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「犯罪が増えた?」その感覚を分解して考える7つの要因

犯罪は本当に増えているのか?

ニュースや日常会話でよく耳にする「犯罪が増えている」という感想。その背景には、実際の犯罪件数だけでなく、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。ここでは、違法化率、犯罪発生率、犯罪認知率、検挙率、報道率、ニュース接触率、話題率を軸に解説し、どのようにこれらが個人の「犯罪が増えた」という感覚に影響を与えるかを紐解いていきます。


個人の感想はどう形成されるのか?

「犯罪が増えた」という感想は、以下の7つの率が掛け算的に影響を及ぼし形成されます。それぞれを解説します。


1. 違法化率:新たに犯罪とされる行為の増加

法律の改正や社会の価値観の変化により、以前は合法だった行為が新たに違法とされる割合です。たとえば、近年のネット犯罪やハラスメントの取り締まり強化は、この違法化率の上昇によるものです。違法化率が上がると、全体の犯罪件数が増えたように見えることがあります。


2. 犯罪発生率:実際に起きた犯罪の割合

犯罪発生率は、人口あたりの犯罪件数を示します。暴力犯罪や窃盗のような伝統的犯罪は減少傾向にある一方で、詐欺やサイバー犯罪のような新しい犯罪は増加傾向にあります。この「犯罪の形の変化」も、増えたと感じられる要因の一つです。


3. 犯罪認知率:犯罪が発覚する割合

犯罪認知率は、実際に発生した犯罪がどれだけ公的機関に認知されるかを示します。通報制度の充実や監視カメラの普及は認知率を上げる一方で、隠れた犯罪が可視化されることで、犯罪が増えたように感じられることがあります。


4. 検挙率:犯罪が解決される割合

認知された犯罪のうち、どれだけが解決に至るかを示すのが検挙率です。検挙率が低下すると、犯罪が解決されていない印象が強まり、「犯罪が増えている」と感じる要因になります。逆に、検挙率が高いと、ニュースで解決事例が多く報じられ、「犯罪への対応が進んでいる」という感覚を生むこともあります。


5. 報道率:メディアが犯罪をどれだけ取り上げるか

犯罪の報道率は、実際の犯罪発生数と無関係に「犯罪が増えている」という印象を強めます。特に、ショッキングな事件や珍しい犯罪が頻繁に報道されると、少数の事件が過剰に注目され、全体として犯罪が増えているように錯覚します。


6. ニュース接触率:個人がどれだけニュースに触れるか

ニュース接触率が高いと、犯罪に関する情報が多く目に入り、犯罪が増えたように感じやすくなります。SNSやニュースアプリのアルゴリズムが特定のニュースを繰り返し見せることで、この印象がさらに強まることもあります。


7. 話題率:人々の間でどれだけ話題になるか

事件が衝撃的であればあるほど、SNSや日常会話で話題に上りやすくなります。話題率が高いと、犯罪が実際よりも身近に起きているように感じやすくなり、「増加している」という感覚を後押しします。


要素の関連図

図中の+ーは他要素を増減させるもの

犯罪発生率、検挙率、報道率が与える大きな影響

1. 犯罪発生率 → 検挙率:減速フィードバックで安定化

犯罪発生率と検挙率の間には「減速フィードバック」が働きます。犯罪発生率が上昇すると、警察の取り締まりや社会的抑止力が強化され、検挙率が上昇することで犯罪が抑制されます。この仕組みは全体を安定化させる重要な要因となっています。

2. 検挙率 → 報道率:エコーチェンバーの温床

検挙率が高いと、事件の解決が報じられる頻度が増え、報道率が上昇します。この流れはエコーチェンバーを起こしやすく、解決された事件の報道が繰り返されることで、「犯罪が頻発している」という誤解を生む可能性があります。ここでは、メディアの報道品質が厳しく要求されます。


まとめ:個人の感想は複数の要因が掛け算的に作用する結果

「犯罪が増えた」という感覚は、実際の犯罪件数だけでなく、違法化率、認知率、報道率、話題率など、多くの要因が掛け算のように作用した結果です。その中でも、犯罪発生率、検挙率、報道率が特に重要な役割を果たしており、報道の質や情報の流通が個人の感覚に与える影響は計り知れません。

警察やメディアがこの複雑な構造を意識し、犯罪に関する情報の透明性と正確性を高めることが、冷静で正確な判断につながる鍵となります。

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