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ワカランタの花

2020.6月の手記

 皐月(さつき)の晴れやかな日の光、爽やかな薫風に心なごむ季節も終わり。
水無月ともなると、朝晩は涼しい風が吹き抜けるが、日中の日差しは夏そのものである。


 そんな6月初旬の昼下がり、家内の友人である近所のおばさんが、小さな茶碗に青紫色の可愛らしい花を浮かべて、見せにきた「名前はワカランタ、奇麗でしよう!」得意げな表情である。


 家内は見た事のある花で「この花、ジャカランタと云うじやあないの」おばさん答えて曰く「そんなことはない、ワカランタに間違いない!」嘘も百回云えば本当になると言う。「思い込んだら命がけ」ならぬ「思い込んだら百年目」。おばさんにとっては金科玉条(融通がきかない)で再考の余地なし。


 さて話の本題に入らせていただく。家内の友人、H夫人は友人三人と連れ立って、2010年、雷龍の国ブータンに旅行した。 その翌年、東日本大震災の直後に、ブータン国王夫妻が国賓として来日され、日本でも一躍有名になった.ブータン王国は5代目である現国王が治め、ヒマラヤの麓に位置し「世界一幸福度が高い国」「幸せの国」と表現されている。国土の70%が自然に覆われ、自然味溢れる景観が楽しめる仏教王国である。
 

丁度その時期、ブータンでは、前出の、ジャカランタの木が花盛りで、その美しさに魅了されたH夫人達は、数粒の種を持ち帰り、3人がそれぞれ自宅の庭に植えたそうである。

ところがH夫人のお宅の種のみ芽が出て、枯れずに育ち、昨年(2019)春、9年目にして、やっと一枝のみ花を付けた。しかし今年は木全体に、清楚で淡い青紫色の見事な花をたわわに付け、家人は勿論のこと、道行く人達にも、その魅力を存分に振舞ってくれた。


 そんな訳で、家内はジャカランタの花を見知っていたのである。年を取ると言うことは、心がかたくなになる、と同義語である。


 近頃、私は家内から「人の云うことを聞かなくなったり、自分勝手になって来たのが分かる?」と言われた。なにをバカなことを云う‼そんな事、ありっこないじゃあないか!と憤然として、強く否定した。


 しかし内心、待てよ、本当にそうだろうか?心の中では気が付いているのだ。大分意固地になっている。人前では物分かりの良さそうな、温厚そうな爺さんを演じるているが、家内の前では本性が出るので、家内には私の状況は手に取る様に分かるのだ。


 近所のおばさんの話は、他人事ではない、私の話だ.反省‼ここで自戒を込めて一句


 ジャカランタ  ああジャカランタ  ワカランタ
                        お粗末‼    

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