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中二病


さぁ、俺の右腕よ、真の力を発揮するときがきたぞ、はあああああっ!
……いきなり、眠っている力を解放してすまない。解放したとて、この世界はなにも変わらないし、そもそも私に、眠っている真の力なんてなかったようだ。


右腕に真の力が眠っている、なんて言うと「中二病」と呼ばれる。中学二年生ごろの、思春期にありがちな、過度な妄想や自意識を揶揄した言葉だ。私の記憶が正しければ、14,5年前から流行りだして、当時、中学生だった私の周りでも「中二病」の単語は、あちこちで発せられていた。口を開けば「中二病」だった。
でも、振り返ってみて、思う。中学二年生のとき、いわゆる「中二病」的な行動をとっただろうか。小学生のころは、かめはめ波を撃つための修行と、ジェダイの騎士になるための修行なら積んだが。(ちなみに、私の友達は、火遁の術の印をずっと結んでいた。)
中学生の私は、部活と学校の宿題とで、そんな暇(かめはめ波の修行)はなかった。けれど、「中二病」と、言われた経験もある。それはむしろ、高校、大学と進むにつれて、言われた記憶がある。


何をするにも「中二病、中二病」と揶揄するような時期があったことは、多くの若い人に、身に覚えがあるのでないだろうか。
私自身、この言葉は全然好かなかった。ほとんど使いさえしなかった。人を揶揄するのに、そこらじゅうで、誰もが使っている単語を使うことが、憚られた。というか、「中二病」と発する人を馬鹿だとさえ思っていた。人を揶揄するなら、もう少しマシな切り口があるだろうと、本気で思っていた。


と、書いてみたが、はっきり言って、私も自意識過剰の自覚はあるし、「中二病」と言われて、嫌な気持ちになったから、人には言わなかっただけなんだと思う。大人になっても、こうして書いていて、それっぽい理屈で、不特定多数の誰かを批判しては、自意識のふちに陶酔したいだけなのかもしれない。
現役の「中二病」だと自覚して、右腕に眠る真の力に、思いを馳せる……。



ではまた。



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