米国株マーケット考察 2021.2.5

マーケットサマリー

米国株式相場は上昇。ダウ平均は332.26ドル高の31055.86ドル、ナスダックは167.20ポイント高の13777.74で取引を終了しました。ナスダックは史上最高値を更新。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比611万株減の10億5274万株でした。

マクロ経済指標を見ますと、週間新規失業保険申請は77万9000件と、3週連続で改善し、市場予想(830,000件)も大きく下回りました。

前日のADP雇用統計も予想を上回る内容でしたので、今日発表の雇用統計で好調な数字が発表されますと、労働市場の改善により今年前半の景気下振れ懸念が払拭される可能性があります。

また、製造業関連データも、12月米製造業新規受注(前月比)+1.1%(予想 +0.7%)、12月耐久財受注改定値は前月比+0.5%と、予想外に速報値+0.2%から上方修正され、堅調な推移となっています。

ミクロ経済(企業業績)に関して、S&P500企業の約83%が予想を上回る利益を発表しており、IT・ハイテク企業に至っては97%が予想を上回っています。

調整は短命でシナリオ的には出来過ぎ感があるのは否めないですが、株式市場は再び強気モードを復活しつつあります。

バイデン大統領は3日夕、新型コロナウイルス感染拡大を受けた1兆9000億ドル規模の経済対策に盛り込んだ現金給付に関し、対象者を絞ることは検討するものの、1400ドルの金額に関しては妥協しない姿勢を強調しています。

追加経済対策が早期に成立するとの期待も高く、昨日の米国株式市場では景気敏感株を中心に買いの勢いが増しました。

ロビンフッダーが関与する最近の米国株式市場の乱高下について、イエレン米財務長官は何が起こっているのかを精査し、他の規制当局と会合を開き、何らかの行動が必要かどうかを協議すると発表しました。

これを受け、最近乱高下していたゲームストップ(-40.63%)、AMC(-21.46%)はかなりの売りが強まっていました。

為替市場でも米ドルインデックスが0.4%上昇し上放れつつあります。これは、ヨーロッパより米国のワクチン開発・供給が早く、経済回復期待がヨーロッパよりも高まっていることから、資金が米ドルに流入したことが理由と言えます。

用語解説


-新規失業保険申請件数ー失業者が失業保険給付を始めて申請した件数を集計し、季節調整を加え発表するもの。本指標は景気の動向に敏感に反応するといわれており、景気先行指数として用いられています。

米労働省雇用統計局が毎週集計し、集計期間の翌木曜日に発表。米雇用統計の基準日である12日を含む週の結果は、それ以外の期間よりも注目度が高いです。

-ADP民間部門雇用者数ー民間給与計算代行業者大手のAutomatic Data Processing(ADP)社が、自身の持つ全米約50万社、約2400万人のデータを元に発表する雇用調査レポートにおける、月ごとの雇用者数の増減。2006年5月に始まった比較的新しい経済指標。

市場の注目度が高い労働省による雇用統計のうち、非農業部門雇用者数(NFP)の民間部門との相関性が高いとされており、雇用統計の先行指標として注目されます。雇用統計の二日前の水曜日(祝日などがある場合は前日の木曜日)に発表されます。

-製造業新規受注ー米商務省センサス局が全米の製造業の受注額を調査した指標。出荷、在庫、新規受注、受注残高から構成されます。

大型案件などによるブレが大きいこともあり、非国防資本財(航空機除く)が注目される傾向がみられます。GDPの重要な構成要素である設備投資の先行指標として認識されています。

-耐久財受注ー米商務省経済分析局が発表する耐久財(3年以上の使用に耐えられる物、自動車・航空機・パソコン・家具・家電など)受注とは、企業(製造業)の耐久財の受注状況を表した経済指標です。

数値の上昇は、設備投資などが進んでいることから、景気向上と判断されドルが買われやすくなります。

-景気敏感株ー景気動向によって、業績が大きく変動する銘柄のこと。「景気循環株」と呼ぶ場合もあります。鉄鋼、化学、紙パルプなどの素材産業や工作機械などの設備投資関連などの銘柄が該当します。

好況時にはモノが売れるため、多くの素材や設備、工場が必要になりますが、不況時には在庫調整で需要が低迷し、生産が落ち込むことなど、景気の波によって受注が大きく左右され、業績に直結する銘柄群のことです。

-ロビンフッダーースマホで取引でき、手数料も無料の米ネット証券「ロビンフッド」を利用する個人投資家を指す言葉ですが、彼らを中心としたネットトレーダーが、コロナ対策として政府から配られた現金給付や失業給付を元手に投資を始め、米国の株価に大きな影響を与えるプレイヤーとなっています。

日本でも10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを元手に投資を始める「給付金トレーダー」が急増していますが、その米国版はかなりの存在感を示しているようです。


立沢賢一とは

元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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