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“一度の大ヒット”が富を決める──テールイベントを味方につける習慣設計の真実
はじめに:ディズニーの魔法は“偶然”だったのか?
「ウォルト・ディズニーが世界的なエンターテインメント帝国を築いたきっかけは、400本ものヒットしない作品を経た“1本の白雪姫”だった」──そう聞くと「たまたま白雪姫が当たっただけ?」と思うかもしれません。けれど、そこには“驚くほど不思議な仕組み”が隠れています。
実は、ビジネスや投資の大きな成功は「テールイベント(めったに起きない極端な事象)」によって生み出される、という説があるのです。これは書籍『サイコロジー・オブ・マネー』でも繰り返し強調されており、「たくさんの失敗を抱えた上で、極わずかな成功がほぼすべてのリターンをもたらす」 という現象が起こるとされます。たとえば、アマゾンが無数のサービスを展開しているにもかかわらず、実際の収益はAmazonプライムとAWSの2本柱に依存している事実などが、その典型例でしょう。
こう聞くと、私たちが「お金持ちになる」ためにも、すべては“運任せ”なのでは……? と感じるかもしれません。ところが現実はそう単純でもなく、むしろ“習慣”がポイントになる、という話です。いったい、どういうことなのでしょうか? 本記事では、
“テールイベント”がいかに富を生むのか
そのテールイベントを味方につけるための日々の習慣
この2つのトピックを中心に深堀りしながら、「なるほど、自分にもできそうだ」「これは意外だった」と思えるようなヒントを、わかりやすく(そして少し壮大に!)お伝えしていきます。
1. テールイベント──“コツコツ”より“ドカン”が決定づける富
テールイベントとは何か?
「テールイベント」というのは、確率分布の“裾(テール)”に位置するような、発生確率が非常に低い出来事を指す言葉です。ほとんどの人にとって「一生に一度あるかないか」というレベルの現象でも、いったん起こると莫大な影響力を持つ のが特徴です。
ディズニーの“白雪姫”
アマゾンの“Amazonプライム”や“AWS”
投資の神様ウォーレン・バフェットですら、400〜500もの投資先のうち10銘柄程度でほとんどの利益を上げている
これらの事例が示すのは、「多くの施策の“平均的成功”がコツコツ富を築くのではなく、“数回の超大型ヒット”が全体の大半を生み出している」という現象です。しかも、意外にもほとんどの大企業や投資家はこのテールイベント頼みの構造に支えられているのです。
なぜテールイベントがそんなに大事なのか?
たとえば正規分布の世界であれば、いくら努力してもごく一部の失敗や成功が全体を大きく左右することは少ないでしょう。しかしビジネスや投資のリターンは、往々にして“パレート分布”や“べき乗則(パワー法則)”に従うといわれています。つまり、上位1〜2%がとてつもなく大きなリターンを生成する のです。
私自身、分子生物学の研究をしていた頃、自然界にも「累積優位」や「ネットワーク効果」による偏りは数多く存在することを見てきました。「一度成功すると、その成功がさらに次の成功を呼ぶ」仕組みは、人間社会や企業の成長にも共通しているわけです。
だからこそ、ディズニーやアマゾンがあれだけ多角的に試行錯誤を繰り返し、“白雪姫”や“AWS”というテールイベントを偶然だけに頼らず掴み取り、そこから一気に莫大な収益を得ているのは、ある意味で合理的といえます。
「失敗してもいい」構造をどう作るか
ここで重要なのは、テールイベントはそう頻繁に起こるものではないため、“失敗”に耐え続ける環境があるかどうか という点です。大きな当たりが出るまで破産してしまっては元も子もありません。つまり、
どれだけ長く“ゲーム”に居続けられるか
どれだけ多くのトライ(試行)を実施できるか
これがテールイベントを手にするための必須要件になります。
2. テールイベントを引き寄せる「習慣」という意外なキーファクター
では、どうやって“失敗に耐えながら挑戦を続ける”のでしょうか? ここで『サイコロジー・オブ・マネー』でも繰り返し強調されるのが、「習慣」 の力です。
なぜ“習慣”が富のカギを握るのか?
