強になりました。
北国生まれの横井さんにとって、夏はほろ苦いテーマになりましたが、終始楽しくお話しできました。今後の横井さんのご活躍に期待です!
取材者プロフィール
林 小夏
「言葉で人を結んでいく」ライターとして活動中。2016年にローカルWEBサイトのボランティアとしてライターを始めたのがきっかけで、2019年よりクラウドソーシングで副業ライターを開始。現在は大阪ものかき隊に所属し、週末執筆の日々を送る。趣味はヨガやフィットネス、まち歩き。
Twitter:@littlesunmer100
(本文中の画像:Unsplash )
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