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マタカリプか? 冬眠前のクマに男性ハンターが襲われ死亡|北海道・夕張市|令和3年

本記事は書籍『日本クマ事件簿 〜臆病で賢い山の主は、なぜ人を襲ったのか〜』(2022年・三才ブックス刊)の内容をエピソードごとにお読みいただけるように編集したものです。


はじめに

本稿では、明治から令和にいたるまで、クマによって起こされた死亡事故のうち、新聞など当時の文献によって一定の記録が残っている事件を取り上げている。

内容が内容ゆえに、文中には目を背けたくなるような凄惨な描写もある。それらは全て、事実をなるべく、ありのままに伝えるよう努めたためだ。そのことが読者にとって、クマに対する正しい知識を得ることにつながることを期待する。万一、山でクマに遭遇した際にも、冷静に対処するための一助となることを企図している。

本稿で触れる熊害ゆうがい事件は実際に起こったものばかりだが、お亡くなりになった方々に配慮し、文中では実名とは無関係のアルファベット表記とさせて頂いた。御本人、およびご遺族の方々には、謹んでお悔やみを申し上げたい。

事件データ

  • 発生年:2021(令和3)年11月24日

  • 現場:北海道夕張市

  • 死者数:1人

近隣住民も利用している
山間部の林道で遺体を発見

2021(令和3)年11月、北海道江別市に住む男性ハンターA(年齢不明)が行方不明となった。親族から「猟へ出かけたきり帰って来ない」と、24日夜に江別警察署に捜索願が出された。警察は携帯電話の位置情報から、Aは夕張市にいることを確認。ヘリコプターを使用して付近を捜索したところ、翌25日に夕張市内の林道でAの車両が発見された。

夕張市役所から西へ2km。そこは、林道とはいえ畑や民家からもそう遠くなく、山深いとはいえないような場所だった。

林道の脇に流れるシリツルオマップ川は、アイヌの言葉で「山の間を流れる」という意味の静かな沢で、釣りのシーズン中はウグイやカジカがよく釣れる。雪が溶ければトレッキングを楽しむ人も多い。人間にとって身近で、気軽に自然に触れられる場所だった。

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