サブカルで学ぶ社会学⑪ 『バイスティックの7原則』 ~『ソーシャルワーカー・二ノ瀬丞の報告書』より、対人援助職が守るべき七つのこと~
はじめに(注意書き)
はじめましての方ははじめまして。そうではない方はいつもお世話になっております、吹井賢です。
さて、『サブカルで学ぶ社会学』第十一回です。
3月23日に発売した新作はソーシャルワーカーの話であり(なんとマジ)、社会福祉について大学で四年間勉強した吹井賢(なんとこれもマジ)が、社会学やその周辺科学、つまり、政治学・哲学・精神医学・文化人類学・生理学・組織科学・比較社会学・発達科学・戦争学・社会福祉学・等々に出てくる概念を、サブカルチャーを絡めつつ、分かりやすいが論文で引用すると怒られる程度にはふわっとした感じに、解説していこう、という記事です。
最初にお断りをば。
※あくまでも娯楽として楽しんでください。
※興味を持った概念については、この記事を読むだけではなく、信用に足る文献を読み、講義を受けることをお勧めします。
※そして僕に分かりやすく教えてください。
それでは始めます。
『ソーシャルワーカー・二ノ瀬丞の報告書』、好評発売中です
皆さん!
3月23日、吹井賢の新作である『ソーシャルワーカー・二ノ瀬丞の報告書』が発売されました!
異能サスペンス(『破滅の刑死者』)→社会派ミステリ(『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』)→お仕事人間ドラマ(最新作)と、統一感が全くないラインナップをお届けしている吹井賢ですが、それはそうとして、前二作とは全然違う方向性で面白い作品になっていますので、良ければ、『ソーシャルワーカー・二ノ瀬丞の報告書』をお願い致します。
短編集なので読みやすいと思います。
では、上述の作品で、吹井賢がうっかりミスをしているシーンは何処でしょう?
そうですね!(若干後悔)
ヒロインである千代とのやり取りの中で、「ソーシャルワーカーの守るべき七つのこと」を思い出しているシーンですね!
これ、作中での解説を入れ忘れた為に、もしかすると「二ノ瀬の個人的なポリシーかな?」と思われていそうですが、これは『バイスティックの七原則』と呼ばれ、ソーシャルワーカーをはじめ、対人援助職の世界では有名な考え方です。
もしかしたら、聞いたことがある方も多いかもしれませんね。
『バイスティックの七原則』とは
じゃあその、「『バイスティックの七原則』とはなんぞや」と言いますと、その筋のテキストには『援助的関係をつくるために――バイステックの援助関係形成の7原則』という項目立てて、このように説明してあります。
ここで出てくるのが、『バイスティックの七原則』です。
”バイスティック”、もしくは”バイステック”は、アメリカの社会福祉学者であるフェリックス・ポール・バイスティック氏が提唱した概念で、下記のような七つの項目で示されます。
テキストや教える方によっては、「○○の原則」という風に表現されます。
また、順番はまちまちです。
これだけだと分かりにく過ぎるので、二ノ瀬の述懐と対応させてみましょう。
『個別化』 → 「同じ人間も同じ問題も存在しないと理解し、」
『自己決定』 → 「自己決定を支持する。」
『受容』 → 「相手を決して否定せず、」
『非審判的態度』 → 「善悪を論じず、」
『秘密保持』 → 「七つ目は、秘密を保持すること。」
『統制された情緒的関与』 → 「自らの感情に飲み込まれないようにしつつ、」
『意図的な感情表出』 → 「話しやすい雰囲気作りを心掛け、」
……こんな感じですね。
さて、二ノ瀬はできていたでしょうか?
人を頼る力を身に付ける――「助けられ上手」になろう
バイスティックの話からは少し逸れるのですが、ソーシャルワーカー的に、ありがたい相談者の方って、実は「早めに相談してくれる人」だったりします。
”今”お金がないんです、じゃなくて、”来月の”生活費が厳しいんです、という風に相談してくれる方。
どうしても、”今”の問題だと、支援策が限られてしまうからです。
今回、紹介した『バイスティックの七原則』は支援者側、つまりは、二ノ瀬側の考え方・姿勢の話です。
二ノ瀬≒ソーシャルワーカーは、このように相談しやすい環境作りに尽力しています。
ですから皆様は、困った事があった際には、気兼ねなく、そしてできることならば早めに、然るべき機関へ相談していただければと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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最後に宣伝!
最新作『ソーシャルワーカー・二ノ瀬丞の報告書』が発売中です!
よろしくお願いします!