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【猪犬閑話】猪犬の「咬み」を考える

本稿は『けもの道 2018春号』(2018年刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


文・写真|八木進
昭和29年京都府生まれ。猪猟の盛んな丹波地方で育ち、少年期から勢子として山入り、16歳で和歌山県から紀州系猪犬を持ち帰り、現在までに「義清系」「鳴滝系」血統犬を主体に16代まで累代、猪犬として使用する。59歳で大手銀行系企業を早期退職、現在、猟期中は猪猟、期外は鹿を主体とした有害獣駆除での職業猟師を生業とする。実猟紀州系猪犬の系譜と血統を生涯のライフワークとして研究中。

「咬み」の強さの追求による混血

私が狩猟を始めた40数年前は、猪が今ほど多くなく猟場は大山が中心であり、猪猟といえば単独猟か多くても3名程度で行うものであった。

猪犬ししいぬの条件としては、広いレンジを高スピードで狩り、見つけた猪は逃がさない強い「咬み」が必要であった。

幸いにも先代から受け継いだ「紀州系猪犬」がそれなりの猟技を持っていたこともあり、私の猪猟は一応「咬み止め」に近いものであったが、世間では日本犬より強い咬み止め犬を求める風潮が強く、アルゼンチンから来た「ドーゴ」(ドーゴ・アルヘンティーノ)や「ブルテリヤ」や少し遅れて「ピット」(アメリカン・ピット・ブルテリヤ)が猟野に現れ、日本犬には無い桁外れに強い「咬み」で猪犬の世界に浸透していった。

私も「若気の至り」もありヨーロッパから来た「ブルテリヤ」と「ヤークドテリヤ」(ドイツ・ワークド・テリヤ)を使用したが、犬や人畜に対する攻撃性と猟場での使い辛さで一猟期と持たなかった思い出がある。

但し、強い「咬み」を求める一部の猪猟師には受け入れられ、従来の猪犬と混血で広がり現在まで続いている。

今では一部の「地犬」や「紀州系猪犬」にも浸透して混血が感じられない姿になっており、外見から精査することはできない程であるが、「咬み」が強い紀州系や地犬系の猪犬の中には混入している犬がおり、血統にこだわる猟人には注意が必要である。

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