短歌(2020.投稿系)

雨跡がまとまり島を象る開闢に立ち会ってます、今


(東京新聞2019.11.10朝刊 東京歌壇東直子欄入選)


水がない……と何の気なく呟いた世界は一度ですべてを噴き出す


(毎日新聞2020.6.8朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


どこにでもいける、からかな、ここにいる 遺構のごとき夜の鞦韆


(東京新聞2020.10.11朝刊 東京歌壇東直子欄入選)


なんとなく朝はパンだった気がするなんとなくぼくはぼくだった気がする


(小説野性時代2020年11月号 2020.10.12 加藤千恵欄特選)


できるだけとおいところへいきたくてぼくは鞦韆から手を離す


(毎日新聞2020.10.26朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


星もおちる。海もおちる。まひるまの都会で握られるコップたち


(東京新聞2020.11.1朝刊 東京歌壇東直子欄入選)


街灯を濡らす秋雨 生まれた日泣いて許されたはず生まれたことは


(毎日新聞2020.11.10朝刊 毎日歌壇米川千嘉子欄入選)


ここにいまあるのは月と月暈かきみが梨をむく音だけがして


(毎日新聞2020.11.16朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


胸骨のふかいところが雨になりぼくの二ノ腕ほそくかんじる


(東京新聞2020.11.29朝刊 東京歌壇佐々木幸綱欄入選)


さみしさがすこしずつ灯るようにして葉叢にふえる黄色の葉たち


(東京新聞2020.12.6朝刊 東京歌壇佐々木幸綱欄入選)


熱風にまぎれるものがあるだろうプールサイドの鯨の遺骸


(関口靖彦編『ダ・ヴィンチ』KADOKAWA 2021年1月号「短歌ください」)

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