超重要!覚えておきたい投資の心理学(行動経済学)

はじめに

投資家なら知っておきたい知識、それが投資心理学(行動経済学)です。

行動経済学とは、人間の「非合理な意思決定のメカニズム」を解明する学問です。

人の行動というのは、意識的であれ無意識的であれ、意思決定をした結果生まれるものです。あなたの脳が何かしようと意思決定したから、その何かを実行に移します。そして、人間とは常に合理的に行動するわけではありません。

行動経済学が最強の学問である p38

人間は普段から無意識に非合理な意思決定をしてしまうものですが、お金が絡む投資においては、その傾向がもっと強くなります。

投資で負けないためにも、人間の非合理な心理・性質を知っておくことは非常に重要なのです。

知っておきたい投資家心理の本質

意思決定は理性ではなく感情によってなされている

まず知っておきたいことは、人間は感情によって行動が大きく左右されるということです。

「感情」とは喜怒哀楽のようなはっきりした感情だけではなく淡い感情(アフェクト)も含みます。

淡い感情は意識するのが難しいですが、それゆえ意思決定に関係しているとも気づきにくいのです。特にネガティブアフェクト(不安・不満・焦りなどのネガティブな感情)は物事の判断に大きく影響します。

むしろ私たちの意思決定に頻繁に影響を与えているのは、起伏の激しいエモーションではなく、ネガティブアフェクトのほうだったりします。

行動経済学が最強の学問である  p280

相場は非合理な意思決定をしやすい環境である

相場の動きは、自分でコントロール出来るものではなく、また予測出来るものでもありません。投資の世界に身を置くということは、コントロール不能な不確実性のある環境に身を置くということです。

ですが人間は、コントロールできないことにストレスを感じます。このストレス(ネガティブアフェクト)が非合理な意思決定を生む原因なのです。

人間は「常に自分で意思決定し、行動している。人生をコントロールしている」と考えており、またそうしたいという強い欲求があります。ここでのコントロールできるとは、「自分で決められる」、または「自分がやりたい方向に向くように影響を与えることができる」ということです。

~中略~

「コントロール感」の減少がネガティブな感情を生み出し、そのネガティブな感情が人間の非合理な意思決定や行動に影響を与えていることがわかっています。

行動経済学が最強の学問である p302

~ここまでのまとめ~
投資をすること=常に非合理な選択をしやすい環境にいるということ。

投資家の悩みを投資心理学(行動経済学)で紐解く

チキン利食いの原因

自分の持っているポジションに利益が乗り始め、これから上昇が期待できる局面でつい利食いをしてしまった、という経験はこの記事を読んでるあなたなら一度や二度はあるはずです。

このような、利益を伸ばせる局面ですぐに利食いをしてしまうのは、人間が心理的に不確実性を嫌うからです。

  • このままポジションをホールドした場合、最終的に利益になるか損失になるかは分からない。

  • 今決済すれば少額だが確実に利益になる。

自分のポジション(お金)が不確実性に晒される(損失の可能性を孕んだ状態になる)ことが心理的に耐え切れなくなって利食いをしてしまうのです。

また含み益を意識してしまうことも、利益を伸ばせない原因の1つです。

プロスペクト理論によると人は得るものを強調(意識)すると、心理的に確実性を求めリスクを避ける性質があるからです。

~ここまでのまとめ~
人は心理的に不確実性を嫌う傾向があり、それにより早く利益確定をしてしまい、大きな利益を取ることができない

塩漬けの根本的原因

含み損のポジションを損切りせずにそのまま保有する、いわゆる塩漬けをしてしまう心理も投資心理学(行動経済学)で原因を紐解くことができます。

・希望を持っていること

人間が不確実性を嫌うということは説明しましたが、希望を持つと不確実性を受け入れリスクを取るようになります。分かりやすい例は宝くじですね。夢(希望)を持つと損するのは分かってても買ってしまうのです。

投資(トレード)でもこれは当てはまります。現状含み損でこれ以上良くなる兆しがなくても、「いやもしかしたらここから反転してプラスになるかも」という淡い希望・期待が、損切りせずにポジションを保有させ続ける(=リスクを取る)のです。

・都合のいい情報だけを集めてしまう(確証バイアス)

