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ハンターのためのマダニ媒介感染症講座

本稿は『けもの道 2017春号』(2017年刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


はじめに

これを読まれる多くの方は、マダニに咬まれた経験があるのかも知れません。

「特に何もなかったよ」とおっしゃると思いますが、これを読んだ後は「生きていて良かった」と思うかも知れません。

何故なら、致死率25%の病原体を保有するマダニが皆様の周辺にいる可能性があるからです。

また、飼い犬や猟犬がマダニを運んで来る可能性もあります。マダニ対策の重要性をご理解ください。

著者|前田健
山口大学共同獣医学部大学院
連合獣医学研究科中高温微生物研究センター

↓本稿とあわせてお読みください!

SFTSウイルスを知ろう

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とはどんな病気?

マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus =SFTSV)によって引き起こされる致死率の高いウイルス感染症。

その主な症状は、最初は発熱、食欲不振、嘔吐、頭痛、筋肉痛が認められ、症状が進行してくると意識障害、歯肉からの出血や下血などの出血症状が認められる。

血液検査では、病気の名前のとおり白血球減少や血小板減少、肝臓障害の指標である肝酵素(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼASTやアラニンアミノトランスフェラーゼALT)や乳酸脱水素酵素(LDH)が上昇する。

約1週間で改善し始めるが、重症例の場合、症状が改善せず意識障害や出血傾向が認められ、更には呼吸不全、循環器不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)を呈して、死亡する。その致死率は現在、国内で25%である。

SFTSVの感染経路は?

SFTSVは、マダニの中で維持されているウイルスである(ダニサイクル)。ウイルス保有マダニの吸血によりヒトや動物がウイルスに感染する。

一方、感染した動物からマダニにウイルスが伝播するため、マダニから動物、動物からマダニへの両方向のウイルス伝播が示唆されている(動物サイクル)。中国や韓国では患者との接触によりヒトからヒトへの感染も報告されている。

SFTS患者の発生地域は?

SFTS患者の報告は西日本に限られている。

2005年、長崎県での発生が最も古い記録で、2015年には石川県、2016年には沖縄県で患者が発生した。近畿地方以西で発生報告がない府県は鳥取県、大阪府、奈良県、滋賀県のみである。

高齢者が犠牲になりやすい?

年齢別の生存者数と死亡者数を比較すると、福岡県で11歳の患者が報告されているが、50歳未満の患者は極端に少なく、50歳以上の患者が全体の95%を占める。

死亡率は全体で23%と非常に高く、国内で現在問題となっている急性感染症としては最も死亡率が高い感染症であると考えている。40代までの若齢層では死亡者が認められないのに対して、50代21%、60代15%、70代20%、80代34%、90代50%と死亡率が高くなっている。

SFTS患者の発生時期は?

2013~2016年の患者発生数を月別に比較すると、一年中患者が発生しているが、12~3月ではほとんど患者の発生がないのに対して、4月から患者数の急激な増加が認められ、5月をピークとして、徐々に患者数が減少する。5~8月の4ヶ月間で全体の66%の患者が発生していることとなる。

これらの患者発生時期は、国内マダニの主な発生時期と一致している。

予防・治療法は?

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