(1) ゲームオーバーを避けるための「倒れにくさ」
ウォーレン・バフェットや他の投資家が口を揃えて言うのは「とにかく生き残ることが大切」ということ。失敗を重ねても“まだ続けられる”状況を維持するには、無謀なリスクを取らず、日々コツコツと「節約・貯金」の習慣を徹底する必要があります。
支出を抑えてキャッシュが底をつかないようにする
安易にレバレッジをかけすぎない
こうした“地味だけど継続的な行動”こそ、成功を待つための耐久力をもたらすのです。
(2) 多数のトライを実行し続けるための「継続力」
アマゾンがAWSにたどり着くまで、どれだけ試行錯誤を繰り返してきたかは想像に難くありません。個人のレベルでも、新たなプロジェクトやアイデアをどんどん生み出すには、日々の「アイデアを出す習慣」や「小規模に試す習慣」 が必須です。
発信活動やSNSでの実験
小さなサービスや商品をテスト販売
数日、もしくは1か月のスパンで改善・撤退を素早く決める
これを「気が向いたらやる」程度では続きません。毎日のルーティンとして“普通に繰り返す”からこそ、失敗してもすぐ次に移れるわけです。
(3) 「淡々と普通のことをする」=周囲がパニックでも揺らがない
ナポレオンが「天才とは、周りが冷静でないときにも平常心で物事を行う者だ」と言ったように、相場が乱高下したり新技術が出てきたりする激動の時代ほど、浮き足立たずに“いつも通りの基本行動”を積み重ねる人が最後に勝ちやすい。これも、毎朝のルーティンや普段の作業フローがしっかり身についているかどうかで大きな差がつきます。
たとえば私自身、ベンチャー転職当初は激務で浮き足立ちがちでしたが、毎朝7時に起きて「15の朝のルーティン」を済ませるようにしたら、不安やプレッシャーをある程度うまく消化できるようになりました。研究室時代の「朝11時起床」と比べると、まるで別人のように自分をコントロールできるようになったのを覚えています。
具体的な習慣例──今日から試せる“小さなテールイベント対策”
「どうせならもう少し具体的に教えてほしい!」という声にお応えして、『サイコロジー・オブ・マネー』的な視点も交えながら、日々の習慣づくりをいくつかピックアップしてみましょう。
節約と貯金の習慣
クレジットカードを2枚までに絞る
給料のうち一定割合を自動的に貯蓄口座へ
家計簿アプリを導入し、月イチで振り返り
こうした仕組みがあるだけで、万が一の失敗に備える“キャッシュのクッション”が生まれ、次の挑戦に踏み切りやすくなります。
小さく試す、即PDCAの習慣
アイデアを思いついたら、数日単位でプロトタイプを作る
発信活動(ブログ・SNS・YouTubeなど)も「最初は無料or低コストでスタート」
反応が悪ければ原因を考え、改善してもう一度チャレンジする
大きな投資をする前に“小さな実験”を重ねることで、リスクを最小化しながら成功率を高める狙いがあります。
ルーティンでブレないメンタルを作る習慣
朝起きたら15分の有酸素運動
簡単な筋トレ
瞑想やマインドフルネスで頭をリセット
どれも大してお金がかからないので、「やって損はない」行動の代表選手です。私の場合は大学院時代は運動ゼロに近かったのですが、独立して習慣化したところ精神的な安定度合いがかなり変わりました。
失敗に落ち込む必要はない──“長期的視点”が最強の武器
最後に強調したいのは、上記にあるように失敗を繰り返しても“テールイベント”が大半を帳消しにしてくれる世界観では、失敗を怖がりすぎる必要はない ということです。
バフェットの10銘柄がすべての利益を生み出している話
ディズニーの400本の“稼げない作品”と1本の白雪姫の対比
これらは「失敗に意味がない」という話ではなく、「失敗はいずれ来る大当たりの“仕込み”になっている」ことを示唆しているのです。いずれにせよ勝負は“回数”と“継続力”にかかっている。そこに“習慣”が大きく関わってくるわけですね。
私自身、博士課程時代は月に1〜2冊しか本を読まず、研究室の起床時間は11時。効率も悪く、失敗や停滞感で悶々としていました。しかし、その後ベンチャーに転職して思い切り行動量を増やし、読書習慣や早起きを身につけた結果、次々に新しいアイデアを試せる余裕が生まれてきた。最初は小さな成功や失敗の繰り返しでしたが、やがて「この分野なら自分が活躍できる!」と確信を得られるジャンルが見つかり、そこから独立へと進む道が開けました。
これだって、ある意味“自分にとってのテールイベント”だったと言えるでしょう。
まとめ:日々の行動が“白雪姫”を呼び寄せる
テールイベントは、一部の極端な成功が富や成果の大部分をもたらす現象
そのテールイベントに到達するには、試行を続けられる倒れにくい仕組みが必要
日々の地道な習慣(節約・継続的トライ・失敗の記録など)が“何度でも挑戦できる”体力とメンタルを支える
『サイコロジー・オブ・マネー』のメッセージを一言で言えば、「大きな成功は運の要素もあるけれど、運を呼び込むためにはゲームから降りずに続けられる仕組みと習慣を持つことが大事」ということでしょう。失敗しても普通に生活し、またトライできる。そんな柔軟さこそが、未来の“白雪姫”や“AWS”を生む土壌になります。
もし「失敗が怖い」「どうせ自分には無理だ」と感じるときがあれば、ぜひ思い出してみてください。多くの大企業や投資家は“テールイベント”のおかげで富を築いたものの、その裏には数えきれない試作品や平凡な銘柄がゴロゴロしているのです。だからこそ私たちは、失敗を嘆くより「次の一歩」に目を向けられます。
そして「次の一歩」を可能にするのは、誰がどう言おうと結局、毎日の習慣 なのです。
さあ、あなたも今日から試せそうな“小さな習慣”をひとつ決めてみませんか? きっとそれが“テールイベント”を引き寄せる最初の一歩になるはずです。もしこの記事が少しでも「なるほど」「意外だった!」と思えたら、ぜひ“いいね”やコメントで感想を聞かせてください。あなたの挑戦が、どこかで大きく花開くことを心から願っています。