確証バイアスとは、これと思ったものに関して、それに関する情報だけ集めて「絶対にこれだ」と信じて意思決定をしてしまうことです。
この時、「これだ」と思ったものを否定する情報は目に入りません(見ないようにしているのかもしれません)。

まず取り上げるのは「確証バイアス」で、これも認知のクセ。何かを思い込んだら、それを証明するための根拠ばかり集めてしまうバイアスです。

~中略~

人間なら誰しも確証バイアスを持っています。

行動経済学が最強の学問である p129

自分の投資戦略に関して、それが正しいと証明する根拠になるような情報だけを集めてポジションを保有し続けるのです。

また、この確証バイアスが先程の希望や期待を強くしてしまい、より塩漬けしやすい状況を作ります。

・サンクコスト

サンクコストとは、簡単に言うと「元を取りたい」という心理のことです。

埋没コスト(Sunk Cost)」とは、一度何かを始めたら、たとえ成果が出ていなくても、そこに費やした時間・お金・労力を取り戻そうと継続してしまうという非合理なバイアスです。

~中略~

元を取りたいと思うのが人間の心理であり、ギャンブルで「5万円もつぎ込んだんだから、あと3万入れて回収しよう」と熱くなってしまうのも、同じく埋没コストが働いています。

行動経済学が最強の学問である p108

このサンクコストもポジションを塩漬けしてしまう原因となります。

私自身、ポジションを持って長時間経つと損切り出来なくなります。これだけ時間をかけたのだから少なくとも〇〇くらいの利益は欲しい、という気持ちが出てくるんですね。そのきもちが損切りを遅らせて後々もっと大きな損失で決済したことは多々あります。

~ここまでのまとめ~
塩漬けしてしまう原因
・希望を持っている
・確証バイアス
・サンクコスト

リベンジトレードとプロスペクト理論

損失を取り返そうと無茶なトレードをしてしまう、いわゆるリベンジトレードも投資心理学(行動経済学)で説明ができます。

プロスペクト論によると、人には、

  • 得るものを強調されると確実性を求めリスクを避ける

  • 損失を強調されるとリスクを求める

という傾向があります。("強調"は"意識"と読み替えてもいいです。)

リベンジトレードはこの「損失を強調されるとリスクを求める」という性質が起因となります。

人間は損失を回避したい気持ちが強いです。しかし「損失を被った」、その事実を意識するとそれを取り返そうと、本来ならやらない場面・状況でもトレード(=リスクを選択)してしまうのです。

負けを2回、3回と繰り返すと嫌でも損失は強調されます。負けが重なれば重なるほど、リベンジトレード(勝てる見込みのない無茶なトレード)をしてしまうというわけですね。

~ここまでのまとめ~
損失を意識してしまうと、それを取り返そうとリスクを取る性質がある

人間心理の本質には逆らえないが、対策は取れる

ここまで解説してきたことは人間に備わってる性質なのでこれらを失くすことは出来ません。上手く付き合っていくしかないです。

出来る対応策としては、

  • 自分の感情のクセを理解すること

  • 自分の感情のクセに合わせたルールを作ること

この2点です。

自分の感情のクセを理解すること

まずは自分がトレード中にどんな感情になるのか、を知ることが重要です。

おすすめは自分のトレードとその最中に感じた感情を記録しておくこと。

「今損失を取り返そうとしてるな」とか、「利益が減るのが惜しいから利食いしようとしてるな」とか、自分が今何をしようとしてるのか、それはどんな感情からきてるのか、を記録し見返すことで、自分の感情のクセを知ることができます。

自分の感情のクセに合わせたルールを作ること

自分の感情のクセが分かれば、対策を取ることが出来ます。

例えば私の場合だと、ポジションを持ったら12時間以内に決済するというルールを設けました。これは長時間ホールドしてると損切り出来なくなる(サンクコストバイアスがかかる)のでその対策としてのルールです。

まとめ

今回は、投資家(トレーダー)なら知っておきたい行動経済学、というテーマでお届けしました。

行動経済学は奥深いですが、少なくとも相場に参加する(投資をする)ということは、損な選択(非合理な意思決定)をしやすい環境に身を置くことである、ということは常に意識しておいたほうがいいです。

それが自分の資産を守ることに繋がります。

また、今回書いたような「不合理な意思決定」は自分以外の相場参加者の脳内でも同じように行われています。

つまり、行動経済学を学ぶということは、大衆心理を知る上でも重要なのです。


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