【スマホゲーム】誤解だらけの闇鍋ガチャ【某Pに聞いてみた】
闇鍋ガチャの誤解
以前、とある巨大メーカーのプロデューサーと飲む機会があった。その方のプロデュースしているアプリは、キャラクターと装備品が同時に排出されるいわゆる闇鍋ガチャで有名な某アプリ。
そして僕は聞いた。
「どうしてメーカーはユーザーが100%嫌がる闇鍋ガチャなんてものを実装するんですか?」
『あれはユーザーのためにやってるんですよ。』
闇鍋ガチャとは?
闇鍋ガチャとは、一般的にひとつのガチャからキャラクターと装備品が排出されるガチャのこと。目玉キャラクターが複数ピックアップ(以下、PU)されていたりする場合など、とにかく狙いのキャラクターが引きにくいガチャであれば総じて闇鍋ガチャと言われることも多く、ユーザー間でもわりとぼんやり定義されているスラングといった感じ。
この闇鍋ガチャはユーザーからはあまりいい印象を持たれていない。基本的に忌むべきものとして使われることが多いワードで、決して歓迎されるものではないのだ。
では、なぜユーザーから不評の声も多い闇鍋ガチャは駆逐されるどころか増加し続けるのだろうか?
ガチャの仕組みをおさらい
ガチャは、そのアプリにとっての店舗にあたるものだ。金銭の支払いが生じる重要な部分でアプリにとっての心臓部。
そしてそのガチャで排出されるキャラクターや装備品は商品。メーカーは、この商品を日々開発し、ガチャという店舗に並べている。
もちろんここに商品を並べていても、使う場所がないと売れないので、コンテンツという公園を建設し、遊び場を開放しているというのがスマホゲームの大まかな仕組みだ。
高騰する開発費
この商品には、当然ながら原価が存在する。開発費用という人件費やもろもろだ。
昨今のスマホアプリのキャラクターにかかる開発費は高騰し、大手のメーカーでも気軽にねん出できるものではなくなっている。
3Dやフルボイスが当たり前になれば、キャラクターデザイン、モデリング、モーション、声優へのギャラと広告費、そして大前提としてappleやAndroidへの手数料が発生し、IPものであれば版権料も。
さらにガチャから排出される新キャラクターの開発だけではなく、同時に開催されるイベントの開発、常時発生するサーバーとサポートの維持費や、無課金、微課金や新規に向けた配布キャラクターの開発など、直接新キャラクターに関係ない部分も、1週間から10日開催されるイベント期間中に基本的にはすべて賄わないといけないということになるので、かなりシビアな世界。
ソシャゲビジネスは、ちょろい商売という巷のイメージに反して、決して簡単なビジネスではないのだ。
迫られる2択から誕生した闇鍋ガチャ
商品の原価があがると売値もあがるのが自然の摂理。
小麦の値段があがるとパンの値段が上がるのと同じで、ガチャの場合は、単価を上げるのか、確率を下げるのかの2択ということになる。(※確率を下げると実質キャラクターの単価が上昇する。)
しかしどうだろう?10連はだいたい3,000円前後というのが一般的な相場になっていて、ここ数年でみてもキャラクターのクオリティはあがる一方なのに、単価はあまり変わっていない。
もちろん10連4,000円、5,000円となればユーザーが離れるのは目に見えているので簡単に値上げできないのもまぁ納得だ。
じゃぁ確率を下げるのかというと・・・、みんな怒るでしょ?確率下がったら文句言うじゃない?
こうなると大変だ。原価は高騰するのに値上げも確率の低下も許されない。
そこでメーカーが考え出したのが装備品の投入だ。
装備品は例え3Dでモデリングしたとしてもデザインは簡素。喋らないので声優は不要だし、動かないのでモーションも不要。非常に安価に製作が可能だ。
1枚絵を装備品にするパターンの場合、絵師さんへのギャラがほぼ原価のすべてで、これにパラメータを乗せるだけという超絶激安な商品に。
この超高い商品(キャラクター)と超安い商品(装備品)をひとつのガチャに混ぜることによってガチャ単位で見たときの原価率を相殺。
キャラクターのクオリティを上げて、ガチャの単価を維持しつつ排出確率もある程度納得の得られる範囲を担保することに成功。
この究極の錬金術が闇鍋ガチャの正体というわけだ。
装備品を使用しないガチャの場合
装備品が一緒に排出されない純度100%キャラクターのみ排出のガチャの場合はどうだろう?
