【密着取材】実は頼れる小さな狩猟犬! ミニチュアダックスのコジュケイ・ヤマドリ猟
取材・文|佐茂規彦
ミニチュアダックスは猟犬です。
「猟犬」と聞くと、体が大きく力強いイメージが先行し、猟犬を使った狩猟に憧れはあるものの「飼育スペースもないし、大きな犬を飼うのは無理」と諦めてしまっている狩猟者は多いだろう。
確かに鹿や猪などの大物猟には紀州犬や四国犬、プロットハウンドなどの中型以上の犬が使われることが多い。
鳥猟にしても、セッターやポインターなども比較的、体の大きな犬種であり、飼育する上でかなりの運動量の確保と、狩猟で使うには専門的な訓練が必要だ。
しかし、まだ諦めるのは早い。
今回、取材してきたのは、ミニチュアダックスの「ブレッド」と、その飼い主の名雪さんによるコジュケイ・ヤマドリ猟。日本でミニチュアダックスといえば、家庭の愛玩犬として飼育されていることがほとんどだが、実はれっきとした猟犬がルーツ。鳥猟師の憧れの獲物・ヤマドリが、実は可愛いミニチュアダックスで獲れるのだ!
開始10分で訪れた、半信半疑が確信に変わる瞬間
年が明けて間もない静岡県某所。まだ薄暗い早朝、名雪さん&ブレッドと待ち合わせ、一緒に猟場の入り口まで移動した。車を停め、山入り準備を始めるころには夜が明けていた。
大物猟と違って装備が軽装で済むのはありがたい。オレンジベストにスパイク長靴。ベストに背のう(背中の大判ポケット部分)があるので、獲れた鳥類はそこに放り込めばいい。
ブレッドにも目立つようにナイロンで出来たオレンジベストを着せる。ほかの猟師が山でブレッドを見たら「大きさでウサギと見間違えられそうだから」なのだとか。
もちろん対象を確認せずに撃つことはご法度だが、日本の猟場にミニチュアダックスがいることを予想できる狩猟者は、この記事を読んだことがあるに違いない。
果たしてダックスで本当に狩猟が出来るのか? その答えは開始からたった10分で明らかになる。
写真で追うブレッドのコジュケイ猟
身支度を整え、歩き始めた名雪さん。崩れた林道を進んでいく。ブレッドはその前5メートルぐらいの距離を軽快に歩いている。これだけ見ると、渉猟というより「愛犬の散歩」だ。
歩き始めて10分ほどで、林道から山仕事用の足場が残る丘をさらに登る。右手には肩ほどの高さで密生した藪が広がっている。名雪さんの経験上、この地域のヤマドリやコジュケイは、朝のうちは日当たりが良く暖かい藪の下に隠れていることが多いという。
何かのニオイをとったのか、それまで名雪さんのすぐ前を歩いていたブレッドが藪の中へ入っていく。
……「おいおい? 射撃の瞬間の写真は?」と思われるかも知れない。それは予想を大きく超えた早業だった。
ブレッドが藪に消えた数秒後、いきなり藪から飛び出したコジュケイ、そして次の一瞬で名雪さんが射獲してしまったのだ。
名雪さんは装填した状態から藪に銃口を向けて待っていたのではない。ブレッドの反応を見て獲物が出ることを確信して装填した後、コジュケイの飛び出しを見てから確認・照準・射撃を瞬時に行ったのだ。
射獲したコジュケイゆっくり観察すると、赤茶色と青みがかったグレーが混在する特徴的な羽毛をしていることが分かるが、飛び出した瞬時にコジュケイだと判断する自信は全くない。
猟犬の血筋は伊達じゃない
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