【マーケット考察】2022.1.14
米国株式相場は3日ぶりに反落。優良株で構成するダウ工業株30種平均は朝方に223ドル高まで上昇しましたが、その後246ドル安まで下落し、前日終値比176.70ドル安の3万6113.62ドルで終了。ハイテク株中心のナスダック総合指数は381.58ポイント安の1万4806.81で引けました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比910万株減の8億9712万株。
昨日発表の主な経済指標は(1) 卸売物価指数(PPI)と (2) 新規失業保険申請件数でした。
(1) 2021年12月の卸売物価指数(PPI)は前年同月比9.7%上昇( 予想:9.8% )と、高水準を維持。全体指数は前月比0.2%上昇と予想( +0.4% )を下回り、11月の+1.0%から上昇幅を下げ、インフレ上昇の一服感を示しました。
一方で、季節要因があるガソリンと食品価格を除いたコア卸売物価指数(PPI)は前年比+8.3%と予想( +8.0% )を下回ったものの、11月+7.9%からは上昇しました。
比較的早い段階での物価を反映する自動車のエンジンやタイヤなどの中間財が2020年4月来ぶりに前月比0.3%低下しており、昨年の急激なインフレは沈静化に向かう可能性もあると解釈することもできます。市場は高インフレの継続は既に織り込んでおり、PPIの数字は想定の範囲内と受け止められ、急速な米利上げへの警戒感は逆に和らぎました。
(2) 新規失業保険申請件数は前週比2万3000件増の23万件と、2週連続で増加。市場予想(20万件)を上回りましたが、低水準にとどまりました。失業保険継続受給者数は155.9万人と予想の173.3万人を下回り、前回の175.3万人から大幅に減少し、労働市場に関しては特にサプライズはありませんでした。
債券市場では高インフレ継続織り込み済みを受け、最近債券利回りは急上昇していましたが、昨日想定範囲内のPPIに安心感(??)から10年物米国債利回りは1.70%まで低下しました。
そのような中、昨日もFRB関連の要人は金融引締めへのタカ派的なコメントを発していました。
(1) ハト派で知られる米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事が、米上院銀行委員会の副議長指名公聴会で「今年の第1四半期、第2四半期もインフレ率は高いままと予想。高水準のインフレについて非常に懸念。約40年ぶりの高水準にあるインフレ率を制御することがFRBの最重要の責務。それ故に、FRBはインフレを目標に戻す為に、インフレを引き下げるためにFRBのツールを使用する。今年、数回の利上げを予測している。また、今年バランスシートの縮小を見込む。」と利上げに積極的な姿勢を示しました。
(2) ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事は「雇用の増加とインフレでテーパリングの加速を支持する」。
(3) ブラード米セントルイス連銀総裁は「現時点では今年4回の利上げを予想。高インフレの中で3月の利上げの可能性はかなり高い」。
(4) メスター米クリーブランド連銀総裁は「可能な限り早期のバランスシート縮小を望む」
(5) リッチモンド米バーキン連銀総裁は 「米利上げの時期とペースはインフレ動向次第であり、インフレが高止まりすれば米連邦準備理事会(FRB)はより積極的に動く必要がある 」
(6) パウエルFRB議長は「インフレは今年半ばまで続くだろう。もしインフレが長引き、それが定着するリスクを意味するならば政策で対応」
昨日のPPIの数字でインフレに関する市場のコンセンサスが得られたと言えます。
そこで、市場の次なる関心は、昨日のマーケット考察でも申し上げましたが、米企業の2021年10~12月期決算発表に移行しています。S&P500種指数構成企業の10~12月期の利益予想は前年同期比22.4%増と低めで、それ以前の3四半期を下回るものの、堅調な水準となる見込みです。
予想が低いと、実際の決算数字が良かった場合には、株式市場にはプラス要因となると同時に、FRBが金融引締めをし易くなる点からマイナス要因にも成り得るという複雑な状況に遭遇することとなります。その時の相場のセンチメント次第で上下どちらにも動くと説明しておくのが無難かと思います。
本日、JPモルガン・チェース、シティグループ、ウェルズ・ファーゴの決算発表が予定されています。FRBの早期利上げは銀行の業務純益にプラス効果を及ぼしますので、個人投資家は決算発表に先立って銀行株の買いポジションを引き上げているようです。
米国大手証券のエコノミスト達は、今年末までの10年物米国債利回りの上昇は2%までに限定されると予想しています。将来生み出すであろう期待キャッシュフローを割り引いて想定株価が形成されている成長株に関して、利回り上昇が2%と限られることは、割引率上昇リスクが限定されると言えます。( この辺に関しては私の『投資学ゼミ』にて勉強できます。)
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