まどろみの音色 @ウィーン オーストリア
私が大学4年生だった頃の10月
人生で2回目の1人旅はヨーロッパ(チェコ、オーストリア、ブダペスト)を2週間かけて放浪した。
事件が起きたのは5日目の夕方。
その日はチェコのプラハから特急でオーストリアまで向かっていた。
到着は夕方の18時。オーストリアのウィーン行きの列車だ。
その日の19時30分から教会でやっているクラシックコンサートを予約していた。わくわくしていた。
4時間程度乗っていた列車が止まり、ようやく着いた。
胸を躍らせて降り立ったそこは、なんだか人気のない駅。
『あれ、ウィーン思ってたのと違うな、、』
地図を確認するとウィーンから10キロほど離れた場所だ。
乗り過ごしたのか、早くおりてしまったのか、そもそも電車が間違っていたのか。
それはわからないが、早く行かないとコンサートに間に合わない。
『地下鉄が通っているから電車で行こう』
そう思って切符を買おうとすると、
『しまった、、、通貨が違う。。』
そう、チェコはクローナであるのに対し、オーストリアはユーロなのだ。
その日は土曜日の18時過ぎ。
ヨーロッパは基本土曜日18時以降はお店がやっていない。
駅員さんに聞いてもこの近くには両替できるところはないと。
タクシーもない。
『あかん。』
数秒考えた僕は、
『これしかない』
、、、走り出した。
バックパックで来ていたので、なんとか走れる。
10kmの道のりを1時間半で。
頑張ればいける。
その日の気温は10度以下。
走っている最中に土砂降りに見舞われた。
傘をさしたがそれだと遅くなる。
傘をたたんだ。
雨の中、傘をささずに、ただ前だけを見て走った。
『あれ、俺はウィーンにきて一体何をしているのだろう』
そう思った気もするが、すぐに切り替えて前だけを見た。
19時30分前、ようやくウィーンについた。
嬉しくて泣きそうだった。
叫びたかった。
念願のコンサート。
厳かな教会の中はとても暖かい。
体の芯まで冷え切った状態で一番前の席になった僕は
とても心地よい音色と共に、、
気づいたらコンサートが終わっていた。
旅の疲れと寒暖差と音色のトリプルパンチで人生で一番深い睡眠をとることができた。
これもまた旅の思い出。