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【028】ブッダの生涯-【4】(仏教哲学の世界観第2シリーズ)

最古の仏伝が生まれた理由について

前回は仏伝がどのように仏教世界を拡張したか、浄土思想の例を挙げて解説されました。
仏伝により描かれた前世での別の仏陀との出会いと誓願という部分が拡張され、お釈迦さま以外に存在するであろう別世界の仏陀を構築し、やがて人々にとって都合の良い架空の仏=阿弥陀仏として成立しました。
このように仏伝の宇宙観が様々な形で仏教哲学を発展させました。

今回は最古の仏伝を取り上げ、成立した経緯について解説されています。


このシリーズでは僕が仏教について学んだことを記しています。
主な教材は仏教学者で花園大学の教授をなさっている佐々木閑先生のYouTubeでの講座の内容をまとめています。
もちろん僕の主観によるまとめなので色々と解釈の違いや間違った理解があるかと思います。
それはX(Twitter)などでご指摘いただけると幸いです。

あくまでも大学生の受講ノートみたいなものだと考えていただけると幸いです。


ブッダの生涯4

https://youtu.be/0e2i2NyrJuM?si=Sq8LDjfNhLIBjmFE

AIによる要約

お釈迦様の一生を描いた仏殿についての講義です。仏殿の最初期の部分は出家して悟りを開いたお釈迦様から、仏教僧団ができあがるまでの話であること。この部分が仏殿の基礎となり、のちにさまざまなエピソードが付け加えられて行ったこと。現在の仏教僧団の制度ができた背景にこの話があることを説明しています。

学習したこと

仏伝のはじまり

時代を経るごとに拡大していった仏伝だが、最初は過去生の物語や誕生から修行時代の物語ではなかった。
最初の仏伝は、お釈迦さまが仏陀となり、布教活動を行う様子から始まっている。

ではこの最初の仏伝がどのような経緯で生まれたか。

もともと仏伝としてまとめられる以前は一つ一つの細かく独立エピソードがバラバラに存在していた。
それはお釈迦さまが自身が語られた(であろう)個人的な生まれと育ち、あるいは修行時代の思い出、そして悟りを得て仏陀となり、最初の説法を行ったエピソードなど。

これらのエピソードのうち、仏伝の出発点となった部分がある。

それは
悟りから僧団の形成まで
である。

お釈迦さまが悟りを開き、布教活動を行っていくうちに弟子は増えていき、全体の統括が難しくなっていった。
仏教僧団の範囲も広くなり、それぞれの地域で自治的に組織運営する必要に迫られるようになった。

このことが仏伝が始まる要因となる。

仏伝の始まりはお釈迦さまの物語ではない

現在の仏伝は、
長い時間をかけて次第にお釈迦さまを偶像化し、
現在のようなお釈迦さまを語る偉人伝のような扱いとなっているが、
元々はそのような意図は無かった。

お釈迦さまが設立した仏教僧団もお釈迦さまが亡くなられた後では仏教僧団の維持に問題が生じるため、お釈迦さま不在でも運営できるように足場固めをする必要がある。

そのため、お釈迦さまの生まれや修行時代のエピソードなどよりもよほど「仏教僧団成立史」が必要になった。
すなわち、仏伝の出発点とはお釈迦さまのエピソードではなく、僧団の設立のあらましを記述したものなのである。

最古の物語は「律の因縁話」

ではその「あらまし」がどこに記載されたかというと、
これは「律」の最序盤にある。

律とは共同生活を行なっている仏教僧団(サンガ)を運営していくための法律である。

この法律書である「律」には僧団の取り決めたルールが記載されているが、この序盤に最も古い仏伝が記載されている。

律の一例として出家僧団の僧侶となる方法が記載されている。
これによると、新たに出家したい人がいる場合には10人以上のお坊さんによる許可が必要としている。
これを「白四羯磨」(びゃくしこんま)という。
これは新しいメンバーを入れるにあたり問題がないかを話し合う会議である。

例えば、
家族の了承を得ているか
これは親の許可のないまま勝手に出家させると後で大変なトラブルになるからである。

公務員かどうか
公務員となると当時であれば国家の人材を勝手に出家させてしまうとトラブルになり、僧団は国家を敵に回してしまう。

このように、新しいメンバーを加える際にはある程度の審査が必要になる。

ただ、こうなるとお釈迦さま一人から始まった仏教僧団において矛盾が生じる。
伝説によるとお釈迦さまは悟りを開いてから最初に五人の弟子を持った。

これでは10人のお坊さんによる白四羯磨はできないのではないか?
という疑問が生じてしまう。

このため、組織の正当性を裏付けるために──

お釈迦さまが悟ってから五人の弟子を迎え、
教団が拡大し、
最終的に現在の制度が生まれた。


───という法律の制定史として経緯を説明する必要があった。

こうして法律書である律に仏教教団設立のあらましが加わることになった。
これはお釈迦さま亡き後に仏教僧団の維持を確たるものにするためのものだったと考えられている。

感想

結局、律は誰が作った?

わからないことが一つある。
それは「律」がどのタイミングで作成されたか?である。
今回のお話の最後で律の序盤に教団設立史がお釈迦さまの死後制定されたとあったが、そもそも律はお釈迦さまが考えた僧団のルールではないのか?

もちろん後世の人が後から追加したものもあるだろうが、大元のルールはお釈迦さまが決めたものだと思っていたのだが。

「仏伝」の解釈における勘違い

今回の解説で
仏伝とはお釈迦さまの物語から始まったわけではない
という面白い考え方を知った。

組織の正当性を裏付けるための教団設立史が、
いつのまにか神格化されたお釈迦さまの物語となり、
それが欲深いファンによって前世物語などの二次創作が作られ、
さらにそこから宇宙観だけを都合よく引っ張り、
無理やりに見えるほど飛躍した論理展開で浄土思想が生まれている。

いつの時代も正しくものを見る力のない人たちによって好き勝手に拡大解釈され、根本的な原理までもが捻じ曲げられていく。

一方で、こういったご都合主義によって仏教自体が消えずに拡大し、現在まで続いている要因となったと思うとなかなかの皮肉のように思える。


次回は「ブッダの生涯5」 (仏教哲学の世界観 第2シリーズ)
仏伝の本格的な解説がはじまります。
律に書かれた最初のエピソード「ブッダの悟りの場面」が解説されます。


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