この場合の多くは、既存キャラクターを上記で言う装備品に見立てて、これを大量に投入することで新キャラクター排出確率を薄めるというケースが多い。
PUがほとんどPUの役割を果たしてないガチャはこうして誕生する。
この場合つらいのは新規の恒常キャラクターを増やしにくくなってしまうこと。
ガチャ単価を担保するために既存のキャラクターを多く混ぜることで、原価を抑えているので、新規の恒常キャラクターを開発して原価を上げてしまうと本末転倒になってしまうというわけだ。
これらの理由から混ぜ込まれるキャラクターは、直近でリリースされた準新キャラクターではなく、減価償却の終わった旧キャラクターが望ましいということになるので、ユーザーにとっては出てもあまりうれしくないキャラクターになってしまいがち。
装備品の混ぜ物がないというリッチなガチャである一方で、低レアリティのキャラクターが追加されなかったり、PU以外のキャラクターがまるで消耗アイテムのような売却直行の雑な位置づけになってしまったりするのがデメリット。
単価のコントロールがしにくく、確率にメリハリもつけにくいので、各社装備品排出型のガチャをやりたがるのも納得といった感じかな。
2Pカラーもの
これはガチャの話しとは別になってしまうけど、原価の高騰をガチャだけで吸収できなくなってしまうと、直接原価を削るというのがつぎに取られる手段だ。
キャラクターデザインやモデリング等の工程を一切排除して既存のキャラクターの色違い、いわゆる2Pカラーを出すというのは昔からよくあること。
背景の色だけ変えて、まったく同じキャラクターの属性違いを5種同時実装!なんてのもあったりする。
僕はとにかくサービスが続いてくれるのが第一優先と思っているので、運営、そしてユーザーの負担を軽くするためならば、むしろこういう施策は歓迎だったりするのだけど、なかなかユーザーの理解を得られないことも。
うまくネタとして昇華できるパターンもあれば「手を抜くな!」と怒られるパターンもあるので、この辺は運営とユーザーの信頼関係にもよるのかな?
運営の負担は、ユーザーの負担に直結するので、つねにトップギアでの運営や開発を求めすぎると、きつい限定ガチャを連発されたり、課金圧が強くなてしまうのでユーザーもそのあたりは理解しておきたいよね。
一方でそう感じさせてしまった運営側は、その分ユーザーへ還元をしっかり体感できるレベルで感じさせないといけないよ。
それが信頼関係の基本だと思うな。
いかにしてうまく手を抜けるか、というのは今後のスマホゲー運営にとっても大切なテーマになるんじゃないかと思う。
ない袖は振れないということ
闇鍋ガチャは、キャラクターのクオリティを上げつつも、ユーザーへの提供価格が高くなり過ぎないように、排出確率が低くなりすぎないように考えられた方法だということがわかった。
裏を返せば、この闇鍋ガチャを止めた瞬間にガチャの単価は跳ね上がり、排出確率も0が何個付いてるかわからないくらい低くなってしまうということになるので、「闇鍋を止めろ」というのは、あまり意味がないのかもしれないよね。
それでも僕は言うんだけど。
ガチャの根本を変えることが難しくても、さらにお得なパック追加で対応してくれるとこもあるしね。
これからのガチャバリエーション
最近一世を風靡している某アプリで再注目されている分割型(キャラクターとサポートカード)のガチャはとても理にかなったシステムだよね。
おそらくこのアプリのキャラクター開発費って現状でもぶっちぎりなんじゃないかってくらい高額だと思うんだけど、1枚絵の低額ガチャ(サポートガチャ)にゲーム内バランス(強度や影響度)の比重を置くことで、ユーザーが自主的にそちらを引くように誘導し、ガチャ単価のバランスを取っている。
これも単一のガチャをふたつ設置することで、全体で捉えれば結局は闇鍋ガチャとまったく同じ考え方。
同じ確率、同じ単価で片方は1等がエルメスのバーキン、もう一方は1等がチロルチョコだというのに、ユーザーはこぞって“自主的に”そのチロルチョコのくじを引いてくれるというのだからメーカーの大勝利といった感じだよね。(チロルチョコはうまいよ!)
闇鍋ガチャはユーザーのためと言いつつもどうしてもよくなイメージが付いて回るので、それを回避しつつ、闇鍋ガチャと同様の効果を持たせることに成功している。
さらに“自主的に”というのがポイントで、昔であればこの単価の高いガチャを低確率のまま引かせるために限定、限定、期間限定!で煽るのが主流となっていたが、北風と太陽でいう、太陽である(そう錯覚させる)というのもユーザーライクに見えるよね。
結局支払う金額が同じだとしても、ガチャを引かされていると感じるか、引いていると感じるかでは後者のほうがいいに決まってるもんね。
気持ちよく課金できるって大きい。
これを読んだ後に、自分がやっているスマホゲーのガチャをみてみると、さまざまな理由がわかったりすると思うので、ぜひ振り返ってみてはいかがだろう。
「闇鍋だけど入ってるキャラが強めだから今回は奮発してくれたのかな?」とか、
「あからさまにこっちが当たりであっちがハズレってことは単価調整のためにキャラ増やしたんだな」とか、
「配布専用のキャラまで作ってるってことは力入ってるからデカいプロモーションあるかもな」とか
そういう観点でガチャを見てみるのもまた一興。
各メーカーによる新たな錬金術の発見にも期待したい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?