僕達は誰も知らない場所で恋をする
僕はSNSで知り合った女性と恋に落ちた。
最初は僕の片想いだと思っていた。
そもそも彼女は海外在住だったので、半ば諦めるつもりで片想いを始めようと思っていた。
しかし最初に扉を叩いたのは、驚くべき事に彼女の方だった。
「メッセージを送るくらいならば」
彼女はそう思いながら、僕にダイレクトメールを送ってくれたのだ。
それから暫くして、僕も彼女にメッセージを送ってみようと決心をした。
「何か悩んでいるみたいだけど、大丈夫?」
最初のメッセージは確かそんな感じだった。
返信はすぐに返ってきた。
「メッセージありがとう!特に悩みって程の事ではないんだけどね笑」
それからしばらくのやり取りの後、勇気を出して本題となるメッセージを送った。
「もっと貴女の事が知りたいです」
内心凄くドキドキしていたと思う。
これもまた、すぐに返信が返ってきた。
「私も貴方の事をもっと知りたいです」
これが全ての始まりだった。
お互い口には出さなかったが、今にしてみれば互いが互いを想っている事を既に分かっていた様にも思う。
それでも僕は脈はないだろうなぁなんて相変わらず考えながら、それでも必死に恋をしていた。
彼女に変化が訪れたのは、多分この頃だと思う。
「もう少し目が覚めるまで夢を見ていても良いかな」
この様な投稿が日に日に増えていった。
互いの投稿に互いがコメントをする日々が何日も続いた。
そんなある日、他のフォロワーさんからダイレクトメッセージが届く。
「◯◯さん、こんにちは。恋ですね笑」
他人が見てもそれは明らかな位、外に漏れ出していた様だ。
しかも僕の想い人まで言い当てられるなんて。
暫くはそのフォロワーさんに相談等をしていたと思う。
そんなある日の土曜の事だ。
僕は居ても立っても居られず、彼女に自分の想いを伝える決心をした。
「今更ですが、僕は貴女に恋をしています」
こんな様なメッセージだったと思う。
その日は返事が来るまでドキドキしながら過ごしたのを今でもよく覚えている。
返事が来たのは夜中になってからだった。
いつの間にか寝ていた僕は、冬も迫ろうかという季節にも関わらず寝汗をかいていた。
「私もです。でも夫がいます」
頭の中が真っ白になった。
翌朝、出勤をした僕は午後は体調不良という事にして半休を取った。
昼食も食べず、ただ車の中で泣きながら海を眺めていた。
転機が訪れたのは、それから2日後だった。
僕は彼女にとある提案を持ち出したのだ。
「SNS上だけでも恋人になってくれませんか?」
この日も返信は遅かった。
「◯◯さんが、それで良いのなら」
こうして、誰も知らない場所で僕らの恋が動き始めた。