キラルスイッチ医薬品に関する研修問題 その1
ラセミ体の医薬品から有効な鏡像異性体だけを取り出して、新しい製剤を作ることってありますよね。例をあげると、抗アレルギー剤のdl-クロルフェニラミン(ラセミ体)から、有効な鏡像異性体であるd-クロルフェニラミンだけを製剤化するようなパターンです。ラセミ体のほうはフスコデ配合錠の成分の一つですし、有効な異性体だけのものはポララミン錠の成分です。このように有効な異性体だけにした医薬品を「キラルスイッチ医薬品」と呼ぶそうです。
そこで問題です。
いくつ見つけられましたか?解答と簡単な解説を下に記します。
1 アレグラ錠とディレグラ錠
アレグラ錠の有効成分はフェキソフェナジンでラセミ体だが、そのフェキソフェナジンにプソイドエフェドリンを配合した製剤がディレグラ錠です。ディレグラ錠は「ディレグラ配合錠」が正しい名称です。この選択肢は間違いです。
2 アモバン錠とルネスタ錠
アモバン錠の有効成分はゾピクロンでラセミ体で、その有効成分だけを製剤化したのがルネスタ錠(エスゾピクロン)です。残念ながら、くちの中が苦くなってしまう副作用はアモバン錠でもルネスタ錠でもみられるそうです。この選択肢を選ぶと正解です。
3 フルナーゼ点鼻液とアラミスト点鼻液
有効成分はステロイドであり基本構造は一緒だが、エステル結合した相手が異なる。ラセミ体でもでもない。この選択肢は間違いです。
4 ユリノーム錠とユリス錠
基本的な構造は一緒だが、一部の分子が異なる関係で、ラセミ体でも鏡像異性体でもない。この選択肢は間違いです。
5 アドフィードパップとロコアテープ
アドフィードパップの有効成分はフルルビプロフェンでラセミ体であり、その有効な鏡像異性体を製剤化したものがロコアテープ(エスフルルビプロフェン)です。この選択肢を選ぶと正解です。
よって正解の選択肢は2と5になります。どうでしたか、皆さんのためになる問題だったでしょうか?どうしてこの問題を作ったかを書いた記事もあるので、のせておきます。
キラルスイッチ医薬品は従来品に比べて良いことばかりで、大変有用だと思うのですが、製剤化するためには多くの努力が必要だと本に書いてありました。ちなみに今回の問題と同様のもの(その2)を作っています。楽しみにしていてください。それと構造式のここが違うよとか、間違いに気が付いたかたは、お手数でも教えて頂けると幸いです。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
しらけん
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